表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/129

ステータスオープン魔法、限定公開

 ステータスオープン魔法。何でこの名がついた?

「ステータス、オープン!」

 このラノベチックな恥ずかしい呪文が発動ワードだからである。誰だよこんな恥ずかしい魔法作ったやつは! 多分響の姉である。


 ステータスオープン魔法は、女性であればかなり高い確率で覚えることができる魔法だ。

 覚え方は簡単。魔法陣を覗き込むだけ。そのため、公開は非常に慎重に進める必要があった。

 それこそ、魔法陣を写真に撮ってSNSで広げられたら、世界中の人がこれを覚えることができてしまうのだ。


「まぁ、原本を厳重管理するしかないか」

「覚えてもらう人々は選別を繰り返した上で、首都まで来てもらおう」


 そんな感じで一部の魔法使いに公開された。

 ステータスオープン魔法をインストールされた魔法使いは、魔法リストに元々使えた魔法も組み込まれたため、従来の様に呪文を長々と唱えなくても済むようになった。

 他の細かい生活魔法、イグナイト、ウォータ、ウインド、ウォッシュ、ライト等も同じように使える。計算機や時計、スケジューラーやマップ機能も健在だ。

 ただ、アイテムボックスは使えないと報告が来ている。


「と言うわけで響ちゃん、ステータスオープン魔法の極意とかお姉さまに聞けないかしら?」

 朝から麻紀さんに迫られていた。

「わたしはどうでも良いんだけどね、おやじが煩くてねぇ。響ちゃんの事呼び出すとか言い出したから、ならわたしが聞いてくるって言っちゃってさ」

 

 この人、超エリートじゃなかったっけ? 

『そうだよ』

 自分のこと超エリートとか言う人は、信用しちゃいけないってばっちゃが言ってた。

『ナレーションのバッチャとか、それ何? って思うし、大体あたしに絡む時あんた不遜すぎっ!』

 いやいやいや、天の声に逆らうモブキャラとか知らんしっ! まぁいいや、話進めてください……


「ステータスオープン魔法の極意……ですか……今度聞いてみますけど、そのぐらい自分で調べろって言われそうな気がします」


 それでも律儀に姉にお伺いを立てる響。いい子。

 そして返事はあっという間に、三日後には響の脳内に届いていた。


「麻紀さん麻紀さん」

「おはよう、響ちゃん、ふぁぁ」

 何と、気がついたら麻紀さん、沢井家に寝泊まりしてたりしやがります。

「ちょっと待ってね、すぐご飯作るから。先に顔洗ってらっしゃい」

 って、朝ごはんも作ってんの? お客さん扱いじゃないの?

『あたしゃ響ちゃんの婿になる人だよ? 気にすんな』

 いや、気にするわっ!

 性別はまぁ何も言わんが、年齢は考慮してくださいよっ!


「麻紀さん、お姉ちゃんからお返事来たんですけど、まずはちょっとわたしの目、見てもらえますか?」

「ん?」


 姉からの連絡では、まず、響の目の中を覗き込ませろ……と書いてあり


「いつも通りに可愛いお目々だけど?」

「あ、覗き込んでください」

「う、うん……」

 麻紀が近づき、響とお鼻がくっつくぐらいの距離に寄り付き、響の目を覗き……

「!!」

 

『ステータスオープン魔法(Research use version)をインストールしますか? はい/いいえ』


 麻紀の眼前に文字が浮かび上がった。


「え? え? え?」

 話は何度も理沙や美智子から聞いていた。

『目の前に存在する文字』『実在感のある文字列』『気がついたら触ってる』……


 だから、注意しているつもりだった。わたしはそんなおバカじゃないよ……とか、考えていた。


 右手の指が『はい』に触れてしまうまでは。


「あ……」

『Magic StatusOpen Version.2.1.1β install……』

 始まってしまった。


「はい、こちらの世界にようこそ……って、お姉ちゃんが言ってました。これは麻紀さん用にローカライズしたバージョンらしいです」

 いや、あんたのお姉ちゃんって麻紀さんのこと知らんでしょ?


 さぁ、予定外にステータスオープン魔法をインストールしてしまった麻紀さんは困り果てた。

 元々、ステータスオープン魔法を公開するのは魔法使いとして覚醒した人に限る予定だったのだ。

 しかし、インストールされてみてわかる、この果てしない感覚拡張の全能感。

「理沙さん美智子さんはこんな世界で生きてるのね……」

 ステータスオープン魔法の先輩である二人のことをリスペクトしつつ、こんなもんではない響の超センスにも思いを馳せる。


 しかしこれは流石に官邸報告案件だ。今日は慌てて帰らなければならなくなった。

『違うの、永田町に出張なの。わたしの家はここ、沢井家だから!』

 あ、ほんとにダメな人になってるわ。


 内閣府で報告を入れたところ、またまた大騒ぎ。しばらくは小美玉市に帰れそうもなくなった。麻紀は血涙を流しながら日々の会議や糾弾と戦った。

 もっとも、目を見たらインストールとか、何そのゴーゴン! みたいな部分は信用されずに、自力で辿り着いた事例として記録に残された。

「良かった……響ちゃんに迷惑かけずに済んでほんとによかった……」

 響ファーストに磨きがかかって来たな、この人。


『一人やっちゃったら、二人も三人も一緒でしょっ!』

 暴論により、小波(さなみ)師匠にも目を見てもらった。

 

「こ、これは……世界が変わるな……」

「詩琳お姉ちゃんが、小波さんにも覚えてもらって、これがある前提での戦い方を教わりなさいって、言われました!」

「そうか、詩琳ちゃんさんからそう言われたのか……ならば、徹底的に叩き込むぞ! 来いっ! 響っ!」

「はいっ、師匠!」


 その日は、いつも以上にボコボコに投げられた。


「ね、たぬき、うさや、ちょっとわたしの目、見てくれる?」

「ん? どしたん?」

 魔の手は友人にも及んだ。


「な、なな、なにこれっ! えっ、魔法? あーし、魔法使いになれるの?」

「おおー、これが噂の魔法インストーラーかぁ。なんか新しいお話に使えそうだねぇ。次の冬コミの本はこの方向で……」

 反応が別れた。

 うさやは普段、怖いもんなんてないよー的なギャルっぽさで過ごしてるのに、ちょっとイレギュラー起きたらびっくり仰天っぽい。

 たぬきはあれだ、腐ってる。

「あー、たぬき。男性にはインストールできないよ?」

「えええっ!」

 なんか、この世の終わりみたいな顔してる。これだから腐な奴は……


 この二人にインストールしてもらったのは、姉に相談した結果である。

 一緒に小波さんに師事している友人について、聞いてみたのだ。

『どうせ将来的には、インストールできる人にはみんなインストールしてもらうことになるから、だったら早いほうが慣れやすいよ』

 ということで同級生バージョンを作ってもらった。

 アイテムボックスは解放されているが、電卓を封印してあるバージョンだ。高校受験が終わったら、解放してくれるらしい。


        ♦︎

 

「じゃ、便利な使い方と言うか、応用? ちょっとやってみますね」

 響の周りのステータスオープン魔法使いは現在六名である。

 インストールされた順に

 二宮美智子

 小川理沙

 武藤麻紀

 榊原小波

 宇佐美彩香

 樽木詠美

 となる。


 今日は全員を習志野に集めての講習会だ。


「たとえばイグナイト。これ、元々は火をつける魔法なんだけど、電気着火なんですよね」

 響が右手の親指と人差し指の間にパチパチと火花を飛ばす。

「で、この火花、実は自分から離れた場所同士でも飛ばせたりします」

 事務机の上に置いてあるボールペンとメモの間に火花を飛ばしてみた。

 

 チッチッチッチッチッチッ


 火こそ点かなかったが、音と光でそこに火花が飛んでいることがわかる。


「そしてこれ、生き物に対してもできます。それこそ人間でも」

「人間の表面に?」

 麻紀さんが聞いて来た。

「内部でもいけます。昔わたしが誘拐された時、犯人さんの心臓にこれやったんですよ」


 なんと、あの魔法で発生していた電気はイグナイトだったのか……生活魔法ですら、使い方次第で強力な攻撃ができるのか。

 

 実はあの時の魔法は徹底的に調査されていた。

 しかし、調査に使った機械がことごとく故障して……って、もしかして?

「測定器って、電子機器ばっかりなんですよね。で、当時のわたしは『嫌だなぁ』って思う部分にバンバンこれ飛ばす癖があったので……」


 必死に調べようとしてた研究者さんに謝りなさいっ!

 って言うか、理沙と美智子もその被害で残業しまくってましたよ?

「あの時は御免なさい……」

「良いの良いの。嫌だったんでしょ? なら仕方ないわ」

 良いんだ……


「これ使うと空挺のお兄さんたちもパタパタ倒せるから、身を守るには良い魔法だと思いますよ」

 確かに誘拐みたいな犯罪には絶大の威力を発揮しそうだ。

「うさやとか、しっかり覚えてね」


「ウインド、うまく使うとそれだけで飛べます。でも流石に難しいから、高いところから安全に降りられるようにだけでも訓練する価値はあると思います。慣れると、躓いて転ぶ時にも応用できます」

 落下に限らず、重力による事故はとても多い。それこそ脚立から落ちるとか、階段から突き落とされるとか……その手の事故を防げるならば、こんな優秀な労働安全対策はなかなかないぞ。


「ウォータ、お水として飲むこともできますけど、温度下げた状態で出現させてウインドで自分にふりかけると熱中症予防に……何なら敵の顔に噴射すれば視界も奪えます」


「アイテムボックスに砂なり何なり入れとくと、それこそ目潰し攻撃だってできますよ。ライトを目の前に置いてやるのも効果的です」


 細かい裏技っぽい使い方を色々と伝授してくれた。


 攻撃魔法が無くても、対人戦ならばこれだけでも十分驚異的な能力差になり得る。

 うまく使えば小物の魔物にも効果的であろう。


 なんだかんだ言っても、響は周りのみんなが好きだったから。友人も、上司? も、家族になりかかってる変なお姉さんもみんな好きだから……


『変なって何よ、変なって! あたしゃ普通の婿よ、婿っ!』

 やっぱり変なお姉さんだった。

 お読みいただきましてありがとうございます。

ステータスオープン魔法と生活魔法があるだけで、何かあった時のサバイバル率は桁違いに跳ね上がりますね。

水と火を用意できれば、まぁ大抵のピンチは先送りできますし……良いなぁ、覚えたいなぁ。


 楽しんでいただけたら良いのですが……


 それではまた、お会いいたしましょう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ