新キャラ完成!
「……よし、完成!」
「「「おおおぉぉぉーー」」」
真白の声に全員が感嘆の声を上げる。ついに、ついに念願の新キャラ『JOKERmk2』が完成したのだ。ちなみに他の名前候補には『JOKERリターンズ』だの『かえってきたJOKER』などがあったが、なんとなく今の形になった。
「お疲れ、真白。じゃあ、さっそく審査に出しておくよ」
「ん、お願いね先輩」
ツールから真白の作った新キャラを審査フォームにアップロードする。作っている途中で何度も見せてもらったけどバランスも適正で、きっと審査を通ってくれると思う。
「じゃあ、さっそく先輩とどこに行くか決めないとね」
いつの間にか真白は鞄から観光雑誌を取り出し、うきうきといった感じで出かける場所を探し始めていた。
「それなんだけど、本当に僕と出かけるだけでいいのか、真白?」
「もちろん! それを目当てに頑張ってきたんだから!」
臆面もなくいってのける真白に、何だかこっちが恥ずかしくなってきてしまう。
「おいおい、モテる男は辛いなぁ、史人よ」
「いや、真白の場合はきっとそんな甘酸っぱいもんじゃないと思うけど……多分」
違うよな? 普通にでかけるのが嬉しいってことだよな?
「兄さん、ほら。ちゃんと真白さんと一緒にどこ行くか考えなくちゃ」
瑠璃にも言われ、仕方なく観光雑誌をのぞき込む。
「どっか行きたいとこ決まってるのか、真白?」
「うーん、色々あって悩んでるんだけど、どこがいいかなぁ?」
「なにかしたいこととか?」
「あ、映画はみたいかも」
「映画か……せっかくだから新宿まで行くか? バルト9とかあるし」
「新宿! そうね、この前はLimiCuとカフェにしか行かなかったし」
「あとは何か食べたいものとか……」
「あ、パンケーキ! パンケーキ食べてみたい!」
映画にパンケーキね。普段は格ゲーのことしか話さないけど、こうしてみると真白も普通の女の子だな。
「あ、兄さん。新宿駅にパンケーキ屋さんあるよ? おいしいとこ」
「じゃあちょうどいいな……って、瑠璃なんで知ってるんだ?」
「え、この前友達と食べに行ったから」
「……男?」
「もう、女の子だよ」
呆れたような瑠璃の答えにどこかほっとしつつも、おでかけコースを頭の中で組み立てていく。昼に待ち合わせしてパンケーキ食べて映画を見てから解散……まあ、そんな感じか。
「じゃあとりあえず出かけるのは週末に回すとして、今日は普通にみんなで打ち上げにでもいかないか?」
「お、賛成!!」
修治がいの一番に手を挙げる。
「うん、いいんじゃないかな」
「え、ほんと、いいの!?」
と瑠璃と真白も続く。真白はやはりみんなとどこかで出かけること自体が楽しいみたいだった。
「とは言っても今からみんなで集まれるとこなんてウチかマックくらいしかないけどな」
「別にいいじゃん、それでも。学生なんだし高いとこいく必要もねぇ」
「どうする兄さん? ウチにする?」
「そうだなぁ……真白はどっちがいい?」
「先輩の家も捨てがたいけど、マックも一回行ってみたい気が……」
「よし、じゃあマックにするか」
どこか遠慮がちな真白だったが、あの様子だとマックにも行ったことがないのかもしれない。反対の意見ももちろん出ず、僕たちはそのままマックに向かうことにした。
※
「おっと、これはちょい予想外……」
修治がマックの混み具合を見て少し渋い声を上げる。さすがに時間帯もあるのか中は混雑していた。そして何よりも困ったのが、テーブル席が全滅という事態だった。
僕たちは別にカウンター席でも全然かまわないんだけど、真白は車いすがあるからテーブル席じゃないと厳しいのである。うーん、どうしたもんか。
「お、そうだ。真白、ちょっとごめん」
「え……先輩……? ひゃわぁっ!」
素っ頓狂な声を上げる真白をよそに、真白の体をひょいと持ち上げる。うん、予想通りすごく軽い。そのまま慎重に真白の体をカウンター席に下し、息を吐く。
「真白ちょっと軽すぎない? ちゃんと食べてる?」
「なな、なななななな……」
何故か狼狽している真白。あ、いきなり持ち上げたのはまずかったかもしれない。
「ごめん、先に持ち上げていいか聞くべきだった」
「そ、そそそうよ! 先輩いきなりすぎ!」
「そうだよ兄さん! 昔からそういうとこデリカシーがないんだから」
良かれと思ってやったのだが、女性陣からはかなり不評だった。修治はニヤニヤとした視線でこちらを見ているし、失敗したかなぁ……。
「……もっとダイエットしとけばよかったかも」
「ん、何か言った真白?」
「なな、なんでもない!」
やっぱり怒らせちゃったかなぁ。なんか瑠璃にも白い目で見られてるし、今度はもっと気を付けて行動しよう。まあとりあえず席の問題は解決できたので、改めて……
「新キャラ完成を祝して」
「「「かんぱーい!」」」
ささやかながらマックの片隅でみんなで祝杯をあげる。真白を見ると機嫌を直してくれたのか、シェイクをちゅうちゅうと嬉しそうに吸っていた。最初はヤマ先から押し付けられる形になったけど、この出会いは僕にとって本当にかけがえのないものになった。
「ん、どうしたの先輩?」
「いや、なんでも」
だから今度の大会は真白の為にも、出来るだけ勝ち残ろうと心に決めた。




