27話
※シン目線です。
シャオが部屋から出ていってすぐに名を呼ばれた。
呼ばれた方へ目を向けるとシャオ曰く変態と呼ばれる魔法使いがいた。
執事はこの件を奥さまへと伝えにシャオと共に出て行った。
魔法使いと二人っきりは心配だというシャオの要望で第一秘書が俺の今後のスケジュールを伝える為に後からくるからと聞いて少し落ち着きを取り戻した。
……シャオが来る数分前。ニコラスが無断で入室し、治癒をするからと迫ってきた。
入室してきた奴の目は子どもの様に無邪気だった。本能的に素直に応じれず暴れたところを、後に来たシャオに見られたのだった。
……少し俺に対してシャオは過保護な気がする。大人の奴隷でも犯罪者まがいな奴もいたからあの程度の変態は平気なのに。
普通の奴隷はボロ雑巾になるまで働かされる。運がなければ生死の自由さえ奪われることもある。奴隷とはそういうモノだ。気に入らないという理由だけで死んだ奴を何人も見てきた。……いつか俺も、ああなるのだろうと諦めていた。
何度も殺されそうになっても生き残り、反抗して何度も奴隷市場に戻ってくる俺を暗殺ギルドに売られる話が上がったところでシャオに買われた。
奴隷商人はどうせすぐに戻ってくるだろうと過去最低額で俺を売った。
俺はどんな我が儘に振り回されるのだろうかと覚悟をしたが、あいつは俺に生きるために技能をつけろと言った。自由になったら何がしたい?なんて初めて聞かれた。そうだよな。今の奴隷制度は大昔と違っていつかは自由になる時が来るんだよな。
……特に、やりたいことはないな……。帝国に未練もないし……。
俺の働き次第で奴隷の雇用を考えているなんて変なことを考える奴だと思った。だが、面白いとも思ったのも事実だ。
あいつのやろうとしていることは、非常識を常識に変えるようなものだ。
そういえば、この別邸と呼ばれる屋敷の部屋で生活してから、身体の不調や悪夢が解消された。信じられないことにピタリと止まったんだ。
生活が前と違い豊かになったからだろうと気にしなかったが、まさか。呪われていたとは……。奴らがやりそうなことだな。
ーーーーーーー
「おーい、聞いてる?」
返事をしないだけでニコラスは俺の顔を至近距離で覗きこんできた。……いつの間に近くに来たんだ?動く気配が全くしなかった。
こいつには警戒していた方がいいかもしれない……。
「聞こえている!少し、離れてくれ……。」
「わかったからそんなに睨まなくてもいいじゃないか~。ブゥ~。」
ニコラスは口を尖らしながらも向かいの席に戻った。
「さて、お姫さまに聞かれてはマズーイ話でも二人でしよっか♪」
ニコニコと人好きそうな顔をしているが、シャオが居たときと比べて声のトーンが低くなっていた。
二人っきりで話すことだと?無意識に身体が身構える。シャオがいないと話せないとはなんだ?
「……話ってなんだ?呪いを移すのに、どんなリスクを背負うことになりそうだ?」
今一番ありそうな事をいう。その話なら納得だ。呪術はそれなりにリスクはあるが、成功すれば相手が死ぬまで追いかけてくる。
この魔法使いがどんなに凄いのかはわからないが、リスク無しで簡単に解術できるなんて思っていない。
「いやいや、俺はお姫さまの前では嘘はつかないよ。君の呪いはノーリスクさ☆」
では、何の話だろうか。
「ねぇ、生まれは帝国って言ってたよね。」
俺は黙って頷く。どこで拐われて奴隷になったのかは調べようとすればわかる事だ。隠すことはしない。
「だったら何処の貴族の生まれ?俺の予想だとかな~り身分が高いと思うんだけどな~」
その質問はどう返そう。背に冷や汗が流れる。
「あぁ、答えれないかな?呪いとは別に誓約でも結ばれているのかな?」
それも、当たりだ。流暢に喋れないのも誓約の影響がある。
こいつはどこまで知っているのだろうか?
「うーん。答えなくても大体予想がつくからいいけどね~。君、王族の血筋だろ。……それも直系筋だ。」
俺は目を伏せた。目の前にいるニコラスの、全てを丸裸にしてやるぞという視線に耐えられなかった。
俺はどこでボロを出したんだろうか?




