新しい仲間
出町尚子が絶望感に苛まれているところへ、たぬきにうさや、森河さんも登校してきた。
「あ、たぬきおはよう!」
「あ、セトルリさん、おはよう」
「昨日、さんはいらないって言ったべ」
「あ、ごめんセトルリ。みんなこちらセトルリ。昨日仲良くなった普通科の娘だよ」
「初めましてセトルリさん。わたしは森河直美。森河でも直美でも好きな様に呼んでください」
「だからさんはいらないって」
ニシシ……みたいな笑顔を浮かべながらセトルリが言う。
「わたしは瀬戸瑠璃。瀬戸内海の瀬戸に瑠璃色の瑠璃。よろしくね…えーと…直美ちゃん」
美少女の口から直美ちゃんっ!
今まで何となく定まらなかった森河直美の愛称が決まった瞬間だった。
「なおみちゃん……イイじゃん直美ちゃんで」
絶望感から復活してきた出町が言う。
「だったら出町っちゃんは『尚子』だよ? 激おこ尚子だよ?」
「いいよ、尚子で。もう慣れたし紛らわしさもないでしょ。直美と尚子のナオナオコンビで生きていこうぜ」
「イイね。ナオナオ。初めましてセトルリさん……えーと、セトルリ? わたくしは宇佐美彩香ですわ。うさやって呼んでください」
「よろしく、うさや……って、めっちゃ美少女。何この教室。男が迷い込んだらみんな昇天して果てるよ?」
セトルリは、何でこのクラスの人のことを今まで知らなかったんだろう? と不思議に思った。
尚子……出町尚子。長身正統派美少女。更に脳を痺れさせる香りのチート付き。
直美……森河直美。眼鏡っ娘委員長系マニア受け美少女。声がなんかえらくセクシー。
うさや……宇佐美彩香。お嬢様系美少女。スレンダーで気高くて、手が届きそうもない感じ。
ヒビキ……沢井響。高身長美少女。キリッとしたカッコイイ系美少女。
たぬき……樽木詠美。ふんわり系美少女。ゆるい体型が抱き心地良さそうな和風顔の美少女。
「ヤバいわ……このクラス。男大好きなアタシでも女に目覚めそうだわ。これでロリ巨乳でもいた日には、コンプリートボックスが出ること間違いないね!」
そのタイミングで現れたるは我らが担任矢田文香。
実年齢は五十代。しかしこの教室の責任者になるために、ドバドバとマイクロマシンを投与した上でのステータス・オープン魔法のインストールにより、すでに年齢不詳の美女になりつつある。
しかも低身長、148cm。そして大きい!
入学式の頃は垂れ気味だったその部分も、この二ヶ月ほどの間に整復され、バインバインなアレになっていた。
色々勝手に忖度してくれるマイクロマシンさん、弱り果てたクーパー靭帯の繊維部を高分子の人造細胞と置き換えていき、まるでCGで描いた様なメロンが二つ、どーんどん!
「はい、おはようみんな! お、珍しいな、他のクラスの生徒が来てるのは。おはよう、何組の生徒かな?」
「おはようございます。四組の瀬戸です」
「うん、良い返事だ。見た目は校則ギリギリっぽいけどな。わたしは矢田文香、このクラスの担任だ。魔法に目覚めたらこっちこいよ?」
アハハハハと笑う文香先生。
(いやいやいやいやいや、熟女系ロリ巨乳とか、属性盛りすぎじゃね? なんなんこのクラス?)
実はうさやさんがギャル変身もできると知ったら、どんな反応するのか楽しみです。
ここで予鈴が鳴り始めた。
「あ、また後でくるね。お邪魔しましたー」
先生に挨拶しながら自分のクラスへ戻るセトルリ。じんわりと熱くなる胸の高鳴りを、きっと気のせいと決めつけて、旧校舎へと歩いていった。
「よーし、半になったらホームルームするからな。日直は宇佐美か? ホームルーム終わったら職員室まで資料取りに来てくれ」
文香先生は生徒に指示を出しながら電子黒板に伝達事項のデータを流し込む。
「ね、さっきのセトルリさ、すごいファッションだったね」
森河さん……改め直美が言った。
赤メッシュ入りのツインテールに赤のカラコン標準装備。
「けどまぁ、似合ってたしイイんじゃない?」
出町さん……改め尚子が応えた。
今まで、尚子の嫌いだったこの匂いを、こんなに肯定してくれた人はいなかった。
尚子にとって、この体臭はひたすらネガティブな存在だった。とても辛い思い出も、この匂いと共にあった。
そんな記憶を、上書きしてくれる様にあの人は言った。
『一生嗅いでいたいわ、そのぐらい魅力的』
何そのプロポーズ。そんなん惚れてまうやろ!
もうね、一生嗅がせてやるわっ!
あー、またやばそうな人が目覚めちゃったよ……どうしよう……
キーンコーンカーン……
始業時間だ。文香ちゃんが教壇に立ち、日直のうさやが号令をかける。
「きりーつ、気をつけ、礼、着席」
ガタガタと椅子を揺らしながら礼をして、また座った。
「よーし、来週からの魔法授業は二週にわたって習志野演習場で実地訓練を行う。その前に、今週中に沢井から色々な魔法を教わってもらう。沢井には政府からの指示書が来てるので後で渡す。しっかり確認する様に」
電子黒板に次週以降のスケジュールと、習志野演習場の地図や施設が表示されている。
響たち仲良し三人組にとっては行き慣れた遊び場だが、直美尚子の二人はまだ未経験だ。
「では、一時間目に資料を渡す。宇佐美職員室まで来てくれ」
「はい、わかりました」
文香先生とうさやが出ていき、再びおしゃべりタイムに。
「響、新しい魔法とか何か聞いてる?」
「あー、多分直美と尚子にアイテムボックス教えるんじゃないかなぁ?」
「あー、あれかぁ。便利そうだもんね、あの魔法」
「あとは攻撃魔法を、たぬきとうさやに教えて良いのかどうかかなぁ?」
たぬきとうさやは、まだ攻撃魔法を使えなかった。
ただ、生活魔法を攻撃行動に使う技術は磨かされている。
「攻撃魔法かぁ、やっぱりわたしらも前線に出されるんだろうねぇ」
たぬきがちょっとだけめんどくさそうな顔をした。
しかし今の日本の、世界の状況だと本当にたぬきの手も借りなければやっていけないのだ。
♦︎
昼休み。みんなでお弁当を食べるために、机の向きを変えてるところに、セトルリがやってきた。
「おっつかれー、アタシもご飯、まーぜーてー」
「おー、セトルリ、いらっしゃい。食べよ食べよ」
しかしこの教室には机は五卓しか無い。
「センセの椅子借りちゃお。今度アタシ用に折り畳み椅子持ってきとくわ」
そのまま尚子とうさやの間に椅子を置かせてもらい、いただきます。
「はぁ、この場所、天国だわ。マジで魔法使い目指そうかな」
「あはは、良かったら教えるよ?」
「いーねいーね、教えて教えてー」
「じゃ、お弁当食べ終わったら軽くやってみよ」
……なんか、めっちゃ嫌な予感がするんだけど……
「ご馳走様でした!」
みんなで揃ってご馳走様をして机を戻す。
よいしょよいしょと椅子も返して、さて魔法の時間だ。
セトルリは魔法使いのことをほとんど知らない。と言うか、国民のほとんどの人は噂レベルでしか魔法使いのことなんて知らない。
「ね、魔法使いについて教えてくれる? アタシ、魔法使いの友達とか初めてなんだ」
「まぁ、魔法使いについて聞くなら響だよね」
「そうだね。多分日本一魔法に詳しい魔法使いだしね」
「え? 日本一?」
「いや、むしろ世界一の線もあるな。そのぐらいすごい娘なのよ」
と言うかまぁ、間違いなく世界一だね。あと、世界初の魔法使いでもある。
言われてる響は恥ずかしいのか、短い髪を盛んに触っている。
「じゃ、じゃあ簡単に説明するね。マジックオペレーティングシステム……って言ってもわかんないか。そだ、やって見せながらだったらわかりやすいかな? ね、セトルリ、わたしの眼見てくれるかな? 中を覗き込む様に……」
って、響ぃぃいいいっ! やっぱやりやがったコイツっ!
人の人生変えちゃうやつだよ? それ。わかってんのかなぁ……
「うぼぁっ、な、なんか出てきたっ! 何これ何これ……」
言いながら、セトルリの右手が持ち上がり正面をつっつく様な動作を……
「うわわわっ、なんか流れ出した流れ出した、え? え? これ何? 何が起きてるの?」
「あ、うん、セトルリに魔法の説明するのに、魔法あった方がわかりやすいかと思って……」
「え? 魔法? これ魔法なのっ! 何、何なのー!」
「じゃ、インストールコンプリートって出たら教えてね」
魔法学科の六人目のメンバーは、こうやって生まれた。
お友達が増えるのはきっと楽しい。そうに違いありません!
それがたとえ地雷のレプリカ (多分爆発しない) であっても!
それではまた、お会いいたしましょう。




