そうだ、部活を作ろう
「部活を作りたい?」
週が明けて月曜の朝。早めに登校した僕はそのまま職員室に向かい、ヤマ先にあるお願いをしに来た。
「どうした、急にまた?」
「先週真白とゲーセンに行ったんですけど、やっぱり学校内でも活動できる場があった方が真白にとっては良いかなと思いまして」
「話は分かるがな。ただ、真白がやってたのってゲームだろ? それを通すのはやっぱり厳しいぞ」
やはりというか学校でゲームを扱う部活を作ることに難色を示すヤマ先。だけどそう言われることは想像がついていたので、僕はあらかじめ用意してあった言葉を告げる。
「ヤマ先、『e-Sports』って知ってます?」
「おい……知ってはいるが、まさか……」
「はい、そのまさかです」
e-Sportsという言葉の競技性を前面にだして、何とか部活として認めてもらうことは出来ないだろうかというのが僕の考えだった。が、やはりヤマ先の表情が渋いままだった。
「いや、確かに世間的な認知度は上がってきてるけどなぁ……」
「そこをヤマ先の巧みな話術でなんとかして欲しいんですけど、無理そうですか?」
「うーーん」
唸りつつも椅子をくるくると回転させながら悩むヤマ先。かなり無理なお願いであることは理解している。ただ先週ゲーセンで見せた真白の笑顔の為に何とか通したいところではある、
「ゲームが無理ならツールだけでも、何とかなりませんか?」
「ツール?」
「真白がやっているのは厳密にはゲームでじゃなくて、ゲーム内で使用するキャラの制作なんです」
「それは初耳だな」
「つまりe-Sportsへの理解を深める為に部活でキャラを制作して、それ以外の活動は校外で行うみたいな」
「……それなら、なんとかなるかもしれん」
「本当ですか!?」
「ただし! あくまで俺がしてやれるのは手伝いだけだ。その他の部員数とかは自分たちで集めるんだぞ」
「ありがとうございます!」
まだ出来るかはわからないけど、これで一歩前進した。部員はまだ打診してみないとわからないけど、アテはないこともない。
「じゃあ、これが部活作るための規約書いたプリントだ。それを埋めることが出来たらもう一回もってこい」
「はい、有難うございます! で、もう一つお願いがあるんですが……」
僕がそう言うと、ヤマ先はもう何か全てを察したというようなあきらめの表情になった。
「……はぁ。顧問は見つからなかったら最悪俺がなってやるよ」
「有難うございます!」
「……なんか俺たきつけ方まちがったかなぁ」
疲れたようにため息を吐くヤマ先には悪いけど、最高の結果が得られた。ここまでやってもらったんだ。絶対に形にしてみせる。
※
「という話をしてきたんだけど、どうかな?」
昼休み、再び1-Bの教室を訪ねて、真白に今朝ヤマ先と話したことを伝える。
「え、本当に!?」
「あぁ。さすがにゲーム自体は無理だろうけど、ツールで動かすだけなら何とかなるかもって」
「先輩すごい! わたし、部活にするとか考えもつかなかった」
「今朝は珍しく早く出ていったと思ったら、そんなことしてたんですね。兄さん」
僕の話を聞いた真白と瑠璃から、驚きの声がもれる。もしダメだったらがっかりさせると思って内緒にしてたんだけど、どうやらこの案を気に入ってはくれたようだ。
「で、問題になってくるのは部員数なんだけど」
「えーと、『部活動には最低四人の部員が必要となります』……て書いてあるわ」
「そう。で、ものは相談なんだけど」
ちらりと瑠璃の方に視線を向ける。すると瑠璃は僕の意図を読んだかのように頷き、
「うん、私は大丈夫だよ。特別入りたい部活とかもないし、どうせ兄さんも部活で帰ってこないなら、家で一人でいるのも退屈だもん」
「う……その点については、大変申し訳ない」
「ふふ、気にしてないよ。それに兄さんのことだから、私を家に一人で置いておくのは心配だから、どうせなら一緒にって考えたんだよね」
もはや何もかも読まれていた。うちの妹が慧眼すぎてやばい。
「でも、わたしを入れてもあと一人必要だよ?」
「もう一人は、いちおう修治に頼んでみようかと思ってる」
「あぁ、黄瀬さんならOKしてくれるかもね」
「黄瀬さんって?」
そう言えば真白はまだ修治のことを知らなかったな。もしかしたら今度一緒にゲーセンにでも連れていったら喜ぶかもしれない。主に修治が。
「僕のクラスメイトに黄瀬 修治ってのがいるんだ。結構色んなゲームやってて、UFは僕より先に始めてる。もし真白が大丈夫そうなら、修治にも声をかけようと思うんだけど」
「うん、わたしは全然大丈夫。その人にも会ってみたいし」
「じゃあ修治にも了解が取れたら、一度顔合わせの場を作ってみるよ」
「うん、お願いします。先輩」
「お願いされました」
後は修治の返事次第だけど、さてどうなることやら。




