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ヒマワリの誓い~郵便猫ルカの配達日誌~  作者: 咲晴


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10/12

報告

 昨日は楽しくて、つい遅くまで話し込んでしまった。

 

 私は、家を出て井戸へ向かう。

 今日は、少し寒いと感じる風が吹いていた。

 井戸の水が、とても冷たく感じる。


 顔を洗って、水を飲む――森の水が体に沁み渡っていった。


 予定はなかったが、風見の町に住む兄さんのソルを訪ねることにした。

 ハチミツのパンケーキを持っていこう。

 昨日、クルミが絶賛していたあのパンケーキだ。


 私は、大きく伸びをしてから、出かける準備を始めた。


 ◆

 

 今日は昨日とは違い、涼しい風が吹き抜けて秋の訪れを感じさせるような朝だった。

 『風灯亭』は朝から大忙しだった。

 グループで泊まりに来たお客さんが2組もいたのだ。

 私は、慌ただしくチェックアウトのお客さんを見送り、玄関の掃き掃除を終えたところだった。

 

「やっぱり、いつもあるものがないってのは、寂しいねえ……」

 

 いつもの習慣で、鳩時計のあった場所を見て、修理に出していたと改めて気づいた。

 朝の掃除はこのくらいでいいだろう。

 クルミさんの所へ時計を迎えに行こう。


 実は、昨日から楽しみだった。

 時計のこともあるが、昨日私が届けた手紙はなんだったのか、気になって仕方がなかったのだ。

 ミステリー小説の途中で、お預けをくらったようなそんな気分だった。


 そうだ。話のお供に、焼き立てのスコーンを持っていこう。

 キッチンカウンターにある籠から、スコーンを4つ紙袋に入れた。

 

 私はそれを抱えて、ルンルン気分でクルミさんの家に向かった。

 

 ◆


 トントントン――。


「クルミさん、おはよう」

「トゥーリ、おはよう。できとるよ」


 クルミは、カウンターに置いてある鳩時計を羽で指しながら答えました。

 

「ああ、よかった……いくらだい?」

「ふむ……3セルクもらおうかの」

「そんな安くていいのかい?」

「ええんじゃよ。簡単な修理だったしの」


 トゥーリは、『ありがとう』とお礼を添えてお金を渡してから、ニヤリと笑って言いました。

 

「それで? 昨日の約束の話を聞かせてもらおうか。代金はこれでどうだい?」


 トゥーリは、クルミに紙袋の中身を見せました。


「ほっほぉ! こりゃあ話がはかどるわい。今、お茶を淹れるから待っておれ」

「ああ、お茶は私が代わりに淹れるから、早く聞かせておくれよ」

「それじゃあ、お茶はお願いして――まず、ルカの元にヒマワリ色の手紙が届いての……」


 クルミとトゥーリの時間を忘れたおしゃべり会が、始まりました。

 トゥーリの驚いたり笑ったりする声や、クルミがスコーンに舌鼓を打つ声が、お昼近くまで響いていました。


 ◆


「ふぁぁぁ~」

 ルカは、朝から大きなあくびをしました。

 昨日は、ミナさんやクルミさんと話し込んでしまって、帰る頃には夜もとっぷりと更けていました。

 少し寝不足のルカは、日課の朝の散策はお休みにしようと決めました。

 大きく伸びをして、軽く体を動かしてから、郵便局へのんびりと向かいました。

 

 郵便局へ着いて一番にポストを確認します。

 今日は、手紙や封筒がたくさん入っていました。

 モミジ色やイチョウ色――どれも昨日たくさん売れた秋色のものでした。

 郵便物を1つ1つ手に取るたびルカは、楽しそうな気持ちに触れたような気がしました。

 みんな楽しく手紙を書いてくれたんだな、と思うとルカも嬉しくなりました。


 今日は、郵便局にお客さんが詰めかけることはありませんでした。

 ルカは、丁寧に郵便魔法を使って、郵便物を届けていきます。


 ときおり、ソワソワと外へ出ては町の入り口の方を見て、また郵便局へ戻っていきました。

 何度も――。何度も――。


 ◆


 リオの両親は、驚いていた。

 そうだと思う。

 だって、リオが帰ってきたと思ったら私がいて、唐突に『結婚します』って言うんだもの。

 でも、二人ともすぐに顔が緩んで、『ミミちゃんがリオの傍にいてくれたら、心強い。おめでとう』って祝福してくれた。


 私の両親も驚いていた。

 そうだと思う。

 私が突然帰ってきたと思ったら、リオを連れてきて、唐突に『結婚します』って言うんだもの。

 二人も『リオくんなら安心だ』と許してくれた。


 結婚と決まると、気が早くなるのだろうか。『式はいつ?』なんてすぐに聞いてくる。


 リオは村で教師の仕事をしていて、私は森の向こうの町で、体調を崩しているオリバーさんに代わって店を切り盛りしている。

 お互い、すぐに生活の拠点を移すことはできない。

 まだ具体的なことは決められなかったから、『そのうち』とだけ答えておいた。


 二人とも残念がったが、そろそろ村を出ないと帰りが遅くなってしまう。

『また来るね』と言って、私たちは村を後にした。


 そして、手を繋いで歩き出す。

 今日、最後の目的地――風見の町へ。リオと一緒に。

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