第76部分
「悪いけど、今のここの隊長さんを呼んでもらえる?」
「承知しました。すぐに呼んで参ります!」
警備兵が走り去って5分もせずに、別の男と一緒に走ってきた。
「ヤマト様、お呼びと聞き参りました」
「貴方が今の責任者ということでいいかな?」
「はい、間違いございません」
「あそこに居る男の服装を見て、どうするべきか教えて欲しい」
指さされた男の服装を見て、改めて近づいて再確認する隊長。
「あの男の服装は国境警備隊の者だと思われます。」
「間違いないと思いますか?」
「はい、王都で何度か見たことがありますので、間違いないかと思います」
「どうしたもんかな?」
「王都に使いを出しますので、そのまま捕縛しておいて頂けますか?」
「それはいいけど、もう一度洞窟に行くと思うから、5人程度見張りを貸してもらえないかな?」
「はい、それは問題ありません。すぐに連れて参ります。」
同じく5分くらいして、隊長と5人の警備兵が戻ってくる。最初に確認した警備兵も含まれている。
「ヤマト様、この者達で監視をさせますので、ご安心下さい。」
「ありがとう。繋いでいるので問題ないとは思うが、逃げるようであれば殴ってもいいから。」
「承知しました。監視はお任せください」
監視は警備兵に任せ、今後のことを考えないといけない。
「クリスを呼び戻したいんだが、どこにいるかな?」
「クリスはあの茂みに居るわよ。」
シャルが指差す先にはただの茂しか見えない。
茂みが少し動いたように見えると、クリスの姿が視認できた。
「どうだった?」
「2人徒歩で戻ってきましたが、それ以降は誰も戻りません。もう少し監視して、またお知らせしましょうか?」
「そうだね。少しだけ休憩して行きなよ。なんか長い話になるかもしれないから。」
頑張ったクリスをナデナデして労り、休憩の後に送り出す。
「そういえば、クララとオクタビアはどうするの?」
悪戯顔でシャルが聞いてくる。
「奴隷からは解放したから、本人の意志が重要じゃないか?」
「そうね。そこは否定しないわ。」
「なので、こちらがどうこう言う問題ではないと思う」
「じゃあ、2人がどうこう言えば進む問題なのね。わかったわ。」
「何が分かったんだよ」
「2人は妾でもいいから、側に置いて欲しいと言ってるのよ」
「えっ??」
「まぁいいわ。部屋に送り込むからどうこう言われたらちゃんと対応するのよ」
「………」
シャルの尋問を受け終えると、リンマがやってくる。
「ヤマトさん、何人か喋れるようになりましたが、話は聞きますか?」
「いや、今回は長期戦になりそうなので、後でまとめて話を聞こうと思う」
「そうですか。ではもう少し観察しておきます。」
そして動きがないまま、夕方を迎える。
「このままクリスを偵察に出しておくのはまずいな」
「そうね、呼び戻しましょう」
クリスのほうを向き、大きく手を振ると、茂みが動きクリスが現れる。
「お疲れ様。どうだった?」
「大きな動きはありませんでした。」
「中に入った2人は洞窟から出てない?」
「はい、中に入ったままです」
「あまり遅くまであそこに居るのは危ないから、また夜明け前に起きて一緒に行こう」
「分かりました。麻痺草玉も作りましたので、明日の準備は問題ないです」
「そうか。助かるよ。今日は早く寝るといい。」
クリスをナデナデして労る。
翌朝、今回は起こされずに目を覚まし、出発の準備に取り掛かる。
麻痺草の効果が切れた盗賊達が騒いでいたが、仲良く猿ぐつわをプレゼントされていた。
いつも通りクリスが先行し、内部の様子を偵察してくる。
「馬車はありませんが、中の人数は増えています。あの男と同じ服の者が4人、女が5人です。」
「ということは警備隊の者が先に2人帰ってきて、後から女を5人連れた男が2人帰ってきたのか。女の数から考えるに、警備隊の者は5人だな。」
「ヤマトなら1人分でしょ」
クリスが要らんことを言い出す。
「今はそういう話をしている場合ではない」
「人数が少ないけど、どうしようか?」
「仮にも国境警備隊の者なら甘く見ずに麻痺草を使うべきと思います」
リンネから慎重意見が出る。
「そうだな。慎重に行くべきだろう。クリス、何時も通り頼む。」
「わかりました。では行ってきます」
「クリスの隠密って見えないよな?」
「そうね、居ると思って意識しないとまったく見えないわ」
「あれ、忍び込まれるほうは恐怖だよな」
「そうね、でも与えた人の責任じゃないの?」
またシャルが意地悪な顔をしている。
「でも、あの技能は私やリンマには向かない。そもそもの身のこなしが良くないと、あそこまで無音で移動できないと思うわ」
「それはそうだな」
「戻りました」
程なくしてクリスが戻る。
「クリスは少し休んでくれ。他の者で出発の準備をしよう。」
出発の準備をしていると、隊長が駆け寄ってくる。
「ヤマト様、今日の昼過ぎには近衛騎士団の方がこちらに到着する予定です」
「やけに早くないですか?」
「どうも懸賞金が掛けられていた様で、使いのものと寝ずに馬で走ってきているようです」
「分かりました。今の段階ではあの男の所有権は私にありますので、それをお忘れなく」
「はい、それは承知しております」
「また出かけてきますので、昼過ぎには戻ると思います」
「承知しました。では後ほど。」
隊長と分かれて洞窟に接近する。
特に変わった様子もなく、そのまま洞窟の中に潜入する。
中には見慣れた麻痺した男と女が転がっていた。
後ろ手に縛りながら、盗賊達を外へ運び出す。
寝床の物を回収している時に、クララがある発見をする。
「ヤマト様、なにか手紙のようなものがあります」
「確かに書いてるね。ここでは読めないので、外で読もう」
馬車に盗賊達を載せ、やや定員オーバーな状態で砦へと戻る。
鍛冶師達が盗賊を降ろしてくれるので、例の手紙を確認してみる。
手紙の内容は、マナト王国の貴族が国境警備隊の部隊長に宛てたもの。国境を通過する便宜を図ってくれれば、1人につき幾ら払う。この取引で立場が危うくなった場合には、マナト王国内で責任を持って保護する。という内容だった。
「クララ、これはかなりのお手柄だな」
「えっ?そうなんですか?」
「マナト王国と国境警備隊が繋がっていた証拠と、この5人の中に部隊長かそれに近い者が居るという証拠だ。慌てて逃げ出して、捨てる間もなく、あそこに着いたんだと思う。」
「あ~なるほど。ではヤマト様のお役に立てたということですね」
「そうだな、それは間違いない」
手紙をマジックボックスに戻し、クリスからメイスを預かる。
「今日は近衛騎士団が来るから、尋問は私がやるから」
そう言うと少し残念そうな顔はしていたが、何も言わずに頷いた。
暫くすると、砦の門のほうが騒がしくなる。
眺めていると、近衛騎士団の方がこちらへ駆け寄ってくる。
うん?女か?
よーく見ると見覚えのある顔だ。
「ヤマト様、ご無沙汰しております。近衛騎士団第3騎士団の団長…」
「ローラ団長とマリナ隊長、王都ではお世話になりました」
「最後まで言わせてください」
「まぁ、いいじゃないですか。問題の者はあちらに捕縛しております。」
「マリナ、確認してまいれ」
はっ と短く返事をした隊長が走って確認へ行く。
「団長、国境警備隊の逃走者は何人いましたか?」
「報告を受けている中身で12名、うち5名は騎士団が捕獲しました。2名はルーシル村の宿で自害しているのが確認されました。」
「その確認された7人の中に部隊長はいましたか?」
「いえ、未だ見つかっておりません」
確認から戻った隊長が短く、
「間違いありません」と報告する。
「ヤマト様、相談なのですが」
「あの男の所有権は私にあります」
「そこは議論するつもりはありません。当然のことです。」
「騎士団としては引き渡しを希望されますよね?」
「はい、隊の名誉に関わる問題ですので、お願いしたく思います」
「ではこうしませんか?私も知りたいことがありますので、尋問は今からここで行いましょう。」
「はい、それは問題ありません」
「次に引き渡しの条件ですが、懸賞金は不要ですので条件があります」
「条件とは?」
「引き渡す1人に対し犯罪歴の無い奴隷を5人。技能の有無は問いません。できれば家族が望ましいですが、無理なら家族は条件から除外します」
「そうですね。懸賞金で恐らく買えると思いますので、問題ありません。」
「分かりました。ではあの5人と25人の奴隷を交換することでいいですね?」
「問題ありません」
「では、尋問を開始しましょう。」
そう伝え、メイスをアイテムボックスから取り出し防護柵に近づく。
「ヤマト様、あまり殴られますと会話が出来なくなりますので、その辺りは…」
「大丈夫です。まぁ見ててください。」
鍛冶師に合図をして、最初に捕まえた男を立たせ柵に縛り付ける。
猿ぐつわを外された男が喚いているので、まずは股間に一発お見舞いする。
「リンマ、頼む」
すかさずリンマが治癒を行い、顔を叩き意識を取り戻させる。
「いいか?質問にだけ答えろ。」
「お前に話すことはなにもない」
やや力をこめて2度目のメイスを股間に叩き込む。今回は白目を剥いている。
すかさすリンマが治癒に入り、男は目を覚ます。
「いいか?次は手加減なしで叩き込むぞ」
「な…なにを話せばいい?」
「所属を正直に答えろ」
「国軍だ」
メイスを更に力を込めて股間に叩き込む。
命中と同時に痙攣して気を失うが、残念ながらリンマがすぐに意識を回復させる。
「国軍の制服と国境警備隊の制服は違うそうだが?」
「…国境警備隊です」
「どこの国境警備隊だ?」
「ルーシル村の南にあるマナトとの国境警備隊です」
「誇りある国境警備隊の隊員が何故、あの洞窟に隠れていた?」
「国軍に賄賂を貰っていることが知られ、逃げてきました」
「ということは逃亡兵ということで間違いはないか?」
「はい、間違いありません」
「最後の質問だ。5人の男のうち、部隊長、もしくは責任者は誰だ?」
「………」
男が沈黙作戦に出るので、マジックボックスから槍を取り出す。
「今度は志向を変えてみよう。槍は苦手なので、練習がしたかった」
「部隊長は私です」




