表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
13/24

ロートVSキング

 倉庫街の一角。

 鈍く重い打撃音が響き、空気が震えた。

 ロートとキングは疾風のごとく地を蹴り、間合いを潰しては拳を打ち込む。

拳と拳が激突した瞬間、空気が弾けた。

衝撃が地面を走り、アスファルトに蜘蛛の巣状の亀裂が広がる。

互いに一度距離を取り、体勢を立て直す。

「てめぇ、俺を差し置いて、“キング”を名乗ってるらしいな」

「それがどうした」

「気に食わねぇ」

「ガハハ! 強さゆえの称号じゃ」

「なら、その名で呼ばれるのも今日で最後だな」

「……なんじゃと?」

「俺が、てめぇをぶっ飛ばすからだ!」

 沈黙が流れる。

「フン、威勢のいいガキじゃ」

 キングは笑い飛ばし、すぐに表情を引き締めた。

「――調子に乗るなよ!」

 次の瞬間、キングは獣のような勢いで突撃し、強烈な拳を突き出す。

ロートは瞬時に見切り、その拳を受け流す。

拳が空を裂き、その衝撃で地面が砕けた。

キングはすぐに向き直り、間髪入れず次々と拳を繰り出す。

ロートはしなやかな身のこなしで拳をいなした。

大振りの一瞬の隙を突き、反撃の蹴りを放つ。

キングは反射的に身を捻り、その蹴りを紙一重で躱す。そのまま後方へ跳び退き、距離を取った。

だがロートは即座に距離を詰め、腹に拳を叩き込む。

キングの顔が苦痛に歪んだ。

その一瞬の隙を逃さず、ロートは容赦なく追撃した。

左、右、さらに踏み込んでの蹴り。

キングは両腕で辛うじて攻撃を受け続ける。反撃に転じる余裕はなかった。

 ロートの強烈な蹴りが、腹部に深くめり込んだ。

 キングは吹き飛ばされ、勢いよく倉庫の壁を突き破る。大量の荷物を巻き込みながら倉庫の奥へ叩き込まれた。

 ロートは構えたまま、倉庫の奥を見据える。

 わずかな静寂の後、倉庫の中から物音が響き、その奥からキングがゆっくりと姿を現した。

全身が傷だらけで、確実にダメージを負っているが、キングはなおも不敵な笑みを浮かべていた。

ロートは低く言った。

「てめぇ、まだ本気を出してねぇだろ」

「ガハハ! 気づいておったか」

「そのままじゃつまんねぇ。さっさと全力を出しやがれ」

「……仕方ないのう」

 キングの表情が一変した。まるで猛獣のような瞳でロートを睨みつけながら、低く唸り声を上げる。

拳を握りしめた。

全身の筋肉が膨れ上がり、骨が軋む音が響き渡る。

顔の輪郭が獣のように変形し、口元から鋭い牙が伸びる。

黄金色の瞳が妖しく輝き、腕はさらに太く膨張した。

指先から鋭い爪が伸び、全身から圧倒的な威圧感が溢れ出す。

長く伸びた髪と髭が、頭から首元を覆っていく。

やがて、立派なたてがみを持つ獰猛なライオンの獣人へと変貌し、咆哮を上げた。

「ガオォォォォ!」

その雄叫びは空気を震わせ、対峙する者を圧倒する。

 だが、ロートは動揺することなく、一歩も引かなかった。むしろ、口元にわずかな笑みを浮かべ、闘志が滲むのを抑え切れなかった。

 キングはニヤリと笑い、得意げに言い放つ。

「これが、わしの真の姿じゃ。どうじゃ、かっこいいじゃろ」

「ライオン人間か。面白れぇ!」

 そう言い放つと、ロートは踏み込み、一気に加速した。

一直線に突進し、顔面へ拳を突き出す。

 キングはその拳を片手で受け止めた。その衝撃で、キングのたてがみが揺れる。

 ロートは間を置かず、拳をもう一撃放とうとした。

だが、キングの膝蹴りが腹部に深く食い込む。

「グハッ!」

 ロートの身体は吹き飛ばされ、倉庫の壁を突き破り、崩れ落ちた荷物に埋もれた。

 キングは誇らしげに鼻を鳴らす。

 沈黙。

 ロートは荷物を掻き分け、その場に立ち上がる。

「――っ!」

 首を鳴らし、肩を回して、小さく息を吐いた。

「よしっ!」

 気合を入れ直し、倉庫から飛び出す。

 目の前には、自信に満ち溢れたキングが腕を組み、堂々と立ちはだかっていた。

「やるじゃねぇか、ライオン野郎」

「貴様もな、ガハハ!」

 わずかな沈黙が流れる。

 二人は静かに構え、互いに鋭く睨みつけた。

 先に集中を切らした方が、一瞬で敗北する――そんな張り詰めた空気が辺りを支配していた。

 次の瞬間、二人は同時に突撃し、拳を激しくぶつけ合った。

 拳が衝突した瞬間、まるで爆発が起きたかのように衝撃波が四方へと広がる。

足元が深く窪み、地面がひび割れた。

 目にも留まらぬ速さで拳を交わしながら、二人はもつれ合うように倉庫へ突っ込んだ。

拳が激突するたびに柱が砕け、壁が歪む。

そして限界を迎えた倉庫は轟音と共に崩壊した。

 砂塵が舞い上がり、瓦礫が積もる。

 ロートとキングは瓦礫の山から勢いよく飛び出し、着地と同時に距離を詰める。

キングはその巨体をひと足で跳ね上げ、ロートへ向けて猛烈に拳を突き出す。

その拳は、空気を切り裂く音を立てて迫ってくる。

ロートは素早くしゃがんでその拳を躱し、右手でキングの腕を掴んで引き寄せ、胸部に鋭い膝蹴りを撃ち込んだ。

「グッ!」

キングの表情がわずかに歪む。

だがすぐに獣のような眼光を宿し、ロートを睨み返した。

 ロートは低い姿勢のまま懐に滑り込み、拳を連続で叩き込む。

 キングの体が後ろに揺れた。だが、すぐに体勢を立て直す。

ロートへ突進し、反撃の拳を顔面へ叩き込んだ。

「くっ……!」

 ロートは踏み込み、即座に応戦する。

ボディーブロー、肘打ち、膝蹴りが飛び交う。

激しい攻防の末、ロートもキングも全身傷だらけだった。

呼吸は荒く、体力も限界へ近づいていた。

それでも、どちらも一歩も引くことなく戦い続ける。

二人の口元はわずかに緩み、戦いの興奮が笑みとなって滲み出ていた。

互いに一度距離を取り、すぐさま拳を構える。

 キングは笑いながら、余裕たっぷりに言った。

「ただの人間にしては、なかなかやりおるな。じゃが、わしには絶対に勝てん」

「へっ、言ってろ」

「死んだ後のことは心配するな。お前を仕留めた後、すぐにあの小娘も殺してやる。あの世で会うことができるぞ。ガハハ!」

 その瞬間――。

ロートの目付きが変わった。

今までの好戦的な笑みはどこにもない。

ロートは瞬時に距離を詰め、鋭い拳がキングの顔面をかすめる。

 キングの頬が裂け、鮮血が飛び散った。

 続けて放たれた拳を、キングは寸前で受け止めた。

だが押し負ける。

巨体ごと弾き飛ばされ、瓦礫を巻き込みながら地面を転がった。

 ロートは冷たい目でキングを見据えた。

「ふん」

 その時だった。

瓦礫が弾け飛び、キングは猛然と空高く跳び上がった。巨大なコンクリート片を持ち上げ、力強くロートに向かって投げ飛ばす。

 ロートは拳を突き出し、コンクリート片を粉々に粉砕する。

 その瞬間、キングは一瞬でロートの背後に回り込み、勢いよく踵落としを叩き込んだ。

 ロートは咄嗟に頭上で腕を交差させ、踵落としを受け止める。その衝撃で足元が深く沈み込み、地面がひび割れた。だが、ロートは持ちこたえ、素早くキングの足を掴むと、そのまま跳躍して地面に叩きつけた。

 キングは身体を打ちつけながら地面を転がり、体勢を立て直す。息を荒げ、肩が上下していた。口元の血を拭う。

 ロートもまた息を切らし、額から流れる汗を拭った。先ほど受けた衝撃がじんじんと響き、腕の奥から痺れが広がっていく。

その痛みを振り払うように、ロートはキングを見据え、低い声で言った。

「そろそろ限界のようだな」

「ガハハ! それはこっちのセリフじゃ」

「どっちが先にくたばるか、決着をつけようじゃねぇか」

「いいじゃろう」

 二人は息を整え、臨戦態勢を取る。

 ロートの顎先から汗が滴り落ちたその瞬間――。

二人は同時に地を蹴り、再び正面から激突した。

互いに何度も拳をぶつけ合う。

 重い一撃を受けるたび、二人の身体は赤く腫れ、それがじんわりと全身に広がっていく。

腕が赤黒く腫れあがり、筋肉も裂けて血が滲む。

 それでも、二人は攻撃の手を緩めることなく、むしろ、次第に鋭さを増し、一撃一撃がさらに重くなっていった。

「ウォォォォォ!」

 ロートは渾身の力を込め、拳を突き出す。

「ガオッ!」

 キングも唸りながら、カウンターパンチを放つ。

二つの拳が交差し、爆発のような衝撃波が巻き起こった。

わずかな静寂が訪れる。

キングの拳は、ロートの顔前で止まり、届いていなかった。

一方、ロートの拳は、キングの顔面に深くめり込んでいた。

「グフッ!」

 キングの口から血が飛び、呻き声を上げながら数歩下がった。

 キングはかすむ視界の中でロートを見つめる。

そして満足そうに笑った。

「ガハハ……見事じゃ」

直後、キングの膝がガクリと崩れ、巨体がゆっくりと前に倒れ込み、地面を揺らした。

キングは意識を失い、完全に沈黙する。

 見届けた後、ロートは静かに息を吐き、肩を落とした。

「チッ……強ぇじゃねぇか」

 疲れ果てた様子でその場に座り込み、空を見上げた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ