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コールサイン

 無線免許も取れた。

 空を飛ぶ法律はただいま鋭意改正に向け審議中。と言うわけで娘たちが空を飛ぶための環境は整いつつあった。


 そこで必要になるのがコールサインだ。

 と言っても、あらかた決まってはいたりする。

 響は空を飛び始めた時に基地司令につけられたコールサインを使い続けている。

『マジカル響』

 当時、空を飛べる魔法使いなんて響しかいなかったんだから仕方ない。


 その後、同じく無線免許を取ったたぬきとうさやはそれぞれ『ラクーン』『ラビット』と呼ばれていた。って、まんまやんっ! まぁ、狸じゃなくてアライグマだけど。

 セトルリはもう、基地の人に『セトルリはこれな』と言われてラピスラズリと決まっていた。単純に『瑠璃』を英訳しただけだ。

 と言うわけで必要なのはナオナオの二人のコールサインである。


 基地全体のコールサインを憶えてる響が音頭を取って議論をしていく。

「直美と尚子はどうしよう……そのまんまだとやっぱり聞き間違えるよね。語尾消えたらわからないし」

 Nao……と途切れてしまった時、二人のどちらだか判らなくなるのは致命的だ。

 特にセットで出撃しやすい二人だけに、慎重に考えなければ……

 

「はいはいはーいっ‼︎」

「はい、セトルリ、どうぞ」

「直美はねー、おみちゃんっ! 前から考えてたっ」

 慎重に……

「ふむふむ。直美の意見は?」

「いいわよ。それで。わたしはおみ、わたしはおみ、わたしはおみね」

 慎重?

「じゃ、直美はおみで決定かな? 尚子は希望とか有るかな?」

「特に無いね。なんでもいいよ?」

「はいはいはーいっ‼︎」

「はいはい、嫁、どうぞ」

「尚子はねー、ちな子っ!」

「なんぞそれ?」

 みんなの顔にはてなマークが浮かび上がった。

「でま、ちな、おこ、で、ちな子」

「お、おう……尚子はそれで?」

「う、うん、意表つかれたけど、良いよ? セトルリがつけてくれた名前、大事にするね」

 そっちかいっ‼︎

 はぁ……慎重とは?

「実は、フレグランスとかスメルとか、そんな方向で名づけられるかな? とか思ってたんだけどね。うん、ちな子良いよ。わたしはちな子。ちな子。ちな子」


 こうして全員のコールサインが決定した


「尚子の名前、ローマ字表記でアメリカ人に見せたら、チャイナ子って呼ばれちゃうかな?」

「良いよ、そしたらチャイナドレス着て飛んであげるよ」

 あ、セトルリが鼻血吹いたわ。

  尚子改め『ちな子』は、身長有るだけにチャイナドレスがめちゃくちゃ似合いそうな気がする。

 けどまぁ、実際にチャイナとか言われると紛らわしいから、ヘボン式ではなく訓令式にちょっと変更。

 

 沢井 響 Magical HiBiKi

 宇佐美 彩香 Rabbit

 樽木 詠美 Raccoon

 瀬戸 瑠璃 Lapis Lazuli

 森河 直美 Omi

 出町 尚子 Tina


 とまぁ、そんな感じで決まったからには、基地内で周知してもらう必要があるわけで……


「おーおー、みんなよく来たねぇ。まぁ座りなさい座りなさい。あ、お菓子! 今用意するから、ささ、こっちに……」

 百里の良いロリコン、平空将補。

 通常の高校一年生ともなると、もう賞味期限切れになる筈だ。

 しかし彼女たちは魔法使い。まだ完全には熟れきっていない絶妙な部分が続いている。

 あ、ちな子は賞味期限切れらしい。

 響は更に身長は高いものの、言動が幼すぎてロングライフ食品並みの賞味期限らしい。

 うん、嬉しくないな。これっぽっちも……

 ただまぁ、この人に話付けとかないと先に進めないから仕方ない。がんばりましょう。

 

「と言うわけで、わたしたち全員のコールサインが決まりましたので周知をお願いします」

「ああ、任せてくれたまえっ。今日中に日本全国の空自基地に知らせとくからっ」

 張り切りすぎだ。


 怖いからとっとと基地司令室をお暇すると、管制課や飛行隊への挨拶も済ませる。

 みんなニコニコしながら喜んでくれた。

 多分、これから基地内で呼び止められる時は、コールサインで呼ばれるようになるだろう。

 カクテルパーティ効果で雑音の中からでも自分が呼ばれたことを認識するため、普段から慣れさせておくことも大切なのだ。

  ただ、セトルリはセトルリになりそうな気がする。だってほら、セトルリだし。


「じゃ、よろしくね、おみちゃん、ちなちゃん」

 食堂のおばさまにまで言われてしまった。

 けどまぁ、悪い気はしない。基地のパイロットさんたちと同じ扱いとも言えるしね。

「はい、こちらこそよろしくお願いします。おばさまっ」


 直美改め『おみ』は、普段からこの食堂で食事を摂っている。

 自衛隊員では無いため、魔法使いが自衛隊食堂で喫食する場合は、基地から内閣府へと請求書が回る。

 また、喫食申請は割とゆるゆるで認めてくれている。みんな娘っ子には甘いのよ。

 足りなくなったら適当にまかないで作ってくれたりするぐらい甘いの。

 おまけとかもバンバン付けてくれるし。


 と言うわけで、おばさまとも仲良しなのだ。

 この間、海まで遠征してワカシを沢山釣ってきた時は、小さいのにも関わらずお刺身にしてくれて、美味しくみんなで戴いたし!


 自由だな、お前ら……


        ♦︎


「はい、じゃ飛行訓練行くよっ。まずはティナちゃんから、はい」

 数年前に響がやったヘリコプター扱いの飛行訓練も進めていく。

『百里コントロール、ディスイズティナ、ヘリパッドNo.ツー、リクエストデパーチャー』

『ティナ、ディスイズコントロール、クリアードフォーテイコフ。グッラッ』


 シュババババババ……と、風魔法による飛行術特有の音を立てながら尚子……ちな子……ティナが飛び上がった。

 続いて直美……おみがヘリパッドへと入り、次のリクエストをかけていく。


 これからしばらく、彼女たちが今訓練していることは大きく変わっていくだろうと思われる。しかし今はまだこれが正規の手続きなのだ。

 きちんとルールを守る良い魔法使いへの道は、まだまだ長く続いている。


 ルール守る?

 なんか結構ポンポン飛んでるよね? 実際問題としてさ。ま、良いけど……ご安全にね。

 コールサイン……戦闘機乗りの方々のコールサインとか、めっちゃかっこいいですよね!


 間違ってもマジカル響とかいないし、そもそも一息でスパッと話せる少ない音節で構成された物になってるし。


 まぁ、魔法使いだから緩いんです。多分!


 それではまた、お会いいたしましょう。


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