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ヒマワリの誓い~郵便猫ルカの配達日誌~  作者: 咲晴


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11/12

祝福

 ミミは、村から湖を抜けて風見の町へ、あっという間に着いたように思いました。

 リオとずっとおしゃべりが絶えず、時間を忘れていたからかもしれません。


 風見の町へ着くと、ちょうどクルミの家からトゥーリが出てくるのが見えました。

 ミミは、それを見て悪戯めいた顔をリオに見せました。

 

「ああ、楽しかった。クルミさんありがとう」

「いやいや、わしも楽しかったわい。スコーンも絶品じゃった。ありがとう」

「こんな時間まで話し込んでしまって悪かったね」

「トゥーリこそ、宿屋は大丈夫かい?」

「ああ、なんとかなるさ。気になったままの方が仕事にならないからね。じゃあ――ワァッ!」

「わっ!!!」


 トゥーリが帰ろうと振り返るタイミングで、ミミがトゥーリを驚かせました。


「ミミ! ミミじゃないか! びっくりしすぎて時計を落とすところだったよ」

「トゥーリさん、ただいま」

「ほほっぉ! ミミ、おかえり。みんな待っとったよ」

「クルミさん、ただいま」


 トゥーリは、キョロキョロと何かを探し始めました。


「おや?見ない顔だね。ちょうどいい、ちょっとこれ持っていてくれないか?」

「え……?」

 

 リオが返事を返さないうちに、トゥーリは、半ば強引に大事な鳩時計を彼に託しました。

 そして、ミミを優しく、強く抱きしめました。


「ダメじゃないか……何も言わずに出ていっては」

「……ごめんなさい」

「今ちょうど、あんたが帰ってくるってクルミさんから聞いたとこだったんだ……元気そうで良かった」

「うん……」


 二人は笑い合っていましたが、二人の目にはうっすらと涙が光っていました。


「あ、あの……」

「ああ、悪かったね。急に持たせてしまって……ところで、どなただい?」


 トゥーリは、時計を貰いながらミミに尋ねました。


「それは――みんながいるところで紹介するよ」


 なんだか、ミミは照れくさそうに言いました。


 ◆


 ルカは、机に向かって書類の整理をしていました。

 接客に忙しかった昨日の分まであるので、かなりの量でした。

 静かな郵便局で、書類に目を通していると、外から賑やかな声が聞こえてきました。


 その声を聞いて、ルカは郵便局を飛び出しました。

 ドアを開けると、鳩時計を持ったトゥーリとクルミ、そしてミミと昨日見かけたウサギの青年が、通りかかりました。


「……ミミさん!」

「ルカくん!久しぶり」


 ミミはルカに駆け寄りました。

 そして、ルカの両手を手に取り言いました。


「手紙、届けてくれてありがとう」

「いえ、僕一人では届けることができませんでした。届いたのは、みんなのおかげです」


 ルカは、再度手紙が無事に届いたことに安堵しました。


「君がルカ君だね? 僕からもありがとう。彼らから聞いたんだ、手紙が届いた経緯を――君が動いてくれたから、僕の手紙が彼女に届いた。だから、僕たち再会できたんだ。本当に感謝しているよ。ありがとう」


 丁寧に頭を下げてお礼を言うリオに、ルカは『こちらこそ、ありがとうございます』と言って、お辞儀をしました。


 ルカは、自分だけの成果ではなかったので、戸惑いもありましたが、手紙を届けることの重みを実感しました。


 その様子を微笑ましく見ていたミミが言いました。


「あのね、みんなに報告があるの。ルカ君も広場に来てくれる?」

「……わかりました。じゃあ、僕先に行ってみんなに知らせてきますね」


 ルカは、楽しそうに広場へ駆けていきました。


 ◆


 四人が着く頃には、広場にはたくさんの住人が詰めかけていました。

 みんな、ミミを見つけると口々に『おかえり』と声をかけます。

 ミミは笑いながら――でも泣きそうな顔で、『ただいま』と返しました。


 ミミは、みんなが見える場所へ移動すると話し始めました。


「みんな、何も言わずに引っ越してしまってごめんね。今、森の向こうの町にある花屋さんで働いています。ずっと働いてみたかったお店なの……。それでね、彼は幼馴染みのリオ――彼と……結婚します!」


 少し、静まり返った後、大きな拍手と『おめでとう』の合唱が巻き起こりました。

 たくさんの祝福に、ミミは幸せそうよりも、恥ずかしそうでした。

 一緒に聞いていたルカとトゥーリは、驚いた顔でお互いの反応を見ると、一緒に笑いだし、大きな拍手を送りました。

 その後ろでクルミは、顎をさすりながら大きく頷いていました。



 祝福の嵐の中、ミミの元にやって来たのはミナでした。


「ミナさん!」

「ミミ、おめでとう」


 ミナは『この若い二人に祝福の風が吹き続けますよう……』と言いながら、ミミにシロツメクサのブーケを渡しました。

 白いシロツメクサの花は、ミミのヒマワリ色のエプロンドレスによく映えました。


 ミミは、ミナを抱きしめて、何度も『ありがとう』と伝えました。


 町のみんなの祝福は、風に乗り、町の隅々まで届きました。

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