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Unlimited Fight  作者: マコト
31/38

一回戦

『さあ、次は一回戦最後の試合です! 何とこのカード、聞くところによると二人ともLimiCu社長、蒼梅氏と縁のある人物ということですが、真偽のほどはどうでしょう、解説の蒼梅さん』


「いやいや、わかってるじゃないですか。……まあ、そうですね。Fumy氏とは数年来の格ゲー仲間、Humito選手は昔の教え子。どっちも強いですよ、俺が保証しましょう」


『おおぉーーと、まさかのお墨付き! これは楽しみですねぇ』


 ステージ上では実況とケン兄が対戦間のつなぎとして話を盛り上げていた。


「ケン兄……ハードル上げてくれるなぁ」


「ふふっ、あれが先輩への蒼梅さんなりの激励なのかもしれないね」


「きっついなー。ただでさえ相手が相手なのに……」


『ところでHumito氏と言えば今大会にも出場している無敗の公式プレイヤー、Kurobaneから一ラウンド取っていることも話題になりました。それも含めて期待ですねー』


 あぁ、実況の人がグングンハードル上げてくる。マジ勘弁してほしい。


 ま、いつまでも愚痴ってても仕方ないし、


「行くか!」


「頑張って、先輩!」


『さて、そろそろ次の試合の準備が出来たようです。それでは改めてご紹介しましょう! レジェンドの愛弟子、Kurobaneから一ラウンドとった超新星、Humito氏の登場です!』


 実況の声に合わせてステージ上に上る。昔は下から憧れと共に見ていた舞台に、今立っている。大勢のギャラリーから声援を受け、心臓がうるさいくらいに鳴り始めた。


 そして対面には対戦相手であるFumy氏が姿を表した。こういう舞台は慣れているのか、声援に応えるようにステージ上から手を振っている。そして、


「よろしく頼む。あいつの弟子と戦えるなんて光栄だよ」


 そういって手を差し出してきた。僕もそれに応え、握手をする。


「こちらこそ、昔ステージ上で見た方と対戦できるなんて夢にも思いませんでした」


「はは、あの時の戦い見られてたのか、恥ずかしいな」


「すごく強い人だってのは嫌と言うほど分かってます。でも、失礼ですがこれだけは言わせてください」


「何かな?」


「僕も簡単には負けるつもりはありません」


「いいね、俺も全力でいかせてもらう」


 ニヤリと笑ってFumy氏は台についた。僕も続けて台に座る。


『さて、お互い準備も出来たようですしそろそろ行きましょう! いきますよ。レディ……』


 『Fight!!』と画面に表示されたとたんに弾かれたように動き出す。相手、Fumy氏の使うキャラはヘインズワーズという魔女のキャラだ。広域に魔法を展開し、遠隔攻撃で相手を攻撃してくるというスタイルになってくる。つまり、魔法を発動されるとこちらとしては確実にきつくなってしまうのだ。


 魔法発動前に詠唱をつぶそうと一気に距離を詰める。しかし、


「っ!?」


 Fumy氏は魔法を展開することなく、こちらの動きに合わせるように蹴りを放ち、逆にこちらの攻撃がつぶされてしまう。読まれていたのだ。僕が最初に詠唱をつぶそうとすることが。


 そしてこちらが怯んでいる間に、十分な時間をもって魔法の詠唱を始められる。


「くっ!」


 慌てて詠唱をつぶそうと攻撃を放つが、ヒットするも詠唱をつぶすことは叶わなかった。


 完全にやられた。一撃喰らいながらも魔法を展開してくるだろうということは分かっていたが、まさか試合開始直後ではなく、こちらにカウンターを当ててから展開を考えていたなんて完全に読み負けた。ベテランの格ゲーマー相手に、少し安直な考えで動き過ぎた。


 展開された魔法が一気にJOKERmk2を襲い、体力の8割が持っていかれる。さらに残りの体力を削りきろうと一気に距離を詰めてくるFumy氏。


 まずい、一ラウンド取られると一気に流れが悪くなる可能性がある。だが今は完全に劣勢。どうすればこのラウンド取ることが頭の中で計算を始める。


 相手は攻めてきている。恐らくフィニッシュは物理攻撃。初手に魔法を展開せず、あえて物理でこちらの攻撃をつぶしてきたのだから、恐らくFumy氏は魔法だけに頼った戦い方はしないはず。


 そして今JOKERは魔法攻撃を受けのけ反っている。相手の攻撃に間に合いはしても、最低限の防御行動しか出来ないだろう。だとすると、僕が取れる最善の行動は――。


 賭けにはなるが、この行動しかない!


「なっ!」


 Fumy氏から驚きの声が漏れる。そして次の瞬間、K.O.!の文字が画面に表示される。


『おぉーーと、これはどうしたことか!? 圧倒的有利に見えていたFumy氏のヘインズワーズが一気にノックアウト! これは……『反射』ですか、解説の蒼梅さん』


「そうですね。大会前に提出された資料によりますと、JOKERの特性は『鋼鉄の乙女』となっています」


『しかし、ヘインズワーズの体力は7割ほど残っていましたが、反射だけで削れるものでしょうか?』


「それはJOKERの火力とFumy氏の腕に起因しますね」


『と、言いますと?』


「反射のダメージは攻撃した方の火力のほかに、攻撃を受けた側の火力も影響します。JOKERの攻撃力は極端に高く設定されていました。だから反射のダメージがかなり高くなってしまった。これが理由の一つ」


『ほうほう、そしてFumuy氏の腕には何の原因が』


「Fumy氏はみなさんご存じベテランプレイヤーです。ですからフィニッシュまでの道筋が完全に見えていた。だから、そこまで入力してしまっていた」


『つまりフィニッシュブローまでの先行入力してしまったということですね。反射は警戒していなかったのでしょうか?』


「可能性は考えたでしょうが、警戒はしなかったでしょう。何故ならあの場面から相手の攻撃を全てジャストガードすることは至難の業だからです」


『……何やら数年前にわたくし、同じ場面を見たようなきがするのですが……』


「僕とFumy氏が戦った時も似たようなことがありましたね」


 そう、数年前ケン兄がやったことを、そのまま再現したのだ。


 ただ、これは完全に賭けだった。あの状況からフィニッシュまで持っていけるコンボは複数ある。その中から一番使用してくる可能性の高いコンボに合わせてガードをいれたんだけど、それがたまたま上手いことはまっただけだ。


 ただ、これはいわば運が良かっただけ。二回目は通用しないだろう。ここから何とかして、あと1ラウンド取らなければならない。


『それでは解説も終わったところで第二ラウンド行きましょうか! 準備はいいかい? レディ……ファイト!』

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