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ねこのレーニン  作者: るびー
1章 第二常備軍始動
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びりびり石

 発電機。


 要するに電気を作る装置だが、その構成方法は一通りではない。地球人類の消費する電力の大部分を供給しているのは、電磁誘導を用いて力学的エネルギーを変換する装置だが、十分な出力さえ得られるなら、光電効果や熱電効果を利用しても良いのである。化学エネルギーの利用も妙案である。果たしてそれを発電機と呼ぶかはともかく、手堅い解法であることは間違いない。


 そして、聡明なる同居人は更なる可能性を見つけた。魔力の電力への変換である。


「記録をみる限り、この『びりびり石』には魔法的反応によって帯電する性質があるようです。詳しい理屈はわかりませんが、これを接地して、間に電子機器を配置すれば、動くのではないでしょうか」


 同居人が魔術で投影する概念図には、金属製の枠に保持された結晶体から発せられる電気が、安定化装置を通って地面に抜けていく様子が示されている。割といい加減なつくりである。


 電源となる『びりびり石』というのは、魔法的な性質を持つ魔石の中でも、魔力に反応して特定の物理現象を引き起こす、いわゆる現象石と呼ばれるものである。名前の通り、触るとびりびりする。稀に感電死するほど帯電することもあり、危険物として一般には忌避されている魔石でもある。名前がいい加減なのも、そういう扱いが理由らしい。


 『びりびり石』を駆動させる魔力の供給は、この世界の魔法理論を信じる限り、あまり考える必要のない問題である。魔力なるものは、密度の濃淡はあれども、基本的には自然に遍在しているものらしい。即ち、『びりびり石』は大自然の魔力を食い潰しながら常時駆動しているわけである。賢明な三毛猫は、エネルギー保存則の観点から無尽蔵の魔力を供給する何かの存在に思いを巡らせずにはいられないが、少なくともこの世界の魔法理論は、魔力総量の変動に関して特に有益な示唆は行っていない。


「要するに、あの危ない石を使えば『はつでんき』っていうのが作れるわけだね」

「その通りです。エリオ、『塔』でこの種の結晶を扱うところに心当たりはありますか?」

「うーん、魔石というとカーライン先生かな。変な石を色々集めてるから、たぶん持ってると思う」

「よろしい。では徴発に向かうとしましょう」


 同居人は意気揚々と出立する。エリオも慌てて同居人に続いた。勿論、面白そうなのでレーニンも続く。


 目的地は『塔』の外れにある魔法工芸研究棟、王立工房との境界領域である。設立準備室のあるC研究棟からは結構な距離があるので、ちょっとした遠征の感すら漂う。


「しかし、もう少し片付けを覚えてもいいのではないでしょうか」

「まあ、通るには困らないから、大目に見てもいいんじゃないかな」


 元々採光など度外視して無秩序な増築を繰り返した『塔』の付属施設群だが、委細構わず廊下にまで荷物を積み上げるものだから、通路はひどく狭く、薄暗い。お化けが出そうというわけではないが、より現実的な脅威であるガラクタの崩落がありそうで怖い景色でもある。


「魔法工芸の先生達は色々な材料を使うから、すぐこうやって積み上がっちゃうんだ」


 エリオの語るところによれば、魔術師といっても、必ずしも魔術の修練ばかりしているというわけではないらしい。反復練習によって魔力が増大するわけではないため、操作対象である自然への造詣を深め、利用を効率化することに重きを置かれているのだという。魔術による材料加工や、器具への魔術的機能の埋め込みを任務とする魔術工芸は、ある意味でその極致といえる。


「どんな高度な魔術でも、人の役に立たなければ意味はない。魔術そのものは限られた人の力だけど、道具にすることでもっと多くの人に役立ててもらえる。ここで行われているのはそういう研究なんだ」


 少年ははにかみながらつけ加えた。カーライン先生の受け売りだけどと。


「その先生とやらは一体何を研究しているのですか?」

「魔石を使った魔法器……だけど、最近は杖が多いかな。近衛魔術師隊で使う杖も先生が作っているんだ。軍用の特殊な魔導杖だね」


 どう特殊かというと、要するに現象術がプリセットされた魔導杖らしい。呪文や印などの動作が不要となるため、リアクションタイムの短い近接戦闘で有用なのだという。


「今のところ、魔法器を一番欲しているのは軍隊なんだ。先生はもっと日常生活で使えるものを作りたいらしいけど、魔法使いが居ないと動かせないから、あまり人気がなくてね……」

「軍事技術の民間転用など枚挙に暇がありません。そのうち希望が叶うかもしれませんね」


 同居人は一例として缶詰の話を持ち出す。元々は軍隊の食糧輸送手段として開発されたものだが、荷物として扱いやすい上に長期保存ができて便利なため、今日では一般に利用されている。エリオは現地で買えばいいのにと暢気なことを言っていたが、缶詰そのものには興味津々の様子だった。


「そのうち瓶詰くらいなら作ってみてもいいかもしれません」


 同居人がそんなことを口走る頃には、目的の研究室に着いていた。


折角なので、ファンタジーな方向に走ってみました。

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