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Unlimited Fight  作者: マコト
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生じたズレ

 そして週が明け月曜日。


「先輩先輩、審査通ったよ!」


「マジか! よし、じゃあ今日から実機で動作テストできるな!」


 放課後、部室で真白(ましろ)から報告を受け、さっそく全員でゲーセンまで足を伸ばした。空いている台に座りさっそくJOKERmk2を登録してオンライン対戦に潜る。


「さて、お披露目だな、JOKERmk2!」


 実機で使うのは初めてだが、調整の段階からずっと見てきた。だからある程度は上手く扱える、そんな自信があった。しかし――


「ん?」


 実際に戦ってみると、自分の操作とキャラの動きにほんのわずかだがズレが生じていることに気付く。今のところ勝ててはいるが、前のJOKERを使っているような最初から馴染む感覚が無かった。


 それでも使い慣れていないだけで、戦っているうちにフィットしてくると思い対戦数を重ねていく。しかし、戦うにつれて違和感は大きくなっていき、負けの数も込んできた。


 後ろで見ているみんなも異変に気付いたのか、どこか気まずい雰囲気が流れる。特に真白はキャラを制作したこともあって、不安そうだった。


「先輩……ひょっとして、使いにくい?」


「いや、そんなことは……」


 ないはずだ。だってこれは真白が僕の希望に合わせて苦心しながらもステータス調整してくれたキャラなのだ。今勝てないのも、きっと僕の腕がキャラの性能に追いついていないだけ。だから僕が腕をあげれば自然とキャラに馴染んでくるはずだ。


 そう思い何度も何度も対戦を繰り返すが、無情にも勝率は上がるどころかむしろ下がっていった。


「先輩、もういいよ……。これはわたしのキャラが悪いんだよ」


「そんなことないって!」


 思わず強い語気で言ってしまう。しまったと思ったけど、ここで否定しないと真白が悪くないのに気に病んでしまう。だから必死に勝とうとするが、そこからさらにドツボにはなってしまう。


「……ごめん、今日はちょっと調子悪いみたいだ」


 結局僕はそう言うしかなかった。


「ま、そう言う日もあるだろう。気にすることねぇって、真白ちゃんもな」


 修治(しゅうじ)が気をきかせて僕と真白の肩をポンと叩いた。


「兄さんも楽しみにしていた真白さんのキャラが使えるからってちょっと緊張しすぎだよ? そんなに真白さんに良いとこ見せたかったの?」


 瑠璃(るり)も修治の意図を汲んで場を和ませるように冗談を言ってくれる。仲間たちのそんな気遣いが、どうしようもなく有り難かった。ただ、やっぱり真白は気にしているようだった。


「ごめんね、先輩。まだ大会までステータスいじれるから、もし使いにくかったら言ってね」


「大丈夫だよ、真白。二人であれだけ調整したろ? ほんとに僕の調子が悪かっただけなんだ。気にすることないって」


「うん……」


 結局その日はそのまま修治に台を譲り、見えてこない違和感の正体を探し続けていた。



「はぁ……」


 帰ってきてからPCをつけ、キャラ作成ツールを起動する。そして真白のユーザーページからシリアルキラーmk2をダウンロードして、もう一度自分で動かしてみる。


 基本動作からコンボ、技、受け身等考えられる動作を一通り確認する。しかし違和感はない。


 だけど、オンラインで対人戦を行っている時は確かに感じた。フレーム数にしてほんの僅かだが、接戦の勝敗を分けるには十分な差が。


「くそっ、一体何が悪いんだ……」


 対人とCPU操作がまったくの別物なのはもちろん理解している。しかし、これほど正体のつかめない気持ち悪いズレは初めてだった。


「やっぱり、勝ちにこだわるのに攻撃型はむかないのか……?」


 鈴羽から言われた言葉を思い出す。


「いやいや……」


 ダメだ、思考がダメな方向にシフトしかけている。こういう時は気分をリフレッシュした方が良い。僕はJOKERmk2からJOKERに使用キャラを変更し動かし始める。


 違和感はない。まるで自分の手足のように自然に動かせる。


「違い……違い……」


 動かす、ひたすらに動かし続ける。何も考えず手が動くままに動かしてmk2との違いを探す。そうしていると、ピコンとスマホにメッセージが届く。真白からだった。


『先輩、今日はごめんなさい』


『どうしたんだ、急に?』


『やっぱりわたしのキャラがダメだと思うの』


『……ごめん、正直僕も良く分からないんだ。ただ、一つ言えるのは真白が間違ったわけじゃないよ』


『……え?』


『だってあのキャラは僕と一緒に作っただろ? 僕がして欲しい値に真白が調整してくれたわけだ。だからそもそもの原因は僕にある。JOKERでバランスが完成していたのに、僕がバランスを崩してしまったのかもしれない』


『そんな……』


『あとこれは僕のプレイヤーとしてのカンなんだけど、プレイしている僕にもやっぱりダメなところがあると思うんだ』


『カン?』


『そう。さっきちょっと考えてたんだけど、やっぱり鈴羽に言われたことを自分でも少し気にしてるのかもしれない』


『攻撃型が、試合に勝つことにはむかないってやつ?』


『そう、それを聞いてから自分の中で無意識に迷いが出てるんじゃないかって思ったんだ』


『……先輩、今からでも防御型作ろうか?』


『いや、そういうことが言いたかったんじゃないんだ。僕は真白と真白の作るキャラを信頼してる。それは最初にJOKERを触った時から一度たりとも揺るいだことはない』


『ありがとう、先輩』


『だから僕は自分の中の迷いを断ち切って見せる。だから真白、図々しいお願いだけど、僕が迷いを断ち切れたら改めて僕のプレイを見て、真白が一番僕に合うと思うキャラを作ってくれないか?』


『ふふ、何かプロポーズみたいだね、先輩』


『……ある意味、間違ってないかもね』


『うん、分かった。もう一度mk2に改良を加える。どうせモーションもいじるつもりだったしね。だから先輩、迷いを振り切って! それで、一緒に最高のキャラを作ろう!』


『おう!』


 それから少し雑談をして、真白とのメッセージのやり取りを終える。


 約束したんだ。だから、僕はこの迷いを最優先で振り切らないといけない。その迷いを振り切る為にまずは、


「やれることを、やるしかない」


 メールボックスを開いて、この前もらった名刺のアドレスにメールを送る。ある意味反則だけど、今は迷ってられるが無いんだ。打てる手を全て打って、全力で大会に臨む!

ブックマークしてくれた方、有難うございました!

あと、おかげさまで1000PV行きました! 有難うございます!


そして地の文が……もはや何も言うまい、とりあえず作品の完成を目指します。

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