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聖一叔父さんとめぐみさん

「め、めぐみさんめぐみさん、その指輪……」

「ふふ、詠美さま、どうですか? 可愛いでしょ。この指輪……ふふふ」


 と言うわけで、とうとう聖一おじさんがめぐみさんにプロポーズをしたらしい。


「うわぁ、ダイヤですか? ダイヤですか?」

「ええ。ダイヤモンドよ。もっとも、人造だけどね」

 人造ダイヤの製造技術は上がり続け、15カラットの大粒ダイヤモンドが公務員の給料三ヶ月分で買えてしまう様になった。

「凄い……きらっきらっ……どこでプロポーズされたんですか?」

「聖一様ったら凄く頑張ってくれてね、筑波山から夜景見ながら……」

 って微妙だなおい……。


「それでね、こんな僕ですけど、結婚してくれませんか? 一緒に詠美と浩太を育ててくれませんか? って」

 って、待てぃっ! なんでそこで姪っ子甥っ子が出てくんねんっ! 自分たちの子供育てろやっ!

「わたしもね、年も年だし、魔法使いだしで子供作れるか、わからないからね……」

 そう言えばこの人、もう五十近いんだったわ。

 まぁ、それでも沢井夫妻と比べたら若造もいいとこだし!


「さ、流石にプロポーズにわたしの名前が出てくるのはどうかと思います……叔父さん、いくらなんでもそれは……」

「良いのよ。わたしも詠美様や浩太様の事がとても大切ですもの」

「そろそろその『様』っての辞めませんか?」

「辞めませんよ?」

「はぅー。でも、わたし達の叔母様になるわけですし……」

「ヒーローの宝物、尚かつ世界の宝の詠美様ですから」

「な、なんか顔から火が出そうです。はぁ、今度また叔父さんの本描いちゃる……」

「最初に読ませてくださいね」

「え? 読むんですか?」

「当たり前です。お願いしますね」


 さぁ、いつものノリで描いたら絶対にドン引きされるのは間違いないだろう。

 かといってやおい本以外描ける気がしない。そして、描く気も起きない。


 となると腐らざるおえない。

 主役は聖一叔父さんで良いとして、カップリングをどうしていくか……めぐみさん相手だとただのラブコメだ。腐りようがない。

 他の登場人物はちょっと難しい。となると何かに命を宿らせるしか。

 このシーンに出てくるのは聖一おじさん、めぐみさん、婚約指輪、筑波山。


 婚約指輪が叔父さんのお尻を責めたら、流石にそれはめぐみさんに申し訳なさすぎるし……うーんうーん。

 普段無いほどにたぬきは悩んだ。人に……やおいに慣れてない人に読ませるの前提となると、いつもの感覚ではその後の人間関係に問題が出そうな気がして仕方がない。


 叔父さん以外に誰もショックを受けない様な構成……って、叔父さんがショック受けるのは良いんだ……

『いえ。叔父さんには流石に読ませる気はないですよ?』

 あれ? 読者は選ばずじゃないの?

『選びます。叔父さんとか吉野くんとか、絶対トラウマになるでしょ?』

 ん? 吉野くん、たぬきの本読んでるよ? 自分が主人公になってる本もちゃんと読んでるよ? なんならこの間の陵辱ものもきちんと読破してるよ?

『え? え? え? え、えぇぇぇええええっ⁉︎』

 それでもたぬき一筋なんだから、凄いよあの子。大事にしてあげなよ?

『…………もう、顔合わせられない…………』

 顔合わせないと、悲しむよ。吉野くん。


 とまぁ、そんなわけで叔父さん主役の本が完成した。

 カップリングは筑波山✖️聖一おじさん。

 山一つ呑み込む聖一おじさんのお尻が、とってもキュートな一節となっていた。

 リングは叔父さんの胸を責めるためのピアスがわりに……って、酷い扱いはそのままじゃねーかっ!

 いや、万が一これ本人が読んだら、百年の恋も一瞬で消えてなくなるわっ!


 この本が回し読みされていくことで、聖一おじさんの婚約が周知されていくことになった。

 結婚予定日は来年の夏休みごろになる予定だ。

 結婚式から新婚旅行の間のめぐみさんのお仕事……聖女のお仕事は、響にカバーしてもらうことになる。

 また、政治家になるための準備もまだ続いているため、休日には麻紀も、樽木の家の近くに作った事務所へと通うことになるだろう。


「新婚旅行はどこに行きたいとかあるんですか?」

「南の島に行きたいけどね。こんなご時世だから……沖縄とかになるかしら」

「あー、海外は難しいのかなぁ」

「特にわたしの職業が職業ですから……多分日本国外には出させてもらえないんじゃないかと思います」

 世界にたった一人の聖女。万が一拉致でもされた日には大変なことになってしまう。

 って言うか、そんな凄い人射止めた叔父さん凄くない?


「わたしが聖女になれたのは、聖一様のおかげですから……聖一様がいらっしゃらなかったら、あの火事が無くても、わたしは魔法を使えないおばさんのままでしたよ」

 あー、それは確かにその通りかもしれない。

 魔法使いに覚醒する前は、トラウマ抱えた引きこもりだったもんねぇ。


「来年からはね、麻紀さんと進めてる選挙の準備が忙しくなりそうですし、式あげたら頑張るわ」

「来年の衆院選狙い なんでしたっけ?」

「ええ。衆議院議員選挙ですね。その前に解散総選挙とか無ければですけど」


 もう、プレハブながら選挙事務所は立ち上げた。地元の有力者への顔つなぎも頑張っている。また、メディアからの取材はできるだけ断らずに受け、一般への顔出しもバッチリ進めていた。


「さぁ、そろそろ聖一様が帰ってくる頃だわ。わたしはお風呂とご飯の準備始めますね。詠美様は今日はどうされますの?」

「ん、この後は訓練行ってきます。今度また一緒にやりましょうね」

「ええ。わたしも頑張りますね。じゃ、行ってらっしゃいませ」


 超人気元アナウンサー、かつ唯一無二の聖女との結婚を決めた消防士が何しているかと言うと……


「やべぇ……指輪代払ったら、詠美と浩太のクリスマス代捻出が厳しい……指輪、もう一回り小さくしときゃ良かったかな……」

 なんか罰当たりなことを言っていた。

 聖女さまとか言っても、回復魔法が使えるだけの普通の人ですからね。めぐみさん。

 決して怪しい宗教関係者とかではない筈なので……


 それではまた、お会いいたしましょう。

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