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新魔法

 コミコミパックに新魔法が登録された。

 と言うわけで、まぁ、最初にインストールされるのは我らが担当官で……


「アイシクルランスっ!」

 理沙さんの叫びと共に、製氷機で作られたみたいな氷がポイポイポイっと飛んでいく。

「って、いくらわたしの魔法がしょぼいって言っても、これはなくない?」

「うーん……わたしもやってみるね。アイシクルランス!」

 ポイポイっ。

「確かにこれは、攻撃魔法というには厳しすぎるかなぁ?」


 と言うわけで、こんな時は魔法の先生を呼び出します。

「あー……理沙さん、アイシクルランス、そのまま撃つとそうなるんです」

「ん? 響ちゃん、どう言う事?」

「アイシクルランスをそのまま撃つと、ウォータの魔法に冷却魔法をかけた上で、水の半分ぐらいは加速に使われちゃうんです」

「って事は、一瞬で用意できるのはせいぜいコップ一杯分ぐらい?」

「ですです。そんなもんです。なので、お水は先に用意してあげてください。凍らせるのは難しくないので、適当に凍らせて、後ろで水蒸気爆発起こしてやれば……アイシクルランスっ!」

 どぉんっ!

「とまあ、こんな感じに……」

「って、射撃場壊すなー!」


「ウインドショット!」

 今度は美智子が撃っている。

 ブオーーーーーーーーー!

「って、なんかめっちゃ風吹き出してるっ! あ、でも自分は押し戻されないのね」

 「ウインドショットって、その名の通り空気の塊を相手にぶつける魔法なんですよね」

「うんうん」

「空気の弾を、空気の中で撃ち出したらどうなると思います?」

「空気抵抗であんまり飛ばないかな?」

ピンポーン(エギザクトリィ)。もう、びっくりするぐらいの勢いで減衰しちゃいます。だから、先に通路を意識してやってください」

「通路?」

「はい。真空の通路です。ただ、真空に空気突っ込んだら、それはそれで拡散しちゃいますので……」

「ますので?」

「空気が固まり続けるように、シュミット数を上げる方向でイオン化進めて温度高めにすると、いい感じでまとまって飛んでいってくれるんですよ。この辺、直美がすごく上手なんです」

「お、おう……」

 いや、難しいだろっ!

 

 ステータス・オープン魔法がインストールされていれば、誰でもメニューをたどって魔法を発動する事はできる。ここまではその通りだ。

 しかし、上手に使いこなすとなると、それなりの訓練とセンスが必要になるらしい。


「たとえば、今回増えた魔法の中で、有りそうで無いものに気がつきませんか?」

「あ、わかった! サンダー系とかの雷魔法ね」

「はい。これも仕組みとしてはめちゃくちゃ簡単なんです。ビリビリ魔法の親戚なんですから」


 ビリビリ魔法も、元々はイグナイトと言う着火魔法からの派生だ。

 マイクロマシンは電子を取り扱いやすいので、火を点けるための魔法は電気火花を使っている。

 そして、この電気火花を直接人体に流しているのが、ビリビリ魔法である。


「ちょっとやってみましょうか。理沙さん、美智子さん、わたしの後ろに回ってくださいね……サンダー」

 ビシャっ! と放電の音と稲光りが発生し、雷が射撃場の照明を叩き割った。

「とまぁ、わたしでも行き先が運任せになっちゃうんですよね。これが……」

 ジジッ、バジッと壊れた照明から断末魔の悲鳴が聞こえてくる。

「今の、ちゃんとターゲットまで真空のガイドコース作ったんですけどね……途中から捻じ曲がって別の方向に飛んじゃうんですよ。だから、危なくて使えないのです」

「なるほど……」

 美智子さんがなんとなく納得してくれた?

 

「で、壊した照明の顛末書は誰が書くのかな?」

 理沙さんは納得してないらしい。

「あ、理沙さんお願いします」

「って、わたしかいっ!」

 まぁ、実際に理沙が書くことになるケースがほとんどだが……なんだかんだで、理沙も響を可愛がってるのだ。

 これからも、多分ずっと付き合うことになりそうだしね。

「あ、そうだ……今、内閣府が全部一手に引き受けてる異世界生物対策なんだけどね、近いうちに魔法省って役所ができて、魔法使い関連はそっちに丸投げになりそうなのよ」

「魔法省……ですか?」

「そそ。防衛省とか文部科学省とか厚生労働省とかみたいな奴ね」

 流石に内閣府だけで取り扱うには、規模が大きくなり過ぎてきた。

 魔法の研究から行使、魔法使いの管理や魔法関連法規の検討など、やることが多くなり過ぎてきた。

 しかも、この先急激に魔法使いが増えることが予測されているため、早めに役所を立ち上げる方向で動き始めている。

「ま、ほとんど麻紀さんの手柄だけどねー」

「あー、この間まで、やたらボロボロになってたの、これなんですか?」

「多分そうだね。帰ったら沢山癒してあげてね」

「任せてください! もうね、今日のお夕飯も作っちゃおうかなっ!」

「いいね。何作るの?」

「ラピュタトースト!」

「いや、夕飯にそれは辞めたげて……」


 そんな会話をしながら、新魔法の検証を続けてゆく。

「ウインドショットっ!」

 ぼふんっ!

「お? 綺麗に飛んでった?」

 理沙がウインドショットで、30m先のターゲット用紙を吹き飛ばした。

「今のは綺麗に道が作れてましたね。この道をね、こう、あっちでブワっと広げたりすると、また違った効果が出たりして面白いんですよ」

「ブワっと……ね……」

 響っぽい伝え方だなぁ……とか思いつつ、上手く発動できたことを喜ぶ。


「それで、そのブワっとなるやつがファイヤーボールの代わりの範囲攻撃になったりするのかしら?」

 美智子さんはお仕事忘れてなかった。さすが。

「そうですね。小さな魔物を押し返すとかなら、そのブワっでいけると思います。他の魔法だと、ストーンバレットは風で礫を吹き飛ばしてる都合上、数の制限があまり無いです。散弾銃みたいに使えます」

「なるほど」

「アイシクルランスは、ちょっとアレンジしていくとこんな風に……ブリザードっ」

 ぶわっと冷気が広がると同時に、ターゲットが四レーン分ほど、樹氷のように氷漬けになった。

「実はあんまり水関係なかったりするんですよ。この魔法。単純に相手の温度を奪う魔法なので。ただ、お水を少し混ぜてやると、比熱の関係で凍らせやすくなるんです」

「なるほど……」

 もう、なるほどしか言ってないな……


 一通り魔法の検証を終わらせると、この後は神戸の魔法研で実証実験。本郷の帝大研究室で実験、更に東富士で自衛隊との連携を確認してから他の魔法使いへのインストール可否が決まる。


 でもね……


「ブリザードっ! おお、凍った凍ったっ! あたしの魔法一発で、溶けかかったガリガリくんが復活っ!」


 六組の生徒たちには、響がもう突っ込んじゃった後でした。

 雷さんが落ちる先を、コントロールできればいいんですけどねぇ。

 響のパワーで誤爆したら……ガクガクブルブル


 それではまた、お会いいたしましょう。

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