ヒマワリの誓い
森の向こうの町に戻って、真っ先にオリバーさんへ報告した。
オリバーさんも急な話で驚いていたが、とても喜んでくれた。
「店のことは心配しなくていいよ。それよりも、ブーケはうちで作らせてくれよ? 結婚式はいつだい?」
オリバーさんは、早速ブーケ作りに頭がいっぱいのようだったが、私は『まだ決めていない』と伝えた。
「彼は、故郷の湖の向こうの村で教師をしているので、結婚後は帰るつもりです。でもオリバーさん、心配しないでと言いますけど、せめて後任が決まるまでは、私辞めるつもりありませんからね。それまでは結婚しませんから」
「僕の……店のために、それはいけないよ」
「いいえ。このお店は、畳んで欲しくありませんから。それに心配で、安心してお嫁に行けませんよ」
オリバーさんは、まだ納得していない様子だったけど、しぶしぶ承知してくれた。
「早く、後任を探さないと」
オリバーさんは、すぐに後任の女の子を見つけてきてくれた。
それからは、その子に仕事を教える忙しい日々を送っていた。
とても熱心な子で、安心してお店を任せられると思った。
オリバーさんも、体調が安定してきていて一安心だ。
◆
ミミの元にヒマワリ色の手紙が届いてから、1年近くが過ぎました。
次の夏が訪れ始め、日に日に暑さが増してきた頃ある日のこと。
満開のヒマワリが彩る、ヒマワリの丘にたくさんの人が集まっていました。
集まった人たちは、今か今かと、主役の登場を待ちわびていました。
やがて、楽しそうな声が重なり、とても賑やかな会場が、次第に拍手の音に変わりました。
真っ白なウエディングドレスに、オリバーが作ったヒマワリのブーケを持ったミミが現れました。
会場の手前で待っていたのは、ミナでした。
ミナは、『おめでとう』と、ミミの頭にシロツメクサの花冠を乗せました。そして、ミミのヴェールを下ろしました。
「ミナさん、お願い聞いてくれてありがとう」
「このくらい、いいのよ」
それは、ミミがミナに頼んだものでした。
ミミは、父のエスコートでゆっくりと歩きだしました。
向かう先には、緊張しているリオが待っています。
緊張しているリオの顔はなんだか可笑しくて、ミミは、それだけで緊張がほぐれました。
大好きな場所で、たくさんの人から祝福を受け、幸せなミミに、リオは尋ねました。
「ねえ、本当に良かったの? 憧れのお店で働く夢が、せっかく叶ったのに」
「ふふっ、今更ねえ……良かったのよ、叶ったんだから。それに、オリバーの花屋2号店を村に出すのよ。もう、オリバーさんから許可は貰ってあるの。素敵なお店にするわ。新しい夢がここにあるの。だから、良いのよ」
急に心配になってしまった様子のリオに、ミミは優しく答えました。
「あの……さ」
「なに?」
「僕、誓うよ――このヒマワリに。ミミちゃんの……僕たちの夢を叶えていくこと。一緒に2人の幸せを見つけることを」
「……私も誓うわ」
ヒマワリの丘に、一筋の優しい風が吹きました。
青空の下で、元気いっぱいのヒマワリが静かに揺れ、2人を祝福していました。




