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セトルリの苦難 ふたたび

「はぁはぁ……瑠璃さん……はぁはぁ」

 柱の影に、不審な影。もっとも、魔法使いから見たら柱の影であっても丸見えなわけだが……

「くぅ……なんて天使なんだはぁはぁ……」

 魔法使いであっても、怖いもんは怖い。

 しかも、今まであまり感じたことのない気配だ。


 (誰だろう……同学年にはこんな反応の人いなかったと思うんだけどな……)

 とりあえず意識だけ向け、視線は向けずに玄関を抜け、教室に向かう。


 一年六組の教室は新校舎に入ってすぐの一階だ。何事もなかったように平静を装いつつ、教室に入った。

 中にはうさや以外の全員がすでに揃っていた。

「今ね、久々に玄関で待ち伏せ食らったよぅ、ちょっと怖かった……」

 いそいそとちな子の元へと向かい、撫でられる。

「また三銃士?」

 たぬきが聞く。

「んーん。あれは三銃士の反応じゃなかった。三銃士ならまだ行動読めるんだけどね。知らない人だったからさ」


 さぁ、みんなの嫁のセトルリさんの危機だ。これはもう全員で対策をしなければならない。

 って、響さんや。指先にエネルギー集めてチュイーンとか音出すのやめてください。恐ろしいから!

「今は気配わかる?」

「マークだけしたから、気配追ってみるね……旧校舎二階……これは普通科の二年生かな。

 流石にセトルリには、響みたいに全校生徒をマークして常時追跡するなんて技術はない。


「おっけ。ちょっと二階行ってみるよ。ティナ、一緒行ける?」

「行く。潰すから」

 どこを潰すんですか?ちな子さん、あんまり無茶はしないでくださいね。

 響とちな子が六組を出て、旧校舎に向かう。

 職員室前の階段を登り、二階へ。


 と、二階の二年生の教室の前に見たことのある三人組が?

「ん? 三銃士? 何で?」


「ですから、そこの横田とやらのせんぱいを出すでござるよ」

「そうだ、その横田をよこすのだよ。フハハハ」

「横田氏、出てくるのです。氏がセトルリ嬢に無駄なプレッシャーを掛けたという報告が上がってきておるのです」


 なんだ? 何が起きてる?


「はぁ? 一年坊が二年の教室に来て何騒いでんだ? お前ら後で呼び出すから今はけえんな」

「そうはいかぬでござるよ。我らセトルリ嬢親衛隊として、セトルリ嬢を脅かす存在は何人たりとも許しはしない。それがっ」

「「「我ら、三銃士っ!」」」

 三銃士って、蔑称じゃなかったのかよっ! っていうか、自称だったのかよっ!


「うるせいぞゴルァ」

「うるさいのは貴様だな、フハハハ。行くぞ、無敵ビームっ!」

 突然ケチャップを取り出した三銃士が一人、伊達くん。おもむろにキャップを開けるとぴゅぴゅぴゅぴゅーっと。

「おわっ、何しやがるっ!」

「横田を出せば何も起きないのだが?」

 お前らなぜそんなに無敵なんだ?

「お、おい横田、お前何とかしろよっ」

 ついに戸口まで出てきていた二年生が横田くんに声をかけた。


「わが天使、瑠璃さんの名を使ってここにくるとは何やつっ」

 いやもう、こいつらの会話痛くて見てらんないんだけど……

「「「我ら、三銃士(さんじゅうし)っ!」」」

「三十四歳なのか? そんな年寄りは瑠璃さんの視界に入らせるわけにはいかないっ」

「セトルリ嬢の可憐な溜息が、一年四組の教室まで響いてきていたのだ。何もかも貴様のストーカーじみた行動が悪いに決まっているっ!」

 いや、お前らブーメランって言う狩猟道具知ってるか?

「セトルリ嬢は、いつもニマァっとしているのが正義なのでござるよ。溜息とか似合わないでござる」

 そのニマァってのはどうなのよ? ファッション地雷でもニマァって似合うの?

「瑠璃さんの魅力がそれだけだと思ってるのか? 所詮は一年坊、浅い、浅いぞお前ら。瑠璃さんの一番の魅力はなぁ、ローファーを脱いだ後手で拾うのが面倒だから爪先に引っ掛けてポイって放り上げたのを直接どこかへ仕舞い込むところに決まってるだろうがっ」

 早口過ぎて何言ってるのか良くわからないけど、なんか凄く判りたくも無いことを言っている気がする。

「フハハハハ。貴様の知らないセトルリ嬢の魅力を教えてやろうか? 我ら一年四組はな、半年前まで同じクラスだったのだよ。セトルリ嬢と。だから我らはセトルリ嬢の下駄箱の中の匂いも知っているのだっ!」

 いや、最低だな、ほんとにっ!

 それ知ったら絶対泣くぞ。あの打たれ強いセトルリでもっ!

 っていうか、響も涙目になってるわ。あと、ちな子の顔が、美人さんがしちゃいけない顔になってるわっ!

「わたしだって、嗅いだ事ないのに……」

 あ、だめだ、この人もダメだったわ。


「げ、下駄箱の香りが何だと言うのだ……この冬休みまでには瑠璃さんと関係を持って、直接ローファーをスンスンさせて貰う予定だっ」


 あ、響が本気で気持ち悪そうな顔になってる。

 ちな子もマジギレ五秒前って感じか。

「後で嗅がせてもらうからいいもん」

 ダメだ。こいつも味方じゃないかも知れん。

 

「直接セトルリ嬢に関わろうとするならば、容赦はせん!」

「これはギルティでござるな。拙者のマヨビームも出撃するでござる」

「はい、こちらには次亜塩素酸入れたスプレーも!」

 大門のスプレーが最悪すぎるなっ! それ、クリーニングじゃどうにもならない奴じゃんっ! 色、抜けちゃうじゃんっ!


「そんな脅しには乗らんっ、行けっ、我らが二年三組っ、あの生意気な一年坊を片付けろっ」

「いや、いくら何でもお前も気持ち悪すぎるわ。一年もボコるが、お前もボコるわ。あと、俺あとで一年六組に謝りに行ってくる……」


 なんか不良が一番マシな人に見えてきたよっ。


 そして、セトルリに対するストーカー行為は治った。

 治った原因は三銃士による二年生への抗議のため……と言う噂が流れたのだが……


「あたし、あいつらに助けられたって思われるのが、めちゃくちゃ耐えられないんだけど……」

 セトルリからの評価は一ミリたりとも貰えなかったと言う。

 ちな子もかなり気持ち悪い人になってきてますけど……愛情の道標が行方不明になってるだけで、悪い娘じゃないんですよ? ほんとに。

 あと、ほんとに嗅がせてもらったらしいです。


 そ、それではまた、お会いいたしましょう。

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