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高校入試

 三月になった。

 いよいよ高校入学試験が始まる。


 と言っても響さんやうさやさん、たぬきさんの受ける魔法学科は、入試で不合格になることはまずないはずだ。

 なんせ、国に決められた進学先なのだから。


 茨城県立中央高校国立魔法学科。

 いや、県立高校なのに国立の学科があるとかまじ意味わかんない……とか言われてます。

 実は、割と全国にこんな感じの学校ができていたりする。

 茨城の魔法学科への今年の入学予定者は五人。

 うち三人は言わずと知れた仲良し三人組だ。


 あとの二人は、水戸から一人、北茨城市から一人。水戸はともかく、北茨城市からの通学は現実的ではないため、この娘は下宿生活となる。


「はぁ、試験ドキドキするねぇ」

「まぁ、落ちることはないけどね」


 中央高校に新たに作られた魔法学科。全国の都道府県に一つずつ魔法学科が創設されるのは、響たちが高校に入る2054年度からだ。

 国立高校がある県では、そこに作られることが多かったが、茨城県の様に県立高校の内部に国立学科を作り込むアクロバティックな事をしている道府県もある。


         ♦︎


 今日は入学式当日。響、うさや、たぬきの三人は連れ立って中央高校までやってきた。

 

 高校入り口に案内表示と、案内係の先生らしき人がいた。

「おはようございます。あの、わたしたち三人、魔法学科なんですけど……」

「はいおはようございます。魔法学科ね、正面玄関入ったら左奥の廊下通って、新校舎へ向かってください。調理室の向こう側です。案内看板も要所要所に出てるから迷うことはないと思うけど、必要なら職員か教諭がいますから聞いてください」

「ありがとうございます。助かりました」


 試験当日、願書と筆記用具、防寒着に飲み物。みんなアイテムボックスに突っ込んじゃってる三人だ。手ぶらで歩くその姿はとても受験生だとは思えない。


「あとの二人の娘ってどんな子かなぁ……仲良くなれるといいなぁ」

「響は大丈夫でしょ、人あたりの良さは折り紙つきだし」

 人あたりがいいんじゃない。小さい頃から大人に揉まれまくって来たから、和かな表情や会話を作り慣れているだけだ。


 進んでいくと試験会場、普通科こちら、スポーツ科学そちら、魔法学科あちら、みたいな看板が置いてある場所についた。

「ってことは、こちら側で良いのかな?」

「あ、この廊下の先みたい。行ってみよ」

 周辺はゾロゾロと普通科受験の子が歩いている。

 その流れから外れ廊下を進むと、矢印と共に魔法学科試験会場の案内表示が目についた。

「これかな……おはようございます」

「おはようございます。こちら魔法学科の試験会場でしょうか?」

「おはようございます」


 教室内では、すでに席についている女の子二人がおり、先生らしき女性が教壇についていた。

「はい、おはようございます。三人ってことは沢井さん、樽木さん、宇佐美さんかな?」

「はい、その通りです。わたしが樽木、こっちの綺麗なのが宇佐美でこっちのおっきいのが沢井です」

「いやいやいや、いきなりおっきいのはどうなん? たぬきさんや」

「じゃ、縦に長いの」

「一緒だ一緒っ!」

「たぬき、響……みなさんドン引きされてる気がしますよ?」

 

 あわわわわわ。

 

 第一印象大事っ、とってもっ! だと思っていたのにいきなりやらかした⁉︎

「あ……さ、沢井響(さわいひびき)です。十五歳です」

 いや、テンパってどうする。ここにいる女の子、全員十五歳じゃない?三月生まれの娘がいたら十四かもしれないけどさ。

「はぁ……あ、わたしは樽木詠美(たるきえいみ)です。よろしくね」

宇佐美彩香(うさみさやか)です」

 三人共に自己紹介を済ませる。

「あはははは、楽しい人たちで良かった。あたしは出町尚子(でまちなおこ)だよ。水戸から通う予定」

 出町さんは響ほどではないが、長身のすらりとした美人さんだ。茨城の県庁所在地、水戸市から通うらしい。

 確かスクールバスが水戸方面も出ていたはずなので、問題なく通えるのだろう。

「わたしは森河直美(もりかわなおみ)。百里の官舎にお世話になることになってます。よろしく」

 少しクール眼鏡っ娘、森河さん。家が遠すぎるために寮生活……と思いきや、百里の官舎かよっ!

 とても修行が捗りそうな住まいである。


「というわけで、この五人で魔法学科はスタートすることになる。わたしは担任になる予定の矢田文香(やだふみか)だ」

 矢田先生は、そこそこ御歳を召された女性教諭だ。

 ぱっと見、かなり小柄である。そこそこ高めのパンプスを履いて誤魔化してるが、150cmあるかないか程度の身長と思われる。

 そして、その身長と体格の割に……大きい。

 もうそこそこの御歳なので随分と位置が下がって来てしまっているようだが、とにかく『でかっ!』って思うぐらいには大きい。

 響の身の回りでは最強かもしれない。今の年齢でこれだと、若かりし頃はさぞかし凄まじい威力だったのだろうなぁ……と残念に思ってしまうほどの規模だ。

 その矢田先生のお話はまだ続いている。


「魔法学科と言っても、魔法そのものが、未だ解明されていないことの方が多いわけで、皆と共に研究を続けていきたいと思っている……が、その前にだ。みんなの基礎学力を確認させてもらうために、入学試験を受けてもらうことになった。では全員席についてくれたまえ」


 教卓の前には机が三つ、その後ろに市松模様にならんであと二つ。

 後ろの二つに出町さんと森河さんが座っているため、前三列に三人組が座ることになる。

「まぁ、響が真ん中だよね」

「響がセンターでしょ。当然。だって響だし」

 響を中心に左にうさや、右にたぬきが座る。

「三人は荷物は?」

「あ、アイテムボックス……えーと四次元ポケット魔法みたいなの使えるんです。三人とも」


 まだ、アイテムボックスのことはあまり大っぴらには公表されていない。なんなら担任の先生ですら知らない魔法だったようである。


「そんなすごい魔法まで……いや、事前情報で色々と聞いてはいたのだが、魔法の種類までは聞いていなくてな……では試験の準備を始めてくれ」

 矢田先生が電子黒板に書いてある時間の下に、スタイラスチョークでアンダーラインを引く。


「テスト時間は大きく書いてあるからわかるだろう。机の上は受験票と筆記用具のみ。このあと最初のチャイムで用紙を配り、二度目のチャイムでテスト開始だ」


 きーんこーんかーんこーん……

 タイミングよくチャイムが鳴った。

 五人しかいないので、全員に手渡しで国語の解答用紙と問題用紙を配り、二度目のチャイムを待つ。


「はい、ここからはおしゃべりは無しだ。用意……」

 きーんこーんかーんこーん……


 入学試験が始まった。

 と言っても三人にとっては難しいものではない。

 出町森河の二人の学力はわからないが、人柄は悪くなさそうだ。

 これから始まる高校生活に想いを馳せ、三人は鉛筆を走らせた。


        ♦︎


「だー、終わったぁ!」

「五教科全部やると、やっぱ多いねぇ」

 午前に国語、数学、英語を。

 お昼ご飯を挟んで午後から社会と理科を。


 みんなそれぞれ頑張った。

 落ちることは無くても、やはりきちんとやり切るの大事。


「はい、全員お疲れ様。じゃ、今日はこのまま解散してオッケーです。入学のための案内は、あとで事務局から送られるはずだから、よく確認しておくように。それと森河、世話になる宿舎の準備はできてるんで、今度親御さんと一緒に百里まで来てもらうことになるから。その件も追って連絡する」

 これで入学試験は全て終わった。

 次に学校に来るのは入学式の日になるので、入学のしおりが届いたらきちんと隅々まで読まなくては……


 五人は解散前に集まると、それぞれ連絡先の交換を始める。

 電波が無くても赤外線スポットに行けばネットワーク接続は可能なのだ。

「じゃ、あとでメッセちょうだいね。遠いとこ通うのかなり不安なんだから、わたしも」

 森河さんが皆を見回してそう言った。

 眼鏡っ娘少女のお願いだ。これはなかなか破壊力高い。

「うん、必ず送るっ!」

 ほら、響が釣れた。


 その頃、吉野くんはなんとか一目たぬきに会えないかと、人が少なくなりつつある校舎をうろうろ探し回っていた。


 そして、会えなかった。

 とうとう響さんも高校生になります。

 義務教育が終わると、さらにこき使われる予感が……


 それではまた、お会いいたしましょう。

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