第五十一話 天照編 異変
最終節突入です!
日曜夜、完結となります。
ここまで読んでいただけて本当に感謝しています。
最後、盛り上げていきますので楽しんでください!
最後までよろしくお願いします!
「なんだよこれ……」
家に戻ると、家の中が破茶滅茶になっていた。
机はひっくり返され、棚という棚はすべて引き出されていた。
双子が大切に並べていた河原の石はあちこちへ散らばり、俺が丹精込めて描いた絵は踏みつけられたような跡が残っている。
空き巣の仕業を一瞬疑ったが、妖セキュリティのある我が家に普通の泥棒が入れるはずはない。
「すみません……。何もできませんでした……」
庭を見ると、池の水面から太郎たちが申し訳なさそうに顔を半分だけ出して見つめていた。
良かった。
怯えているけれど、怪我は無さそうだ。
「無事で良かった。怪我はない?」
「私たちは大丈夫です。ですが、止める勇気がなく……」
「そんなこと気にしないで。太郎たちに怪我がなくてよかった」
太郎たちに近寄ってそっと頭を撫でると、太郎たちはホッと息を吐いた。
きっと俺たちが帰ってくるまで生きた心地がしなかっただろう。太郎たちに危害が及ばなくて本当に良かった。
そんなやり取りをしていると、敷地の隅に貼っていた護符を見に行っていたミケが戻ってきた。
「やられたな……。術師が来たようじゃ。我らの結界も陽翔の護符もやられておる。弱まってたとはいえ、なかなかの手腕だな」
「そんな分析してる場合⁉︎」
ミケの冷静な分析に、八つ当たりだと思いながらも突っかかってしまう。
気持ちばかりかも急いてしまう俺に、ミケは呆れたようにため息を吐いた。
「怒るよりも先に、何が無くなったかを見てみよ」
「屋敷の中を探していたようでした」
太郎たちの言葉で、俺たちは手分けして家の中を確認することにした。
しばらくすると、レイの悲鳴に近い声が屋敷に響いた。
「ねぇ!龍神さまいないよ!」
駆け寄ると、レイが神棚の前に立ち尽くしていた。神棚を見ると、昼までは確かに置いてあった石が忽然と姿を消している。
今日の龍神さまは、石の中で眠っていたはずだ。
「狙いは龍神だったか……」
「なんのために?」
「天照の仕業でしょうね」
敷地の外を見ていた月牙が、何かを咥えて帰ってきた。
「なんで天照の仕業って分かるの?」
「これが外に落ちてました」
月牙が差し出してきた紙を見ると、そこには陣のようなものが描かれていた。
俺が描く獄門円陣にどこか似ているが、それよりも遥かに複雑な紋様で、周囲にはびっしりと漢字が刻まれている。
俺が描くなんちゃって円陣とは違い、きちんと体系立てられた本物の術式なのだろう。
「なんでこれが天照のものだと分かるわけ?」
「中心に太陽の紋様があります。これは奴らが使う陣です」
「……詳しいね。月牙」
俺がそう言うと、すっと月牙は視線を逸らした。
「まぁいいや。それで?龍神さまはどこに連れて行かれたの?」
「烏天狗と姫様に聞いてみましょう。私が行って来ます」
「頼んだ」
そう言うや否や、月牙はいつにない勢いで飛び出して行った。
「龍神さま、大丈夫かな?」
レイが不安そうに俺の服をぎゅっと握ってくる。俺はその小さな手を握り返しながら、
「龍神さまは強いからね、きっと石の中でのんびり寝てるだけだ。大丈夫だよ」
と言ってレイの頭を撫でた。レイを元気付けるはずの言葉は、自分自身に言い聞かせるようで、荒れ果てた部屋に虚しく響いた。
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月牙の帰りを待ちながら、ソワソワと落ち着かない俺をみかねたミケがため息を吐いた。
「慌てても変わらん。猫たちも黒いスーツの奴らが来たと言っておった。時間的にもそんなに経っておらん。大丈夫じゃ」
「分かってるけどさ……」
「そんなに不安なら、護符でも描いておれ。助けに行くつもりなのだろう?」
「奴のことだ。助けになど行かぬでも暴れて帰って来そうではあるがな」とミケは鼻を鳴らしているが、その尻尾は忙しなく地面を打っている。
俺たちを励ましてくれながらと、ミケも心配しているのだ。主人である俺がこれ以上狼狽えるわけにはいかない。
「護符描いてくるよ」
「うむ。それが良い」
席を立つと、「僕たちは?」と不安そうな双子が見つめてきた。
ミケに「お主らは寝ろ」と言われると、「この状態で寝られるわけないよ!?」と双子は目を見開いた。
すると、ミケは呆れたように大きなため息をつく。
「今から出るというのに、途中で眠くなったらどうするつもりだ?」
ミケに一喝され、双子は「うぅ……」と言葉を失い、涙目で黙り込んでしまった。
ミケも苛立っているのかいつになく口調がきつい。
「二人も不安なんだよ。ミケ、二人に添い寝してやってくれない?ミケもいつもなら昼寝してる時間だろ?」
俺が頼むと、言いすぎた自覚はあったのか「しょうがないな……」と言いながら、ミケは双子と共に和室へと向かってくれた。
「ありがとう」
ミケの後ろ姿に声をかけると、「護符を頼んだ。小さくてもいい。この二人に持たせる絵の追加を頼む」と言い残し、ミケは消えて行った。
はぁ、とため息が溢れる。
窓の外を見ると、太陽はすでに海の向こうへと姿を消しているのに、不気味なくらい空は明るかった。
カツン──と虚しく響く、獅子脅しの音だけがやけに耳に残る。
「龍神さま、大丈夫だよな……」
誰にも届かない俺の呟きだけが、静まり返った空気に吸い込まれていった。
本日夜、短編で月牙視点のエピソードを追加予定です。
とてもお気に入りの作品となっておりますので、もし宜しければご一読お願いします。




