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中間テストに向けて

 二学期の中間テスト……と言っても、六人とも学力には何の問題もない。魔法使いのスペックと、人数が少ないことによる個別指導の賜物だ。

 というわけで、いわゆる部活動停止期間中でも百里までは行く。

 まぁ、そこで何をするかと言えば、試験勉強もしていたりするんだけどね。


 そして、今日はゲストで吉野くんもっ!

 普段なら習志野まで連れて行かれて、小波師匠に小突き回されるんだが、今日は百里でお勉強教えてもらえるらしい。

 しかも、樽木さんにっ!

 まぁ、お邪魔虫が五、六匹いたりするが、そんなの樽木さんが勉強を教えてくれることと比べたら、瑣末な事である。


「吉野くんは今遅れ気味の学科とか有るかな?」

「数学……あと、それのせいで物理基礎もよく分からなくなってきちゃって……」

「あー、物理かぁ、物理は響……と言いたいところだけど、教え方のうまさで理沙さんに見てもらうのがいいかな」


 え? 樽木さんに教えてもらえるんじゃないの? みたいな絶望の顔をしないでくれ。多分ちゃんと教えてくれるから。

「数学はわたしでも大丈夫かな? 数学なら響でも良いんだけど、時々響語を翻訳しないとならないからね」

 何だよ響語って。数学は擬音とか入る余地ないだろ? 中学の頃とか、たぬきもうさやも響に数学習ってたでしょ?

「響に習うとね、基礎が疎かになりがちなんだよね。あの娘、何が基礎なのかわかってないしさ」

 まぁ、一次方程式と二次不等式を、どっちも同じ感覚で扱わせるもんねぇ。響って。

「で、それぞれの計算は生徒にやらせるもんだから、生徒は(せんせい)が何を言っているのか、考えながら教わらないとなんないの」


 というわけで、樽木さんと頭つき合わせてのお勉強……はぁ、時が止まれば良いのに……


「あっちの二人は置いておいていさ、みんなは中間大丈夫よね?」

 理沙さんが心配して聞いてきたが、あとの五人は問題無い。むしろ、成績発表の後に学年二位グループの人たちからの、やっかみとかの方が面倒な感じで。

「むしろ、手を抜きたい……までありますわね」

「元普通科のあたしなんて、最悪だよー。この間まで下に見ていたあたしの方が、成績上になっちゃったりしたからさぁ」

 それでも、もともとがガチガチの進学校とかではないため、ガリ勉くんみたいなのは少ないのが救いか。

 一人、家が近いからって理由で入ってきた秀才はいたが、彼はあんまり気にしてないっぽい。


 響相手だと、気にしたら負けなのがわかっているのかも知れない。頭良いし。


『あれ? わたし、何となくディスられてます?』

 いいえ、褒めてます。

『あ、ならいいか。帰ったら麻紀さんにも褒めてもらおっと』

 チョロインは健在だなぁ。


 翌日も、翌々日も、百里基地に集まっては勉強をしている六人プラス一人。

 よく考えたらめっちゃハーレムじゃね?


 学年で一番から六番までの美少女と、毎日放課後に勉強してるとか、また襲撃されたりしない?

 更に勉強会場には年上の美女が二人常駐してるとか、みんなに知られたら呪われない? まぁ、二人合わせると九十歳余裕で超えてるんだけどさ。

『いや、そこで足し合わせるのは明らかに悪意入ってるよね? なぜ足した?』

 すみません……出来心です……

『出来心で済んだら対策室はいらんっつーの。後で始末書ね。提出先は内閣府で』


 しかし吉野くん。これだけの美女、美少女に囲まれていても、一ミリも樽木さんから意識を離さないのは凄いと思う。

 樽木さんの一挙手一投足を記憶して、家に帰ってから反芻してるんじゃなかろうか? ってぐらいに集中してる。

 試験勉強中にゾーンに入るって言えば聞こえは良いけど、入ったゾーンがスクールゾーンじゃなくてラブラブゾーンなのは、どうかと思うよ?

『はぁ、尊い……』

 お、おう……


 もっとも、吉野くんだってもう半魔法使いな訳で、当然理解力も記憶力も半年前までとは桁違いに上がってきている。

 試験成績だって、それに伴って上昇してくるだろう。たぬきに気を取られすぎていなければだけどさ。

『はぁ、樽木さん……良い匂い……』

 この、ティナの香りに包まれた部屋の中でたぬきの匂いだけ嗅ぎ取れるとか、化け物なのかも知れない。


「じゃ、次の問題ね……ん? 吉野くん?」

「あ、いや、ありがとう、樽木さん」

「次の問題出すよ? 大丈夫? 疲れた?」

「大丈夫だよ、樽木さん。とても助かってるよ」

「じゃ、次の問題行くよ? そだ、テスト終わったら、どこか遊び行かない?」

 遊び行かない?……遊び行かない?……遊びいかない……遊び……


 フォォォォオオオオ!!!

 樽木さんからのデートのお誘いっ⁉︎ え? マジでっ⁉︎

 吉野くんの身体がビビくんって痙攣して、雰囲気が変わった。

「行く……」

「ん?」

「行きます……樽木さんとお出かけ……デート……フフフフデート……」


「ちょっ、ねぇねぇ、響……あっちの二人、なんか雰囲気ヤバくない?」

 セトルリさんが二人の雰囲気変化に気付き、響に警戒を促した。


「ん? デート? え? デートすんの? うわ! それはみんなで見に行かないとっ!」

 いや、やめてあげてよ! こそこそつけ回す計画立ててるんじゃないよっ!

 って言うか試験勉強どうしたんだよ、お前らっ。


 たぬきと吉野くんは何となく二人の世界に入ってる気がするし。

(どこが良いかな……やっぱり水族館とか定番かな……)

 吉野くん、もう旅立っちゃってるっぽい。

 たぬきはどうしちゃったんだろう。こんなみんながいるところで大胆にも吉野くん誘うとか。

 (やばい……みんなでって付けるの忘れてた……もうこれ取り消せないよね……)

 あ、覚悟完了してた訳じゃないのね。


 ならば、テストの成績次第とかにしたら良いんじゃない? 吉野くん頑張りそうじゃない?

『それだっ!』


「じゃ、吉野くん。吉野くんの順位が、一学期の学期末より、二十位以上上がってたら二人でお出かけしよう。十位以上ならみんなでお出かけで、それ以下なら習志野デートで」

 たぬきさん、なかなか大胆な提案しました。

 吉野くんのやる気はもう、人生最強レベルに上がってる気がします。


「理沙先生っ! 基礎物理教えてくださいっ」

 

 さぁ、週が明けたら中間テストです。吉野くんがんばれ! 話が進むごとに、樽木さんとの仲は間違いなく進展してるよっ!

 ご褒美あっても、こんなに集中してお勉強できたり、しませんでしたけどねorz


 さすが半魔法使い……ってことでしょうか。


 それではまた、お会いいたしましょう。

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