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生存戦略

 魔女っ娘たちは魔物を駆除するための戦闘訓練だけを受けているわけではない。

 割と頻繁に、生き残る(サバイバル)訓練も実施している。

 ただ、普通の人間とは基本的な生存能力が全く違うため、これを教育する自衛隊の方々もとても苦労していた。


 今日は習志野で小波さんに稽古をつけてもらっている。と言ってもいつもの道場では無い。


「よーし、防護面、外せっ!」

 テントの中には煙が充満していた。

 催涙線香と呼ばれる無害な煙だが、粘膜に付着するととても痛い代物だ。

 涙がじゃぶじゃぶ……魔法使いには無力だった。


「うーん、師匠、やっぱりなんでもありませんっ!」

「ああ、わたしも感じないな……これは訓練にならんな……この訓練はここまで! ヨシ、道場へ行くぞっ!」


        ♦︎


 また、ある時はヘリコプターを模した機材に乗せられた。

「絶対目を開けるな。開けたらどんな危険な物が流れてくるか判らんからなっ」

 突然機材がひっくり返ると、下に有るプールの中に真っ逆さまに突っ込まれた。

 全身水没した状態でシートベルトを外し、ドアを開き、機外へと脱出する。


 魔法使い、完全に目を瞑っても周りの状況は克明に判ります。

 もっとも、響レベルに達しないと水を電気分解した上で酸素を取り出し、呼吸に使うなんてことはできないが……出来……え? ちな子とセトルリは出来ちゃった? え?

 あとの三人も、体内の酸素分布を工夫することで、普通の人の三倍は息を止めていることができたりする。

 そして全員、当然のようにお鼻や耳から水が入り込んだりしないように出来たり……


        ♦︎


「今回はこの富士の樹海からの脱出だ。飛ぶの禁止な!」

 ウォータで水を出し、アイテムボックスには大量の食料が保存されており、マップで地図を常時参照できて、エアコン魔法で体温調節も完璧に……


        ♦︎


「なぁ、あいつらのサバイバル訓練って、意味あんのか?」

「五年前に響ちゃんの訓練始めた時に決まったじゃ無いっすか。全魔法ロストした時のための訓練を行うって」

 教官たちの悩みも尽きないようだ。

「全魔法ロストって、どんな時に起こるんだろうな」

「今の所、マイクロマシンの濃度が低くなると使えなくなるんじゃないか? とは言われてますが」

「けどよ、マイクロマシン暗室作って響ちゃん放り込んだら、数分で外より濃くなったんだろ?」

「まぁ、データではそうなってますねぇ」

 響の中のマイクロマシン工場も、マイクロマシン倉庫も、優秀過ぎて困る。

 

 ちなみに、他県の魔法使い達はここまでの訓練は受けてなかったり……


「それにさ、あの子らが空飛んでる時に、魔法ロストしたらサバイバルもへったくれも無いよな……」

「まぁ、その状況から助かるのは難しいでしょうねぇ」

「一番いいのは、あの子らが前線に出なくて済む様になることなんだろうが……」

「俺らが必死に頑張っても、あの子ら一人で一中隊以上の働きしちゃいますからねぇ」

「はぁ、魔物の出ない世界、戻ってこねぇかなぁ」

「あとはうちの魔法自衛官部隊をもっと早く編成してもらうか……」

斥候(スカウト)としての魔法先導隊は、習志野で編成してるだろ」

「いや、一般部隊として全国に展開してもらわないと、手が足りませんよね……」

「今度出来ると言う魔法省と、防衛省の棲み分けとかどうなるんかね。あの子らが自衛隊入りするのか、あくまで魔物相手の魔法使いになるのか」

「自衛隊に入ったら人間相手の戦争にも駆り出されますよ。そこは強制できないでしょう」

「ま、今は攻めてこようって元気のある国は皆無になっちまったけどな……」

「魔物対策は日本が一番まともっぽいですからね。街中で戦車砲ぶっ放したり、百万都市に爆弾落としたりしてないですし」

「響……と言うか、沢井一味の手柄が凄過ぎんだよ。魔物の飽和攻撃対応できる魔法使いなんて、日本にしかいねぇぞ」

「その日本にしかいない宝物を守るための訓練ですよ。さ、次の訓練計画立ててください」


 まぁ、概ねそんな感じの会議が行われ、彼女達は鍛え上げられていった。


 あ、他県の魔法使いも、来年度からはサバイバル訓練を開始するらしいです。

 ヘリコプターで現場まで飛んでいくとなると、最低限の技術は身につけて貰わないとなりませんから。


 習志野でぴょんぴょんする奴も、やらされるらしいよ?

 あれをやってから、風魔法で空を飛ぶ訓練に移るそうな。

 確かに、着地失敗の時なんかに役立ちそうかな。


        ♦︎


「今日の訓練はきつかった! あたしはあれだね。水に飛び込む系訓練の日は風邪引くことにするわっ!」

「うーん、小波さんにバレたら、ほんとに風邪引くまで沈められそうじゃない?」

「あう……ダメか……師匠、あたしの旦那達の中では、一番厳しいからなぁ……もっと甘やかしてほしいなぁ」

 って、セトルリっ! いつの間に小波さんも旦那扱いなのっ⁉︎

『いやぁ、あの目で睨まれるとゾクゾクしちゃってねぇ、あれは魔眼って奴だよね。あたしらはみんなもうメロメロよ?』

 みんななのかよっ!


 と言うわけで、小波さんにしごかれるセトルリであった。


 響、ティナ子に次いで魔力が豊富になったセトルリさんだが、制御技術がまだまだ追いついていない。

 制御のミスによる自傷事故を、相当懸念されているのだ。

 可愛い可愛いセトルリさんを大事に大事に育てるために、小波師匠は今日もキリリと睨みつける。

『はぁ、旦那の視線が凛々しすぎるっ』

 セトルリさん、幸せそうだし、いっか……


 あ、小波師匠には法律上の旦那さんいるけど、いいの?

『おけおけ問題なし! 師匠も呆れてオッケーしてくれたからっ!』

 って、呆れてたのかよっ!

 明けましておめでとうございます。


 貴重な魔法使いを守るため、今日も頑張る大人たち。

 でも、魔法使いって、しぶといですよね……怪我とか病気にも、異常に強くなりますし……なんせ元々、医療用ロボットですもんね。マイクロマシンさんたち。


 そ」では、今年もよろしくお願いいたします。

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