ラウンド2
『Fight!』
第二ラウンド開始直後、バックステップで距離をとる。追撃はほとんど警戒しない。何故なら先ほどのラウンドでマリアはほとんど自分から攻めてくることがなかったからだ。
もちろん最後まで攻撃しなかったら引き分けになるので序盤のみだとは思うが、基本的に相手の攻撃に合わせてカウンターで沈めるというのがマリアを操るKurobaneの基本戦法なのだろう。
そして先ほどのラウンドで気付いたことだが、マリアは攻撃の範囲や始動までのフレーム数がJOKERの素体である歩夢にないもの――つまり、真白がキャラを改変する際に新たに作った技に対して、反応がほんのわずかに遅れるということだ。
真白のキャラはツールにアップされてはいたものの、ゲームに登録されたのは今さっき。いくら公式プレイヤーといえど、ゲームに登録されていないオリジナルキャラの性能までは頭に入っていなかったようだ。
驚くべきは、そんな初見ともいえる技に対して誤差の範囲でしか遅れを出さないKurobaneの対応力だ。フレーム数にしても僅か――単発で技を放った際に遅れの影響はほぼないといえるだろう。
ただ、その遅れる僅か数フレームを積み重ねていけば、技の一発分くらい遅らせることができるはずだ。そしてJOKERの火力、マリアの被ダメージ増の特性を加味すると、一発で相手をK.O.できる技が一つだけある。
それは僕がカッコイイと思い、真白が苦心して作ったという超必殺技『落葉』だ。
あれを当てさえすれば、恐らく一撃でマリアを仕留めることが出来る。ゲージは溜まっている。全部消費することになるが、今は目のラウンドを取ることだけを考える。
「よし」
方針を決めると、僕は最終的に『落葉』の始動フレーム分稼げるように、技と技を組み合わせて攻めていく。それに対し、マリアも1ラウンドで見せた驚異の反応で対処していく。
だが予想通り僅かな遅れが積み重なっていき、このまま超必殺技まで無事につなげることが出来る。
そう思っていた。しかし――
「っ!?」
あと少しというところで、突然マリアの動きが修正されたのだ。
――気付かれた!?
Kurobaneは僕の思惑に気付いたのか、今までのカウンター戦法から攻勢に転じてきたのだ。
そしてさらに僕を驚かせたのが、マリアはカウンターを狙わなくても強い……いや、カウンターを使わない方がむしろ強いという事実だった。スタイルを攻撃型に変化させた訳ではない。あくまで防御型のまま、恐るべき技量でこちらに猛攻をしかけてくる。
「……ん?」
が、しばらくマリアの攻撃を避けていると僕は妙な感覚に囚われた。この後、ひょっとして向こうは跳ぶのではないかと。そして、その違和感の正体を確かめるべく、コマンドを入力して対空技を撃ってみる。するとマリアは予想通り飛びあがったが、虚を突かれたように必殺ゲージを消費して回避行動を取った。
外した。だけど相手がわざわざ必殺ゲージを消費してまで回避行動を取ったということは、普通では避けられなかったということだ。だったらゲージがない今の状態で超必殺技を撃ったら当てられるのではないか?
そう判断するや否や、即座にコマンドを入力していた。もはやゲーマーのカンと言っていいのかもしれない。今撃てばあたるかもしれないと、直感がそう告げていた。そして、
『K.O.』
「当たった!」
「おぉ!」
真白とキャラT兄さんの驚いたような声が後ろから聞こえた。そして、僕はようやく技が相手にヒットしたことを実感した。
まさか本当に当てられるとは思わなかった。だが当初の目論見通り技がヒットし、一撃でマリアを沈めることに成功したのだ。
いける、3ラウンド目は『殺人鬼の目覚め』が発動しステータスが大幅に強化される。この感覚を頼りにいけば、もしかしたら3ラウンド目も取れるかもしれない。そう、強く思った。
すごくフラグくさい引きだが、どうなる次回。




