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Unlimited Fight  作者: マコト
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開幕

 大会までの日々はまたたく間に過ぎていった。迷いを振り切ったことでJOKERmk2は直ぐに馴染むようになり、瑠璃や修治の意見を取り入れて技や特性を実装していった。そして実装が全て済んだ後に改めて微調整を加え、四人全員が納得できる仕上がりとなった。


 そして大会当日、会場は奇しくもケン兄が初の防衛戦を行ったゲーセンだった。


「へぇー結構人が来てるな」


「ほんと、すごい人ですね」


 修治(しゅうじ)瑠璃(るり)は人でいっぱいのゲーセンを珍しそうに眺めている。対して、僕と真白(ましろ)はなんというか、緊張していた。


「なんかお腹痛くなってきた……」


「奇遇ね、先輩。わたしもちょっと胃が痛くなってきたところよ」


 うん、何か二人そろってメンタルは弱かった。


「出場される選手の方はこちらにお願いしまーす」


 スタッフの人が声をかけると会場にいた何人かが移動を始める。


「ねぇ先輩、わたしも行っていいのかな?」


「僕と真白は二人で出場ってことだったし、いいんじゃないかな?」


 迷った末に二人で移動する。移動した先では簡易的なトーナメント表がボードに貼られており、今からくじ引きで決めるのか箱も一緒に置かれている。人だかりの中には鈴羽(すずは)の姿もあり、周りからは少しだけ浮いていた。


 このくじ引きはかなり重要だ。いちおう目標としては鈴羽と戦って勝つことだから、1回戦で当たれば目的の半分は達成したことになる。逆にトーナメント表の端っこ同士になった日なんかには、ここにいる並み居る強敵たちを倒して決勝までいかなければならないことになる。


「せめて決勝で戦うとかいう少年漫画みたいな展開にはなりませんように……」


 そう祈りつつ僕は順番を待ってくじ引きを引いた。そしてすぐに後悔した。


「フラグ立て過ぎたわね、先輩」


「やっちまった……」


 奇跡的なくじ運を発揮した結果、僕と鈴羽は見事にトーナメント表の端と端になった。


「想い人との間には大きな隔たり……これは燃えるね、先輩!」

「七夕にはまだ早いんだけどなぁ……」


 そして、僕をげんなりさせたのはそれだけではなかった。


 くじ引きに並んでいる最中に気付いたのだが、今回出場する選手の中には他の格ゲーで有名な人がいたり、プロゲーマーとして有名な人がいたりと、本当に強敵ぞろいだった。


「おう、史人。どうだ、俺のコネをフルに活用してとっておきの選手を集めておいたぞ」


 とそんな僕の気持ちを知ってか知らずか、どこからか現れたケン兄が話しかけてきた。とたんに周囲が騒めき始める。ケン兄は格闘ゲーム界ではレジェンドだし、めっきり顔を出すこともなくなってしまったから、注目度は段違いだ。


「ケン兄、気合入れすぎだよ……」


「はっはっは、お前が俺を驚かせてくれるっていうもんだから、俺もお前を驚かせてやろうと思ってな」


「驚きすぎて心臓止まるかと思ったよ……」


「こんにちは、蒼梅(あおうめ)さん。わたしってここにいていいのかしら?」


「おう、こんにちは真白さん。もちろん大丈夫さ。それに、JOKERmk2かなりいじってきたね。あれを史人が使うとどんな動きになるのか、楽しみだよ」


「有難うございます。先輩、ほらいつまでもいじけてないで、絶対優勝しますくらい言わないと」


「えぇ……」


 それはなんとも厳しい注文だ。でも、それくらいの気持ちでいかないとな。気持ちで負けてちゃ、勝てるものも勝てなくなるし。


「ケン兄、鈴羽に伝えといて……必ず決勝で会おうって」


「分かった、伝えとくよ」


 そう言ってケン兄は去っていった。さて、そろそろ一回戦の準備をしないとな。


「一回戦の相手は……Fumyさんってどっかで……あっ!」


 そこで思い至る。


 Fumy氏は確かケン兄がここで防衛戦を行った時に戦った相手だ。ケン兄の奇跡の逆転劇の影に隠れてはいるが、何年も格闘ゲーム界のトップ層に居続ける実力者だ。


 これは初戦から先が思いやられる……けど、相手にとって不足はない。



『さあ、始まりました第一回UF杯、実況はわたくし、実況ちゃん1号がお送り致します!!』


 場内に実況の声が響き渡り、大会が開幕する。開幕戦は鈴羽が人気ゲーム配信者との対戦を行う。鈴羽が使うキャラは、相変わらずマリアのままだった。そして、たぶんだけど戦闘スタイルも変わっていないだろう。


 試合が始めると、相手も鈴羽の戦い方が分かっているのか自分からは攻めず、隙をうかがうような戦法と取っていた。しかし鈴羽は相手が攻めてこないとみると、自分から攻めに入り圧倒的速度で相手を打ち崩していった。


 そう、鈴羽は防御スタイルに徹してはいるが決して自分から攻めない訳ではない。それに僕も戦った時に思ったが、鈴羽はやはり自分から攻めた方が強い。しかし実際に対戦していない人は防御こそが鈴羽(Kurobane)の強さの本質だと錯覚してしまう。


 そして大会のような短期決戦では気付いた時にはもう遅い。貴重な一ラウンドを落とし、そして建て直すこともできず二ラウンド目もズルズルといってしまう。


「勝負あったな、これは」


 あっという間に勝敗は決した。Fumy氏みたいな昔からの実力者ならともかく、最近になって人気が出たゲーム配信者では荷が重かったようだ。


『決着ー! さすが無敗のKurobane、相手にミリも削らせることなく二回戦進出です!』


 実況の声と共に、会場は大きな歓声に包まれた。

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