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オリエンテーション

 昨日の入学式は散々であった。


 入学式は半分しか出られなかったし、敵の数は前代未聞の多さだったし、何より自分の撃った魔法の威力が高すぎて、帰ってきてからの報告書が面倒で面倒で……

『明日、学校終わったらまた続きやるからね』

 とか言われてちょっとビビってる響さんだった。

 今朝早く、麻紀さんはその対応のために官邸へと呼び出されていった。

 

 響は高校でオリエンテーション、その後百里に戻り昨日の続き。週末には日本の南方海上でNon-Mass魔法の試験を行う事になっている。


「まぁ、一つずつこなすしかないかぁ。じゃ、行ってきます!」

 朝、自転車で家を出る。学校までは普通に走ると一時間弱かかるが

「ヒャッハー!」

 魔法アシストで二十分。車の流れからあまり逸脱するなと叱られたので、これ以上速くしようとしたら、飛んでくしかない。

 しかし、今のところ空飛ぶ自転車は許可されていない。

 生身で空飛んでの通学も禁止された。ただしスクランブルで百里まで帰るのは公務として認められている。


 学校についたら、自転車置き場へと愛用のシティサイクルを駐輪する。

 と言っても、近くの量販店でお買い得品で出てたものだ。一応国内メーカー製だが高級品ではない。

 駐輪場には割と近い場所からの通学者……響と出身校が同じ人がかなり多い。先輩達も中学の先輩をかなり見かけた。


 自転車を停めたら、他の生徒の流れに逆らって、正面玄関へと向かう。

 下駄箱に上履きが置いてあるわけでも、靴を下駄箱に入れるわけでもない。なので正面玄関を使う理由はないのだが、ルールを守ろうとする娘なのだ。

 守れるとは言っていない。


 フッと取り出した上履きを、人差し指と中指に引っ掛け、ポンっと玄関のスノコに置く。

 防衛装備庁で開発されたローファーを脱ぎ捨てながらアイテムボックスに収納し、上履きに足を通す。

 通りかかった先生に挨拶をしながら、踵に人差し指を差し込んでストン。反対の足も、ストン。

 廊下を進んで新校舎へ。

 魔法学科、一年六組。ガラッと開けると、来てるのはうさやだけだった。

「おはうさー」

「おはうさ言うなし。響、おはよ」


 あとの三人、たぬきと出町尚子、森河直美はスクールバス通学だろう。時間的にはそろそろ到着するはずだ。

「昨日、わたしが出たあとどうだった?」

「一瞬ザワっとしたけどね、文香(ふみか)ちゃんがすごかったわ」

「文香ちゃん?」

「あ、矢田センセ。もうね、一発で全員黙らせたよ。アレは惚れるね。わたしの旦那がまた一人増えたね」

 うさや、最近やたら惚れっぽいな。って言うか、もう旦那扱いなのか……さすが元ギャル。


「おはよー!」

 出町さんが登校してきた。

 スラリとした長身、美少女ながらも迫力ある表情。ちょっと響とキャラかぶってない?

『かぶってないしっ! わたしはあんなにデカくない!』

 お、おう……


 響はもう170cmを超えてきている。出町さんは165は超えていそうだが、170は無い感じ。

 響よりも髪が短い。一歩間違えると王子様になりそうだが、バランス良すぎてお姫様クラスの美少女だ。ボーイッシュには見えない。

「あ、あとね、出町(でま)っちゃんは、なんか、いい匂いすんの!」

「恥ずかしいからスンスンするな! これ、宇佐美さんやっ」

「うさやでいいよ。もしくは『さや』でも『さやか』でも」

「ならわたしも『なおこ』で……と思ったけど、直美ちゃんと紛らわしいな」

「でまっちゃんは、でまっちゃんで」

「もうそれでいいや」

 昨日一日でなかなか仲良くなってる様だ。

 響も早く仲良くなりたい……と思ってたら、残りの二人がやってきた。

「おはよー」

「おはようございます」

 いつものノリのたぬきと、丁寧な森河さん。


 森河さんは眼鏡っ娘だ。少しクセのあるショートヘアにセルロイドの眼鏡。身長は並。体型も並。かわいいんだけれど美人とは言われないタイプか。

 そして本人曰く釣りガールだそうだ。どんな釣りをするのかはまだ謎のママである。


「おはたぬー」

「おはたぬ言うな」

 さっき似たようなやり取り見たな。


「で、響、こっちは文香ちゃんがまとめてくれたけど、響の出動はどうだったの?」

 うさやが聞いてくる。

「いやぁ、めっちゃ数が多かった。さすがのわたしもありゃビビったね。空飛ぶ魔物が五百匹以上! しかも、全部が全部、羽ひろげたら10m超えるとか。壮観だったわ」

「ご、ごひゃくぅっ⁉︎」

「五百って……」

「うわぁ、響ちゃん、そんなの相手にしてたんだ……」

「それは、すごいですね」

 四人ともかなり衝撃を受けたようだ。

 全員魔法使いである。となると、将来似た様な状況下に置かれる可能性だってあるわけで……

「そんなのどうやって倒したの?」

 うさやの疑問も当然である。

「あー、最初は一つずつ超電磁砲(レールガン)で撃ち落としてたんだけどね」

「出たっ、響の得意技」

 うさやは、習志野で訓練できるものなら響の魔法を何度も見ている。

 

超電磁砲(レールガン)?。あのアニメとかラノベとかによく出てくる奴?」

 森河さんが反応した。

「それです。電気の力で弾飛ばすやつ。あとで多分授業でも出てくるんじゃないかなぁ。これの原理は、随分実験で確かめられたし」

 防衛装備庁が全力で研究しても、到底辿り着けない領域の魔法だ。そりゃ必死に解析されるだろう。


「まぁ、あんまりにも数が多いんで、一箇所にまとめるように動いて、大技の許可貰って一気に落とした。多分まとめて四百ぐらい」

「はぁ? また大技使ったねぇ。あの核兵器みたいとか言うやつ?」

「それ、海の上だしいけるかなーって。そしたら、ちょっと想定より被害大きくてね。今日もまた帰ったら報告書大量に書かされそうだわ」


 うさやもたぬきも、さすがにNon-Massを見たことは無い。

 

「はぁ、昨日空飛んでたのと言い、響ちゃんの実力は一人だけちょっと桁が違うなぁ」

 出町っちゃんが呆れたように言った。

「まぁ、昨日使ったNon-Mass魔法は無理だけど、多分レールガンや飛行魔法あたりはこれからみんなに教えることになると思うよ? 教え方纏めとけって言われてるし」

「「「「おおおっ!」」」」

 四人ハモった。

 と、そこに矢田先生が登場する。


「はい、一同起立! おはようございます」

「「「「「おはようございます」」」」」

「着席。うん、五人いるな。じゃ、今日は校内の説明とカリキュラムについて、校内での魔法の取り扱い、その他注意事項や授業資料の配布などを行う。訓練に支障がない範囲なら部活動も認められるが、運動系は概ね全部試合には出られないのでそのつもりで」


 魔法使いになると、運動能力が人外になっていく。

 元々運動が苦手だったたぬきですら、中学卒業時には響うさや以外なら無双出来てしまうぐらいには。

 そんなの、試合に出たらチート以外の何者でもない。やるんだったら魔法使い同士でやってくれ。


「じゃ、まずは教科書配るぞ。つーても五人だからな、順番に取りに来てくれ」

 他のクラスの八分の一しか人数がいないため、矢田先生が一人で全員分の教科書を教室に持ってきていた。

「基本的には普通科に近いカリキュラムだが、魔法使いは大体物覚えが良いだろう。余った時間は魔法学や魔法使いを取り巻く法律、実際の訓練へと当てていく」

 魔法使いの記憶力がなかなかバグっていることは、すでに周知の事実となっている。


「ここにいる五人はみんなステータス・オープンは使えることになっているが、全員使えるか?」

 うさや、たぬきは響にステータス・オープンを押しつけられた。尚直(なおなお)コンビは攻撃魔法使いとして、政府によりインストールされている。

「実はわたしもステータス・オープンは使える。魔法授業を行うためには必須技能なため、魔法関係の先生は全員使えると思ってくれて良いぞ」

 響が思っているよりも、ステータス・オープン魔法は普及しているのかもしれない。


「それと、沢井。あとで政府から正式要請があると思うが、クラスメイトや教員に魔法を教えてもらうことになる。その辺は政府や担当官の指示に従ってくれ。これは学校側から強要することはない。必ず政府、もしくは担当官から説明を受けてくれ」

「はい、わかりました」

 響にしか使えない魔法や、響の手伝いがないと覚えられない魔法など、色々ある。

 もっとも、危険な攻撃魔法などは厳重な管理下に置かれるため、そうそう教えろとは言われないだろうが。


「じゃ、まずは校内案内行くぞ。全員起立。ノートと筆記用具のみ持って着いてくる様に」

 校内案内や他のクラスへの訪問、教師の紹介などで午前中が終わり、お昼は教室でお弁当。

 森河さんは百里の隊員食堂で作ってもらったらしい。

 ちなみに、あそこでは響もたぬうさも良くご馳走になっていたりする。


 午後は体育館で部活動説明会。各部の先輩たちがそれぞれの部のアピール合戦をしてくれる。


「部活動どうする?」

「してる暇、有るかなぁ?」

「あ、わたし剣道部入るつもりよ?」

 一番忙しくなりそうな響が剣道やる様だ。

「試合出ない分、時間は取れそうだしさ、竹刀振らないとどんどん感覚鈍るし」

 ただ、響と立ち合いしたら、大抵の高校生では心が折れかねない。この辺は顧問としっかり相談してみたほうがいいだろう。


「わたしは女バスは……やっぱり試合できないの寂しいもんなぁ」

 元バスケ少女の出町さん、寂しそうだ。

 しかし、魔法使いの身体能力が常識の外側にあるため、こればかりは仕方がない。

 もしも魔法使いが試合に出ると、魔法を使えないそのほかの選手達の立場がなくなる。


『チームプレイは一人では勝てない』なんて大嘘だ。それこそ、響が一人いればNBAのプロチームに勝てる。それが魔法使いなのだ。


「いやまあ、響ほど極端なやつは他にいないけどなー」

 たぬきさん、酷いこと言ってる様だけど、その通りですね。なんせ響ですから。



 翌週、剣道部に入部申請を出した響さん。見事に顧問に断られたそうだ。

 まぁ、今まで通りいつもの剣道場に通いなさい。

 お読みいただきまして、ありがとうございます。


 オリエンテーション、やってる時は面倒に感じるんですが、後年思い出すと、なんか楽しかったな……って、なりませんか?

 

 それではまた、お会いいたしましょう。

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