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Unlimited Fight  作者: マコト
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強敵

『Kurobane』


対戦相手の名前はそう書かれていた。すると、その名前を見たキャラT兄さんが驚いたような顔をした。


「おっとKurobaneか……これはすごいのを引いたな」


「有名なんですか?」


「公式プレイヤーの戦績はLimiCu(リミカ)の公式サイトでも見れるんだが、Kurobaneは唯一無敗なんだよ」


「それってやっぱりすごい……のよね?」


 真白(ましろ)も無敗という言葉を聞いて、どこか不安そうにキャラT兄さんに確認する。


「まあな。リリースしてから半年経ってるんだ。ユーザーもかなり慣れてきてるし、いくら公式プレイヤーでも無敗を貫くなんていうのは異常だ」


 つまり、僕はとてつもなく強いプレイヤーに当たってしまったみたいだ。でも、


『運が良かったな。大凶にあたるなんて、選ばれた人間の証だよ』


 とある格ゲーキャラが言っていたセリフだ。つまり、僕は運が良い。こんなにも強い相手と戦えるのだから。


「お、やる気だな、少年。じゃあそんな少年に一つヒントを与えよう」


 そういってキャラT兄さんは自分がプレイしていた筐体を指さす。そこにはキャラ選択画面が表示されており、選択されていたキャラは……。


「マリア?」

「そう、Kurobaneはマリア使いだ。しかも、防御スタイルのみ使用してくる」


 マリア――UFにおけるヒロインであり、全キャラがチュートリアルで戦う相手でもある。そしてネタバレになってしまうが、ストーリーモード歩夢編のラスボスだ。


 マリアはUFのキャラで唯一、戦闘中に戦うスタイルを真反対に変えることが出来る。攻撃型と防御型、おそらくラスボス特権なのだろう。さらに特性である『鋼鉄の乙女(アイアンメイデン)』もスタイルによって効果が変わってくる。


 攻撃型の時は自分の体力を削ることで攻撃力を上げ、防御型の時は被弾時のダメージが2倍になる代わりに、相手からの攻撃をジャストガードするとダメージを相手にそのままはじき返すことが出来るのだ。ただこれは非常にリスキーなものであり、使い手は少ないと思っていた。


「防御型しかつかってこないってことは、それだけジャストガードに自信があるってことですかね?」


「そうだろうな。俺も動画でしか見たことないけど、マジでAIみたいな反射をしてくる。しかも相手が見えないから、本当にAIで動かしてるんじゃないかってもっぱらのうわさだ」


 なるほど、これは想像以上に手ごわい相手だ。だけど相手がどんなキャラにしろ、僕の使うキャラは変わらない。


「お、少年は歩夢(あゆむ)改変のオリジナルキャラか……初めて見るやつだな」


「わたしが作ったのよ! 今日登録したの」


 真白の答えにキャラT兄さんは「ほぅ」と唸る。そう、大事なのは僕がこのキャラを使ってどこまで戦えるかだ。攻撃とスピードに特化したJOKERの戦闘スタイルは僕の戦い方と抜群に相性が良いはずだ。逆に相手はガチガチの防御型だから、いかに攻め崩すかと言う戦いになってくる。


『READY』


 息を呑む。戦い方は昔と変わらない。初めて、しかも格上の相手と戦う時は、


『Fight!』


 自分が一番強いと思う攻め方で、それが通用するか見る!


 試合開始と共に飛び道具であるナイフを投げつける。するとマリアはその目元以外を完全に覆い隠した装甲を動かし弾く。噂通りの反応速度だ。確認の代償として反射ダメージを受けるが飛び道具攻撃なのでダウンはせず、少しのけ反る。減ったら体力ゲージは一割ほど。自分自身の火力も高めなので、反射がやや痛い。


 だけど追撃はなかった。だったら――


「早いな」


「そりゃそうよ、ギリギリまで粘って調整したんだから」


 後ろからキャラT兄さんと真白のつぶやきが聞こえる。だが、いまそれに反応してる余裕はない。とぶ、跳ぶ、飛ぶ。ステージ内を縦横無尽に動き回り、相手が反応できないタイミングを探す。

 

 だがしかし、


「……動かない?」


 マリアは動きを止め、じっと構えているだけだ。その姿は一見隙だらけに見えたが、懐に飛び込もうとするとそれを読んだかのように反応する。直前で進路を変え、再びかく乱してからの攻撃を試みるが、やはり飛び込もうとするところで反応されてしまう。


 読まれている、こちらの動きを、完全に。焦る。このままではジリ貧だ。どうする?


 らしくない。そうだ、例え相手が格上であったとしても、こちらがペースを崩すと相手の思うつぼだ。攻める。反射ダメージはこの際許容しよう。たとえラウンドを落としてでも動きを見切る!


「お、おいおい!」


「えっ、先輩!?」


 突如マリアに対して正面から攻撃をしかけた僕の行動に、真白もキャラT兄さんも驚きの声を上げる。当たり前だ。傍からみれば自滅しているようにしか見えない。しかし、これが僕の戦い方。僕のスタイル。


 弱中強パンチ、キック、スラッシュ、投げ、必殺、できれば超必殺も含めて全ての対応力を見たかった。だが、さすがに全部試してまともに反射を受けていれば体力がもたない。つまり何発かは当てずにワザと空振りして、おおまかな反応速度を測るしかない。


 使用頻度の高い攻撃は実際に当てて、低いものは空振りで様子を見る。攻撃の始動、相手の防御または回避、そして回線の遅延も含めフレーム単位で計算する。だが、計算すればするほど相手のマリアに隙が無いことがわかってくる。誘いを含めても、ほぼ的確にこちらの行動に対応してくる。


『K.O.』


 体力が底をつき、1ラウンド取られてしまう。だけど、試したい行動はおおかた試せた。そして気づいたことがある。


『ROUND 2 READY』


 それが通用するかは分からない。だけど持てる全ての力をもって、次のラウンドを取りに行く。

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