コンビニエンスストア
沢井の家にいちばん近いコンビニは、入る時にメロディーが流れるあのコンビニだ。
そして、次に近いのは茨城空港にあるコンビニである。
北海道に本部のあるこのコンビニは、何故か道民以外にも絶大な人気があり、わざわざここに来るために茨城県まで通う人もいたりするレベルであった。
「お母さん、ちょっとコンビニ行ってくるねー」
「あ、じゃ、ついでにお夕飯買ってきてくれる? 今日はほら、麻紀ちゃんいないから」
今日は麻紀さんは永田町にお泊まりだ。明日まで本部に詰めっきりらしい。帰ってきたらたくさんなでなでしてあげようね。
「ホットシェフのカツ丼とかでいいの?」
「わたしはシャケのおにぎりとサラダで。あなたとお父さんは適当になんかでいいわよ」
「はーい、行ってきますー」
外に出るのでアイテムボックスからジャケットを取り出し、グローブを取り出し、ブーツを取り出し……ほんと便利だなそれ。ナレーションにもくれないかな。アイテムボックス。
玄関出たところでオートバイを取り出し……ああ、乗りたかったのね。だからコンビニとか言い出したのね。
プライマチョーク回してキック一発ぱらんぱんぱん。
一発始動で調子良さそうです。
暖機運転中にヘルメットを被り、グローブを装着。
オートバイの周りをぐるっと回って点検ヨシ。
「段々寒くなってきたなぁ……」
とか言っているが、ほんとに寒かったらエアコン魔法全開で走るので、響にはあんまり関係なかったりする。
何その全オートバイ乗り垂涎の能力は。それも欲しいわ。
沢井の家の周りは農家が多い。必然的に田舎道であり、交通量は少ない。
周りから車が近づいて来ていないことを確認して、さて出発。最初の丁字路を左折、しばらく進んだら次を右折。いつもの百里行きとは逆回りで行ったほうが、茨城空港までは早かったりする。
三つ目の角を曲がると、少し交通量が多くなる。と言っても、相変わらずの田舎道だが。
茨城空港南交差点を右折、コンビニはもうすぐそこだ。
「カツ丼有るかなぁ。お肉ー」
響もセトルリに負けず劣らずのお肉好きだった。
コンビニ前の交差点でウインカーを出し、コンビニの駐車場へと進入する。
シフトダウンしながら車の少ない場所にゆっくりと止まり、スタンドを出してメインスイッチを切る。
キーをオフ、さらに一度押し込んだ上でロック位置まで回して抜き取った。
ヘルメットとグローブを外してアイテムボックスへと仕舞い込むと、お店に入って行った。
コンビニに入ると、この店の匂いがする。
響は大きく深呼吸しながら、店内カゴを手に取りホットシェフコーナーへと向かう。
「えーとカツ丼カツ丼……ん? ビフテキ丼? こ、これっ! わたし、今日はこれにするっ。これはいいものだー!」
なんかめっちゃテンション上がっている。どんだけビフテキ好きなのよ。
「あとはお母さんのシャケおにぎりと、サラダはどれにしよ。パリパリ野菜のポテトサラダにしよっかな」
おにぎりとサラダを手に取り、カゴに収めていく。
「お父さんは、どうせおつまみ代わりだよね。じゃ、焼き鳥セットでも買ってこうかな。あ、焼き鳥もろこしセットとか有るね。これにしよう」
ビールも買ってあげたかったが、響はまだ未成年だ。代理購入もできないし。
まぁ、冷蔵庫には在庫があるはずだ。確か星のマークのビールが並んでた。
買うものが決まればお会計だ。
レジ前に並び、電子マネー入りの端末を用意する。りんごのマークのあの会社製。
ここの端末は、赤外線通信に対応するのが遅れたため、一時期シェアを落としてしまっていた。
しかし赤外線対応した瞬間に、女子高生支持が一気に戻ったあたり、やっぱり凄いなぁ……と感じる。
「あ、袋はいらないです。タッチ決済で」
店員のお姉さん型ロボットに声をかけ、カゴをレジに置く。
商品を光学処理したコンピュータが金額を計算して表示、それに納得できたらタッチ部へと携帯端末を接触させる。
リンゴーン
無事に決済が終わりレシートが二枚出てきた。
カゴの中のものを次々とアイテムボックスへと移し、お店を出る。
ヘルメットを取り出し、グローブを取り出し、鍵を取り出しオートバイへ。
再び各種装備を身体に装着し、お家へ向かう道へと出て行った。
「おうち帰ったらリビングのお掃除して、お風呂掃除してお風呂入れて……あ、麻紀さんのお洗濯物あったかな?」
いい嫁だよ、響。
とりあえず沢井の両親は、普段は何をしてるんだろうねぇ。
家事は麻紀さんと響がやってるっぽいし、かといってお仕事してる雰囲気はないし。
最後の角を右折して、家の前でオートバイを降りた。
さて、お片付けの前にちょっと拭き拭きしましょうか。
アイテムボックスから拭くだけでワックスまでかかるやつを取り出して、オートバイをキレイキレイしてあげた。
いくらアイテムボックスが便利な魔法と言っても、ラノベの奴みたいにメンテナンス機能とかは無いらしい。
『汚れだけ残して取り出せば』
なんて技も考えたのだが、汚れの一つ一つまで意識して残してこないとくっついて来ちゃうの。正直無駄な努力だった。
綺麗になったオートバイをアイテムボックスに仕舞い込み、おうちに入ります。
「ただいまー」
「はーい、お帰んなさい。あ、お風呂入れるから」
なんとっ! お母さんがお風呂の準備をしてくれていましたっ!
「お母さんありがとうっ! じゃ、お風呂済ませてくるね、えへへー」
響はニッコニコしながら脱衣所に向かった。
脱衣所は洗面所と兼用で、洗濯機もここに置いてある。洗濯機の上には、ガス式の乾燥機も装備されている。
脱いだ服は洗濯カゴへ、下着や靴下は洗濯ネットに入れてから。
すっぽんぽんになったら、お風呂場の扉をがちゃこと開いて中に入った。
「ふわぁ、そろそろお風呂場も寒くなってきたなぁ……」
なんて言いながらエアコン魔法をスタート。
ついでにウォッシュ魔法温水仕様を併用しつつ体を流す。
その後、まずは汚れの多い脚周りにボディーソープを塗り込んでから、髪の毛にたっぷりのお湯をかける。
シャンプーはみんな一緒。首相令嬢もお父さんも、みんなおんなじシャンプーを使っている。
ショートボブな響さんは髪の毛洗うのもあっという間だ。
キューティクルのケア? そんなのマイクロマシンさんに丸投げすれば問題ない。
髪を流して、フェイシャルからボディーへと泡泡していく。
髪は短いが身体はでかい……と言うか長い。脚とか長すぎてナレーションが嫉妬するレベルだわ。
基本的に筋肉質なスレンダーなため、柔らかさなんかは微妙なところだが……
さぁ、全身がさっぱりしたら、いよいよ浴槽へ。浴槽の大きさは、まぁ日本的なサイズだ。長い響にはちょっと狭く感じる。
前に麻紀さんと一緒に入ろうとしたが、難しかった。
あ、ちなみにとうとう麻紀さんとの身長差が、20cmを超えてしまった。
出会った頃は15cm差だったから、随分と育ってしまいました。
お風呂でさっぱりしたら夕飯の準備。
と言っても、今日はコンビニ飯。それほどすることは多くない。
レンジでチンする作業は、響が魔法で温めた方が美味しく仕上がるしね。
ダイニングテーブルを拭き上げて、お箸を並べる。
つい習慣で麻紀さんのお箸も並べちゃったのは内緒だ。
買ってきたご飯を並べて、冷蔵庫から缶ビール二本出してっと。
「お父さーんお母さーん、ご飯にしよー」
リビングでイチャイチャしている両親に声を掛け、テーブルに置いてあるお弁当類を魔法で温め始めた。
焼き鳥も蒸れたりしないように。ご飯が熱くなりすぎないように。とうもろこしが破裂しないように……
ビフテキ弁当はお肉が固くならないように弱めに熱を通していく。
「お、焼き鳥かぁ、嬉しいな」
お父さんの分は焼き鳥で正解だったっぽい。お父さんの右側にお母さんが座り、お父さんの前に響が座る。
お父さんとお母さんが缶ビールのタブを引き、ご飯の準備が整った。
「「ツカレナオース」」
両親がパラオ語で乾杯し、響は普通に両手を合わせて
「いただきます」
「お、北海道の牛さんめっちゃ美味しいっ!」
とてもコンビニ弁当とは思えない美味しさだ。
「麻紀さんの手料理並とは言わないけどさ、でも美味しいよ、これ」
「焼き鳥もなかなかうまいぞ」
「もっしもっしもっしもっし」
お母さんは黙々とおにぎりを食べていた。
そして星のマークのビールを、カーッと飲む。
「はぁ、北海道満喫ねぇ。あなた、今度北海道旅行しませんか?」
「ああ、いいな北海道……でも、響は忙しいかな……」
娘思いのいいお父さんです。
「そのうち理沙さんに相談してみるよ。居場所だけはっきりさせておけば、国内なら行かせてくれる気がするし」
たまには旅行ぐらい、したいよね。仕事じゃない奴でさ。
「普段は北海道行っても、一時間もあっちにいないからね……」
往復の時間を合わせても、三時間で行って帰ってきちゃったりする。
「じゃ、今度家族旅行しましょう」
「あ、麻紀さんも一緒でいいかな?」
「何言ってんの? 家族旅行よ? 麻紀ちゃんも一緒に決まってるでしょ!」
あ、長々使って、家族で惚気ただけかいっ!
セイコマの茨城県での店舗密度はなかなかですよね。
まぁ、北海道での店舗密度は頭おかしいレベルですが……
皆さんはお気に入りのお弁当屋さんとか、ありますでしょうか?
それではまた、お会いいたしましょう。




