第75部分
「う~ん、どうしようか」
ヤマトはダンジョン1階の草原の上で悩んでいる。
「ダンジョンの権限を得たからって、妻を増やすつもりかしら?」
シャルが頬を膨らませて言い寄ってくる。
「いや、そういうことじゃなくて、このダンジョンがローカニルから狙われるかもしれない。という話を聞いてるから、手放しでは喜べなくて。」
「なら、入り口に柵を設置して、例の投石機でも使って粉砕すればいいんじゃない?」
「それは毎回面倒だろうに」
「当面は防護柵で工夫するしかないわよね。」
「そうだね。あとは、警備をどうするかなんだけど。」
「それこそ、投資している相手が居るでしょ?戦闘をさせないにしても、監視させるだけでいいんじゃなの?」
「パトリクの後輩たち?」
「そうよ。なんの為に家やら食事やらを与えているの」
「うーん、なんか使うってのが好きになれなくて」
「それなら安い金額ででも、冒険者ギルドに依頼出したらどうなの?」
「確かにその手はあるね」
「じゃあギルドに依頼出してきたら?指名依頼で出せば余所者は入れないから」
シャルのアドバイスを受け、町へ戻ることにする。
「エルサさん、こんにちわ。依頼を出したいのですが」
「はい、ヤマトさんこんにちわ。依頼を出されるのですね」
「はい内容は……」
「はい、問題ありません。では依頼を出させて頂きます」
こうして新ダンジョンの警備メンバーは確保することになった。
「パトリク、ちょっといいかな?」
「これはリーダー、戻られていたのですね。」
「実は冒険者ギルドに依頼を出していて……」
「おお、それはいいですね。早速メンバーを集めましょう。」
「交代制にしたいけど、何パーティ位集まりそう?」
「そうですね、戦闘技能の高い者をリーダーにして6パーティは組めますね。」
「じゃあ編成はお願いするよ。明日からで大丈夫だから。」
「了解しました。あと、大工達も派遣しましょう。町の拡張工事に参加してますが、こちらも人手が必要でしょうから。」
「ああ、そうだね。宜しく頼む。」
パトリクに警備のパーティー編成を丸投げして、次の目的地に向かう。
「こんにちわ~いますか~?」
「おお、ヤマト君じゃないか!どうした?」
「例のダンジョンなのですが……」
「なに、そんな環境なのかね!」
「ですが、魔物の襲撃があるかもですので、当面は内緒でお願いします」
「そうだね。今は町の拡張工事もしているし、あまり人を動かしたくない」
「落ち着いたら公開しますので。それまでは内緒でお願いします。」
「わかったよ。君も長になるべき時が来たんだね。」
「そんなんじゃないですけど。それでは!」
おっさんの家を後にして、最後の目的地へと向かう。
「こんにちわ、エステルさん。馬が欲しいのですが。」
「あら、ヤマトさん。馬ですか?」
「騎乗用の馬が欲しいのですが、手に入りますか?」
「はい、大丈夫ですよ。何頭必要でしょうか?」
「ひとまず1頭で大丈夫ですが、追加で5頭お願いすると思います」
「分かりました。すぐに用意させましょう。お支払いは……」
「では、また来ますのでその際に支払います。」
「あ、それとですね!」
「はい、なんでしょうか?」
「特に技能の無い奴隷って今は買えますか?」
「それは少し厳しいですね。町の拡張工事の労役についてますので」
「それなら仕方ないですね」
財布を忘れるという珍事件を起こしながらも、町での用事は終わった。
急いでダンジョンへと戻り、顛末をシャルに話す。
「そうね、私が居ないと買い物は出来ないわね」
「そうなんだよ。普段から一緒に行動してるから、うっかりしてた」
「貴方らしいと言えばらしいわね」
そんな話をしていると、鍛冶師の3人が駆け寄ってくる。
「ヤマト様、大変です!!」
「何が大変なんだ??」
「2階で試しに採掘をしました。鉄鉱石、黒鉄鉱石が見つかりました」
「ということは、ここで鍛冶が出来るのかな?」
「はい、問題ありません。設備が必要になりますので、少し費用が掛かりますが。」
「それは問題ない。となると、住むことも考えていかないといけないね。」
そんな話をしていると、パトリクから連絡が入る。
「パトリク、何かあったかい?」
「リーダー、問題です。メンヒウの町から使者が来ていまして、盗賊退治に手を貸して欲しいと言われています。」
「また盗賊?あの洞窟なのかな?」
「はい、そうだと思います。警備のパーティーは2パーティー送りますので、向かって頂けませんか?」
「了解。すぐに向かうことにしよう。」
「シャル、皆を集めてくれ。問題発生だ。」
「わかったわ。すぐに集める。」
メンバーが集まったところで、事情を説明する。
「また盗賊なんですね」
「また盗賊か」
そんなことが聞こえてきそうな顔はしているが、口には出さない5人。
防護柵を回収していると、鍛冶師の3人まで何事かと集まってくる。
事情を説明すると、一緒に行くと言う。ありがたい話だ。
出発の準備をしていると、パトリクの送ってくれた警備部隊も到着する。
「じゃあ2~3日で戻ると思うから。戻るまで宜しく頼む。」
馬車を走らせ、メンヒウ砦を目指す。日も暮れて暗くなってきた。
「リーダー、今日は慌ただしいわね」
シャルは笑っているが、笑い事ではない。
「確かに忙しいが、今回はちょっとしたチャンスだ」
「え?どういうこと?」
「技能無しの奴隷が全て町の拡張工事に取られていて、ダンジョンの開発に必要な人手が足りないんだよね。」
「あ~なるほど。今回は労働力として確保するのね。」
「そうなんだ。だから今回はソフトに取り調べしよう」
「そうね。わかったわ」
シャルが苦笑しながら答える。流石にアレをやると労働力にならないだろう。
メンヒウ砦に到着し、連絡が来ていたのかすぐに中へ通される。
「クリス、偵察をお願いできるか?」
「はい、行ってきます」
「今回は労働力として確保したいので、出来るだけ無傷でお話まで済ませたい」
「了解です。相手の規模を探ってきます」
クリスを偵察に送り出し、シャルの取り出したシフト表を何故か一緒になって確認している。
「シャル、この目印のついた日はなんだ?」
「子供が出来やすい日って言われてるけど、どうなのかしら?」
しかしその目印の付いた日は3人ともに重なっており、過労が心配される。
というか、いつの段階で話すかが問題になるんだよな。
「いや、このスケジュールは流石に辛いと思う」
「じゃあここを変更して、この部分を変えて」
シャルの提案を見ていると、何故か1日2人だったのが、1日3人になっている。
「いや、これは流石にきついと思う。あとこの名前が書かれていないのは何?」
「ああ、それはクララとオクタビアよ。一緒に戦う仲間だから、仲間に入れようと思って」
「その解釈は絶対におかしいと思うぞ!」
そんな話をしていると、クリスが偵察から戻ってくる。
「今の段階で馬車2台、洞窟の中は20人位です。まだ夜ですので、明日の朝には増えている可能性もあります。」
「なるほど、明日の夜明けに到着する感じで進めよう。明日は早いので寝よう。」
シャルが不満そうな顔でシフト表を畳んでいる。
「リーダー、起きてください」
クリスに起こされて、盗賊退治の準備を始める。
まだ薄暗い中、通い慣れた洞窟への道のりを進む。
いつもの待機場所に馬車を止め、クリスが麻痺草の玉を持って洞窟の中に入っていく。
「何度もこれをやると、人間と魔物の境目が分からなくなるわね」
シャルが言う通り、どっちが魔物なのか考えてしまう。
クリスが洞窟の中から戻ってきて、状況を伝えてくれる。
「一番奥にいつもの戦利品があります。被害者と思われる人は見当たりません。中にいるのは男が10人、女が13人です。」
「ありがとう。2時間後にまた突入することにしよう。」
「少し気になることがあります。」
「なんだろう?言ってみて」
「寝床で空いてる場所が多くありました。もしかすると、帰ってくるかもしれません。」
「それは慎重に進めないと危ないな。」
鍛冶師達にも武器を渡し、馬車で待機してもらうことにする。
「そろそろ時間です。」
「シャルは入り口で索敵をしててくれ」
「わかったわ」
「よし、じゃあ行こう。」
洞窟の中に入り、ロングスピアの石突で寝ている盗賊達を突いて回る。
反応がないというか麻痺して動けないのか、大丈夫そうだ。
奥の男から順番に後ろ手に縛り、洞窟の入り口へ引きずり運んでいく。
その時、男の服装にある違和感を覚える。
「この服ってパール王国の国軍が着てる服に似てないかな?」
「本当ね。確かに似てるけど、なんか違うわよね」
まあいいか、と残りの作業に取り掛かる。
全員を回収するまでに戻ってくる盗賊はおらず、クリスの案で寝床だけはそのままにする。
鍛冶師と協力して馬車に盗賊達を積み込み、砦へと向かう。
砦で防護柵を展開して、いつもの手順で柵へと繋いでいく。
「リーダー、戻ってくるかもしれませんから、近くで様子を伺っておきます」
クリスが引き続き偵察をしてくれるそうだ。
「助かるよ。見つからないように気をつけて。」
「はい、行ってきます」
馬車から盗賊達を降ろし終えた頃、砦の警備兵が様子を見にきた。
「ヤマト様、前回もですが盗賊は本当に多いんですね」
「そうなんだよ。嫌になるよね。ところでこの服って見覚えはないかな?」
疑惑の男を指差し確認をお願いする。
「この服は……国軍……いや、違う、どこかで見た記憶が。この服は国境警備隊ではないですか?」
「国軍と服装は違うのかな?」
「はい、国境警備隊は近衛騎士団の管轄になりますので、服装は異なります」
「…ということは面倒くさい?」
「はい、物凄く。」
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名前:ヤマト
職業:狩人A
所持P:16,150P
冒険者ギルドA -P、商業ギルドA -P
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