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特別編 ライラック

たくさんの応援ありがとございます!

感謝のショートストーリーです。お楽しみください。


 縁側で寝そべっていると、心地よい風が頬を撫でた。きゃっきゃという双子の笑い声がぼんやりと聞こえる。


 だからだろうか──


 とても懐かしい夢を見た。


 ⸻⸻⸻⸻


 ふと気づくとアトリエではない場所にいた。近くにいたはずの双子の声がしないことに気づいた。

 

「あれ?」


 聞こえた自分の声はいつもよりも高く聞こえ、クレヨンを持つ手は小さく見える。


 顔を上げると、ほっと安心する見慣れた光景が目に飛び込んでくる。


 ……実家のリビング?


 あ、これ夢か──


 そう思ったとき、とても懐かしい声が耳に飛び込んできた。

 

「はると、これ描いて」

「……ん?」


 最近ではもう思い出すことができなくなっていた声。あんなに遊んでいたのに、いつの間にか記憶が薄れていたことにもたたった今気がついた。


 懐かしい記憶がぶわりと蘇ってくる。

 

 俺が呆然としていると、にょきっと横から手が伸びてきて、小さな指が絵本のお姫様を指した。

 返事をしない俺を不思議に思ったのか、隣から不思議そうな声が聞こえてくる。


「ん?どうしたの?」

「……久しぶり」

「なにが?昨日も遊んだじゃん」


 君にとってはそうかもしれないけれど、俺にとっては15年以上ぶりなんだって。


「元気?」

「元気だよ。なーに?へんなはると」


 けらけらと笑う君。

 そういえば名前を知らなかったことに、今更になって気がついた。


「そういえば、名前なに?」

「どうしたの?本当に変だよ?」


 こてんと首を傾げると、さらさらとした髪が柔らかそうなほっぺを撫でた。


「はると、なんか今日あったかいね?」

「熱はないよ?」

「そうじゃなくて。笑い方が優しいよ」


 5歳の俺ってどんな笑い方してたっけ?

 双子よりはおとなしい子供だった気がする。


 小さい頃からよく絵を描いていた。

 両親は一人で描いていると思っていたみたいだけど、本当は違う。


 君がいつも強請るから、俺が描いたら嬉しそうに笑うから。


 俺は描くのが好きになったんだ。


「ありがとうね」


 君のおかげで、俺は双子たちに会えたんだ。


「変なはると。今日は描かないの?じゃ、帰ろっと」

「え⁉︎」

「ばいばーい」


 引き止める隙もなく、久しぶりに会えた君は走っていって、あっという間に壁の向こうへと消えてしまった。


 あの子は結局、妖なのだろうか。

 それとも、幽霊だったのだろうか。


「どっちでもいっか」


 床に広げられていた白い紙にクレヨンで女の子を描き出す。


「また名前聞けなかったな」


 またいつか聞けるかな。


 ⸻⸻⸻⸻


「はるとー!おやつー!」

「はるとー、喉乾いたよー」


 ゆらゆらと揺れ動かされて、ぼんやりと瞼を開ける。目の前には、おかっぱの髪の毛がさらさらと揺れていて、なんだかとても愛しかった。


「……おはよ」

「おはよ!はると!」

「よく寝てたねぇ」

「おう。なんか懐かしい夢見たわ」


 ふっと浮かんだ笑みに、不思議そうな顔で双子が首を傾げる。それが、記憶の君と重なった。


「描くか」

「描くの?」

「何描くの?」


 わくわくした瞳で双子が見上げてくる。その頭をぽんぽんと優しく撫で、仕事部屋へと足を向けた。

 

「ねーねー、何描くの?」

「んー?懐かしい人、かな」

「はるとの好きな人⁉︎」


 レイが「きゃー!」と叫ぶ。ユウはニヤニヤとしていた。


「ばーか。そんなんじゃないよ」

「なーんだ。つまんないのぉ」


 そう言いながらも、双子は後ろを着いてくる。今日はこのまま描いているのを見るつもりらしい。


「よし」


 真っ白なキャンパスに、懐かしい記憶を描き出した。


 君は今も笑っているだろうか。

 妖が見えるようになった今なら──また会えるだろうか。


 彼女の周囲をピンクと紫のライラックで彩った。


「よし。できた」

「可愛い子だぁ」

「私たちと同じくらいの子?ふーん」


 少しむくれたレイの頭を撫で、「今からレイたちのことも描こうか?どんなポーズがいい?」と聞くと、「太郎たちと鬼ごっこしてるとこ!」という答えが返ってきた。


「分かった。描き終わったら呼ぶから、向こうで遊んどけ」

「「はーい」」


 バタバタと賑やかな足音が遠ざかっていく。

 

 真っ白だったキャンパスの中では、記憶の中の君が変わらない満面の笑顔を咲かせていた。

 

 

 

いつも読んで頂きありがとうございます。

 読んでくださりありがとうございます!


 可愛い!癒される!と思っていただけましたら、ブクマや⭐︎を点滅させて貰えたら嬉しいです。


 今後ともよろしくお願いします。

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