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サンタクロース

 石岡駅前の御幸通り商店街にジングルベルが流れている。


 響たちの住む小美玉市には、大きな商業地があまりない。

 と言うわけで最寄り駅まで来るわけだが……


「微妙だねぇ」

「うん、微妙……」

「土浦まで出た方が、良かったかしら」


 期末テストも終わり、先ほど終業式も終わらせてきた。

 今日はクリスマスイブ、三人で遊びに行こうっ! と盛り上がったはいいが……


「ま、今日はうさやの人間復帰パーティじゃ。派手にやろう!」

「いえ、人間辞めてませんでしたが?」


 あらあら、これまた美少女眼福眼福。


 今までのギャルっぽさの残滓は肌色ぐらいか。髪も染め直して、校則に収まる程度の焦茶になっている。

 口調だってほぼお嬢。メイクはナチュラルっぽく見せつつ、実はしっかりされていた。

「素顔はやっぱり恥ずかしいですし……」


「つーても、ディナー予約してたわけでもなくわたしら何しに駅前に?」

 たぬきが根本的な疑問を呈した。

「あー、イルミネーション見に来た?」

 石岡駅前のイルミネーション……いや、わざわざ見に来るようなものでもないような?

「クリスマスソングに、酔いに来たのでは?」

 イブの商店街で聴くクリスマスソングは、やはりちょっと特別な感じがしないこともないか?


「でも、寒い……」

 たぬきさんが震えてる。そういえば暑いより寒い方が苦手って言ってたな。

 白い縁取りのされた赤いドレスコート。足元は白く、長めのブーツ。

 聖一おじさんが今日のために用意してくれたらしい。

 サンタコス? とも思ったのだが、実はフランスの有名コートブランドの品だそうだ……一体いくらするんだろう。消防士の給料、全部たぬきに注ぎ込んでないか?

『弟にもベタ甘ですよ。こないだプレステナイン、買って貰ってたし』

 甘すぎだろ!

 

 突然、響がポンっと手を打つ

「あ、そだ。暖かくする魔法教えとくね」

「何その便利魔法っ!」

「いや、単純に風魔法の応用よ。空気を分子レベルで細かく振動させるだけ。吹き出す風を少しずつ少しずつ小さく小さく、ふるわせていくとね、ほら」

 響の方からたぬきとうさやに向かって、熱風が吹く。

「これをもう少し温度下げて、服の中で起こしてやると……」

 たぬきとうさやは、コートの内側に暖かい流れを感じた。

「まぁ、これも生活魔法だしねぇ。一度制御覚えると、メニューに入るし便利よ」


 そう、応用魔法は一度使いこなすと、次からはステータスオープン魔法のメニューに組み込まれるのだ。

 実際、この二人はイグナイトによる電撃魔法を『ビリビリ』と言うアレな名前で習得していた。


「響さんや、もう少し詳しく。風を服に送り込むのは夏にやってたから、暖める方の技をぜひ」

「うーん……風をこう、押したり引いたりしてぎゅっぽぎゅっぽする感じ?」

 どんな感じだよっ!

「やってみるわ。んっとしょっとんっとしょっと」

「もうちょっと早く。毎秒二十四億回ぐらい」

 ちょっとまてぃっ! それ電子レンジっ!

「あー、じゃ、いちいち意識しないでイメージだけでやる感じ?」

「んー……マイクロマシンにお願いする感じ」


 まぁ、ものは試しだ。

「マイクロマシンさん、暖まりたいな。お願いっ」

 ぎゅっと手を合わせ、祈りながら風を流し……

「うおっ、あったけぇっ……すげぇっ!」

「ね、出来たでしょ?」

 たぬきさん、無事に暖房魔法に成功したようです。なんなんだよ、この魔法体系。

 しばらく苦戦したものの、うさやさんも無事に成功。三人ともほっかほかで歩き回る事ができるようになった。


「これで冬山での遭難でも生存率爆あがりだね」

「いや、冬山で遭難するようなことしたくないわ」


 そのまましばらく歩いていると……

「なぁなぁ、君たち女の子だけ? どう? クリスマスなんだし一緒に遊ばない?」

 

 ナンパされた。

 

 まぁねぇ、三人とも可愛いもんねぇ。

 しかも響が入ってるもんだから、中学生には見えなかったんだろう。女子高生三人組と間違えられたかな?

 

「あー、ごめんなさいねぇ。このあと人と会うのよ」

 適当にあしらうが、男は手を伸ばしてきて肩に触れようと……バチバチバチバチバチっ!

「ベベベベべべべべっ、うぎゃぁっ!」

「なんだっ!」

「触らないでください。警察呼びますよっ」

 うさやが苦手にしそうな年頃の男性だ。できれば近寄ってほしくはない。

 

 ただ、多分、触りようがないんじゃないかな? なんせビリビリを皮膚に直接流してやったのだ。

 一発だけならただの静電気みたいなものだ。

 しかし、バチバチ言わせながら数秒間も流すと、たとえ皮膚に飛ばしてるだけであっても、その他の部分にも影響が波及する。

 この時期は皮膚表面の電気抵抗が大きいため、命に別状は無いが痛いもんは痛いっ!

 

「チキショウ、なんだよこのブスっ! 行こうぜ」

 いやお前ら、我らがたぬきちゃんとか、うさやちゃんとか前にしてブスとか言えちゃうの?

 メイク覚えたたぬきも、人間に戻ったうさやも、この世の理から外れかかるレベルの美少女よ?

 響はいろいろこの世の理から外れてるから、無視していいけどさ。


 まぁ、たぬきも響もうさやを護りたいのだ。もう二度と怖い目に遭わないように。

 うさやはうさやで、強くなった自分を見せたいのだ。もう大丈夫だよ。もうわたしはわたしでいられるよって。


 そして『寄らばビリる』なビリビリ団が誕生したわけで……物騒だな。

「うーん……」

「どした? たぬき?」

 響がたぬきのうめき声に反応した。

 

「将来、女の子がみんなステータスオープンつかえるようになるとさ、みんなビリビリできるようになったりするのかな?」

「なるんじゃないかな?」

「そうすると、男の人は女の人に絶対勝てなくなるよね? わたし、今なら空挺のお兄さんにだって勝てるんじゃないかなって思ってるし」

「そうだねぇ。クリティカルな場所狙えば勝てるだろうねぇ。心臓とか、脳とか。ただ、殺す気でやらないと、無理よ。あの人たちは」

「え? そうなの?」

「昔さ、散々実験したって言ったでしょ?」

「うん」


 響が誘拐犯を倒した後、その再現のために散々色々な人にかけまくったのだ。

 当時はまだ狙って心臓止めたり動かしたりは難しかったが……

「止まった心臓、自分でぶん殴って再起動させる空挺のお兄さんが何人かいてね……」

「うぁぁ……」

 魔法少女でも無いのに人間辞めてやがる……


「まぁ、普通の男性相手なら負けることは無いと思うけどね」


 そんな会話をしていると、あっという間に商店街の端っこまで来てしまった。元々小さな商店街なのだ。

 それでも、小美玉よりはずっと栄えているのだが……

「やっぱり土浦まで出るべきだったか……」

「でも、そうなると車出してもらわないとだしねぇ」

「ま、三人でお散歩できただけでも、あたしは楽しかったですわ」

 つい先日まで、ギャルギャルしていたうさや。今じゃすっかり良家のお嬢様風味だ。

『そりゃ、良い嫁になるためには普段からこのぐらいしておきませんと』

 って、許婚とかまだいたり?

『いいえ。こんな素晴らしい旦那様が二人もいるのですから……うふっ』

 って、たぬきと響のことかよっ!

 てか、響は麻紀の嫁じゃなかったんかいっ! 若者の貞操観念が行方不明すぎるわっ!

『麻紀さんは若者?』

 だーっ、そこは突っ込んじゃだめなやつっ!


 あ、これ、樽木さんちの浩太くん、失恋かしら……頑張って欲しいけどなぁ。宇佐美のお嬢さん射止めたら、めっちゃ逆玉だよねぇ。

 まぁ、まだ若いからどう転ぶかわからないしね。がんばれっ!

 

 てなわけで、魔物も出ない平和な平和なクリスマスに、二人のサンタクロースと、一人の少女が出会うお話でした。

 

 ……そうなの?

 お読みいただきありがとうございます。


 サンタコスの女の子、狙いすぎなのがわかっていても可愛いですよねぇ。

 それが、すこーしふんわりした超絶美少女だったりした日には……


 それではまた、お会いいたしましょう。

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