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テストでデート

 テスト週間が過ぎた。

 今日の二時間目の終わりには、順位表が廊下に貼り出されることになっていた。


 吉野くんは燃え尽きる程に勉強した。もうね、今までで一番勉強したね。高校入試なんて目じゃないぐらいに勉強したね。

 そして、やればやるほど身についた気がする。とにかく覚えるのが苦にならなくなったのは、きっと女神(たぬき)のお導きに違いない。


 いえ、ただ単にマイクロマシンに悪さされているだけですが。

 半魔法使いと言っても、中身は殆どサイボーグ。

 実際に神経シナプスの動きを確認出来れば、普通の人間と全く違う経路で思考をしていることがバレてしまう。

 しかしマイクロマシン濃度の高い人は、測定器や診断機が殆ど使えないため、他人にはそれが一切判らない。

 ただ単に、なんか異常に物覚えが良くなった人としか認識されない。


 きーんこーんかーんこーん……

 二時間目の終わりを告げるチャイムが鳴った。

 吉野くんは一年四組の教室を出ると、順位表の掲示される場所まで真っ先に向かった。


「えーと……前回が百二十位だったから……えーと……百位……八十位……六十位……無い……四十位……にじゅ……う? 二十二位?」


『22 465点 吉野彦星』


 いやいやいやいや、前回真ん中より下だったのよ? 確かにあの襲撃事件でしばらく入院していたと言っても、いくら何でも上がり過ぎじゃね?


「ヒャッハーっ!」

 吉野くんの叫びが廊下にこだまし、同じように試験結果を見に集まってきていた他の生徒が、何事かと吉野くんを眺める。

 うん、叫んでる吉野くんもカッコいいな。何人かの女生徒の目が、ハートマークになってるわ。


 ちなみに、そのまま用紙の上の方を見ていくと

 6. 瀬戸瑠璃

 5. 出町尚子

 4. 樽木詠美

 3. 森河直美

 2. 宇佐美彩香

 1. 沢井響

 と、見事に六組で独占していたりする。


 その日は部活が有るために、それ以上のお話は週末の習志野詣の時に詰めることになった。


 習志野駐屯地、魔王の住処。

「ほれ、響は手が止まってる。蝿がたかるぞ、そんな速度じゃっ! うさぎと瑠璃はなんだそれは。社交ダンスなのか格闘戦なのかはっきりさせろっ! 次、ちな子、直美、手合わせだ、こいっ!」

 とまぁ、激しい戦闘訓練の最中である。

 あ『ちな子』はティナ……尚子の事である。


「じゃ、じゃあ明日は水族館に……」

「うん、水族館、楽しみだね……」

 なんか世界観の違うのが二人いるけどどうしよう……


 テスト順位が二十位以上上がったら一緒にお出かけしよう……が、まさか九十位以上上がるなんて誰が思ってた?

 と言うことで二人きりデートとなったようだ。

 当然六組のみんなは全員

『絶対ついてこないでね? ついてきたらTS漫画の刑だからね?』

 と、たぬきに厳命されている。

 流石に、性転換させられた上でお尻の純潔を奪われる漫画には出たくないため、追跡作戦は全て白紙となった。


        ♦︎


 この辺りで水族館と言えば、アクアワールド茨城県を……大洗水族館を指す。

 茨城県では最大規模の観光施設であり、魔法少女たちも小さな頃から、何度も何度も遠足で連れて行かれた場所でもある。

 正直、目を瞑っていても迷うことなく歩き回れる自信があるぐらい、通い込んだ。


 待ち合わせは石岡駅。

 吉野くんを待たせてはいけないと思ったたぬきさん、待ち合わせ予定の八時丁度よりも三十分も早く駅に到着した。

「よ……吉野くん……お待たせしました……ごめんね遅くなって……」

「いや、まだ待ち合わせ時間なってないから大丈夫だよ。その、樽木さんに早く会えるかなって……」

 一体どんだけ早く来てんだよっ!って、七時前にはいたのかよっ!

 それ、バスじゃ間に合わないよね? その時間に着くには始発前に出てこないと間に合わないし。

 あ、チャリで来たのか、そっかぁ。

 吉野くんはそういえば、通学もほぼ自転車だったね。響と違って人力で漕いでくるやつで。


 まぁ、合流早ければ遊べる時間も長くなるし、いいか……

 石岡からは、電車とバスを乗り継いでいく。

 大洗水族館は、大きい。すごく大きい。バスを降りて正面エントランスへと向かうと、大きなサメのマークが見えてくる。ここはサメの展示が多く、サメ専門の大型水槽も有るため、これがトレードマークとなっている。


「あー、でも久しぶりかな? 前の遠足で来たのって中一の時だっけ?」

 吉野くんがたぬきの方をチラチラと見ながら話しかけてくる。

 かっこいいけどニヨニヨしてるよね。

「そうだね。中学の遠足だと、中一の秋に来ただけだね。小学校の頃は二年に一度ぐらいは、ここだった気がするけど」

 そのほか、地域の子供会の旅行とか農協の慰安とか、学校行事以外でもやたらとここにくる。そのため、いつも来ている感が満載なのだ。

 たぬきさんは吉野くんのニヨニヨには気が付かずに、エントランスに向けて足を進めていった。


「さてと、じゃ、順番に順路巡りで良いかな? あ、樽木さんはこれは重点的に見たいものとか、ある?」

「んー……イルカショーはやっぱり見たいかな? いつ見ても凄くカッコ楽しいから。それと、たぬきで良いよ? 詠美でも良いけど」


 詠美でも良いけど……エイミでも良いけど……

 あ、吉野くんの意識が持って行かれる寸前になってるわ。

「え、ええ、えいみさん……」

「はい、じゃ、それでね。……あー、わたしもべガ君って呼んだ方がいい?」

「あ、そこは……吉野で……」

 たぬきさん、喜ばせておいてからの地雷踏みに行くスタイルはどうかと思いますよ?

 ほら、吉野くん、目に見えてしょんぼりしてません?

「あう、ごめんね、吉野くん……」

 謝りながらそっと手を繋ぎ……

 はい、もうね、この娘もかなりの悪女ですよね? 吉野くんのたぬき依存度が爆上がりしすぎてませんか?

 まぁ、もともと高かったですけど。


 チケットはWEBで購入済みなため、そのまま入場門へと入り、端末を提出して入場する。

 さあ、楽しい楽しい水族館デートの始まりです。

 水族館デート……全学生憧れのアレとか、もうね、爆発しちゃえばいいんですよね。


 ただ、響は『美味しそう』って言い出しそうだし、おみちゃんは『竿出したい』って言うに決まってますけど……


 それではまた、お会いいたしましょう。

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