報酬と新たなギルド
アジトを制圧したその足で。
新と皐月は、レギュラートギルド本部へと向かった。
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執務室。
相良は資料に目を通しながら、静かに言った。
「……なるほど」
机の上には、新たちが回収したレシピと薬。
「模造品の流通源は潰せた、と」
「ああ」
新は短く答える。
「だが元は別にいる」
「分かっています」
相良は顔を上げる。
その目は冷静だった。
「今回の件、よくやってくれました」
形式的な言葉ではない。
事実としての評価。
「しばらくは暴走も落ち着くでしょう」
皐月が少し安心したように息を吐く。
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「ただし」
相良が続ける。
「これは終わりではありません」
「……だろうな」
「ええ」
相良は頷いた。
「ですから――今後も探りを入れていただきたい」
新は即答する。
「こっちもそのつもりだ」
相良はわずかに口元を緩めた。
「助かります」
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「では約束通り」
相良が指を鳴らすと、部下が資料を持ってくる。
「報酬です」
机の上に並ぶ、ダンジョンリスト。
「レギュラート占有ダンジョン、二つ」
皐月の目が輝く。
「選んでいいんですか……!」
「ああ」
新は迷わなかった。
リストに目を通す。
そして。
「これと――これだ」
即決。
相良がわずかに目を細める。
「……迷いがないですね」
「行く場所は決めてある」
その二つは。
どちらもレギュラート専用。
そして――
通常では辿り着けない分岐に関わるダンジョン。
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「入場は後日になります」
相良が言う。
「日時はこちらで調整します」
「条件がある」
新が口を開く前に、相良が続けた。
「……私も同行します」
皐月が驚く。
「ギルド長が!?」
「はい」
相良の視線は真っ直ぐだった。
「あなたを測る必要があります」
「白珠の剣士としての実力を」
静かな圧。
だが拒否はしない。
「いいだろう」
新は答える。
むしろ――好都合だった。
(こっちも見れる)
ギルド長の実力。
そして思想。
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ギルドを出た後。
「すごいですね……レギュラートのダンジョン……」
皐月が興奮気味に言う。
「ああ」
だが新の思考は別にあった。
「次、行くぞ」
「え?」
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向かった先。
それは――
レグルスギルド。
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巨大な建物。
だがレギュラートとは違う。
騒がしい。
笑い声。
怒号。
武器のぶつかる音。
「なんか……雰囲気違いますね」
「実力主義だからな」
入口付近では、加入テストが行われていた。
戦闘。
実技。
簡易な選別。
だが――
「ここから入るのは、初心者だ」
「え?」
皐月が驚く。
「実力を見せる場所は別にある」
新はレグルスの建物を見上げる。
「本当に強い奴は」
「ギルドに“認めさせる”」
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「じゃあどうするの?」
皐月の問い。
新は少しだけ口元を上げる。
「ダンジョンだ」
「ダンジョン?」
「ああ」
レグルスには。
ギルドが管理している特殊ダンジョンがある。
ただし、管理はしているが、専有はしてない。
そこに行くとレグルスギルドのメンバーと邂逅するイベントが発生する
そこで実力が認められたらテストなど不要。
それどころか権力を持つギルドメンバーの仲間入りができるのだ
「そこに行く」
皐月が息を呑む。
「……いきなり?」
「問題ない」
新は静かに言った。
「場所も、中身も知ってる」
周回の記憶。
それがあるからこそできる選択。
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「準備しておけ」
新は歩き出す。
「次は――レグルスだ」
皐月は一瞬だけ驚き、
すぐに笑った。
「うん!」
その目は、不安よりも期待で満ちていた。
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レギュラート。
レグルス。
二つの勢力。
そしてその裏で動く――聖火の集い。
それぞれの思惑が交差する中。
新は、さらに深い場所へ踏み込もうとしていた。




