第41部分
波乱万丈な日々が過ぎているが、朝はやってくる。
「リーダー起きてください。商業ギルドの方が来ていますよ!」
叩き起こされて食堂へと急ぐ代弁者A。
「すいません、お待たせしました。って、これは凄い人数ですね。」
「あの、買われたのはヤマト様ですが……」
困惑するギルド職員は放置して、ちゃちゃっと手続きを終わらせる。
「よし、今日から主人になるヤマトだ。まずは空いてる席に座ってくれ。遠慮する場合は命令するだけなので、座って欲しい。」
奴隷達は何事かと挙動不審に席につく。
「まず最初にこれは約束することを伝える。約束することは衣食住の保証。体調を崩したり、病気で休むことがあってもこの保証は変わらない。」
ザワザワとする奴隷達。パトリクが落ち着かせ話を再開する。
「ご主人様、与えられる仕事が厳しいから保証があるのでしょうか?」
それは確かにごもっともな意見だ。
「仕事に関しては、当面は稼げるだけ稼ぐ流れでいい。1日に何時間働けといったものはない。仕事が見つからない日は家の周囲の掃除でもしてくれたらいい。」
最初以上にザワザワしてしまう。パトリクが会話に割り込み話し出す。
「村の拡張工事がそのうち始まると思う。それまでは休んでもよいという命令だ。」
これには奴隷達も納得したのか、ザワザワはなくなる。
「身分の保証の話は終わり。続いて聞きたいことがある。奴隷になった経緯を話してもいいという者が居たら手を挙げて欲しい。居なくても罰は与えたりしない。」
そうすると、一人の男性が手を挙げた。
「ご主人様、年長者の私が話しましょう。」
そうやって語り始めた男性の話は悲惨であった。
男性の出身はこの国の遥か南。国の名前はヤムン王国といったそうだ。
男性は鍛冶師をしており、王都にある武器屋に武器を卸す程度の腕があったそうだ。
しかしその王都がスタンピードに襲われる。ヤムン王国は前年まで北にあるマナト王国と10年近い戦争を続けていた。戦争は決着が着かないままの消耗戦。和平は結んだが、機能しておらず、国内は荒れていた。そこに2つのダンジョンから同時にスタンピードの群れが王都を襲う。消耗に消耗を重ねた王国に防衛力はなく、王都は陥落した。
そしてスタンピードが収まると同時に周囲の国から攻め込まれ、国は滅亡した。
ここに居る全員と言っていいほど、ヤムン王国の元国民。
「なるほど、辛い話をさせてしまい申し訳ない。ただ、これだけ多くの奴隷が存在している謎は解けた。感謝する。」
「では、鍛冶師の3人以外は宿舎へ移動してくれ。慣れない生活の初日だ。今日は休暇として休みを取って欲しい。」
そう伝え、パトリクに案内を任せ鍛冶師の3人と向かい合う。
「先に言うが、害を及ぼす気持ちはない。武器を取り出すが、見て欲しいだけだ。いいかね?」
3人が頷くのを確認して、サーベルとロングスピアを取り出す。
「この2本は見ての通り強化されている。あと何回強化できると思う?」
「はい、サーベルが残り5回、ロングスピアが残り3回ですね。」
「ではロングスピアを4回強化したらどうなる?」
「+10から+11にしたいというお考えですか?」
「いや、そうではなく、試した結果どうなるか?を鍛冶師の勘という奴を聞きたい。」
「鍛冶師の常識では+10が限界と言われています。それを超えるのは人間が立ち入ってはいけない領域とも言われています。」
「では過去にその領域に立ち入った者の話はないのだろうか?」
ゆっくりと武器を手に取り、アイテムボックスへと仕舞う。
「ご主人様、その質問には鍛冶師として答えることが出来る者はいません。立ち入ってはいけない領域の話はタブーとされています。」
「なるほど、では私が鍛冶の技能を取得して立ち入れば問題無いかもしれないね。決して鍛冶を軽く見ている訳ではないよ。可能性の話。」
「鍛冶師が領域を踏み越えてしまうと、鍛冶の腕を失うとも言われています。我々は止める立場にはありませんが、おやめ頂く様、お願いするだけです。」
「気持ちは分かった。今日はこれまで。私は鍛冶に詳しくない。例えばこの敷地に鍛冶設備を備えるとしたら、どの程度の面積と費用が必要になるのか、確認出来る範囲を明日からでも調べてみて欲しい。」
「それは、私達に武器を打てということでしょうか?」
「武器はまずは欲しい。だけどそんなに大量に武器は必要ない。数量は決めるので、その数量を超えた後は鍛冶の研究をして欲しい。」
「研究??」
「そう、規格を超えた武器が作れないか試して欲しい。必要な費用や材料があれば用意しよう。魔石も小~中は用意できる。」
「ご主人様は何をお求めなのでしょうか?」
「規格を超えた武器、規格を超える鍛冶能力かな?やってみて欲しい。」
「はい、それでしたら鍛冶師の腕は失いませんので、ご命令通り行います。」
パトリクは既に戻っていたので、宿舎への案内を頼む。
「リーダー、明日の朝は夢診断と本診断ですね。」
「間違ってはないけど、代弁者をそういう風に言うなよ。」
リンマも少し余裕が出来てきたみたいだ。
「リーダー、もしもの話なんですけど。」
「もしもは良くない。現実になる。」
「全員が代弁者だったらどうしますか?」
「代弁者保護施設…と看板でも出すかな…」
「冗談はよくないですよ?」
「正直、代弁者は奴隷なんかではなく、導く存在だ。彼ら彼女らが導ける環境を作るしかない。」
「…と言いますと??」
「新規で村でも作って、じゃんじゃん奴隷を買うか移民を受け入れるしかないな。」
「そうなりますよね……」
お通夜のような状態になった時、おっさんがドアを開ける。
「ヤマト君、お待たせしたが馬車が到着だ。これで行きたい場所に旅が出来るぞ!」
おっさんがドヤ顔で馬車の到着を告げる。
「おお、馬車が遂に!」
現れたのはガッチリした外観の4頭引きの馬車が2台。
ふと思う、馬の収容は大丈夫なのか?と。
入り口でワイワイしていると、新人の奴隷20人も何事かと集まってくる。
おっさんと受け取りの書類関連のやり取りをして分かれる。
「リーダー、どちらの馬車を使われますか?」
パトリクから聞かれる。
2台の馬車を引いている馬をチラチラと見てみる。
手前にあった馬車の前側を引いている馬と目があう。
「馬ってナデナデ出来るもんだろうか?」
「はい、驚かせないようにゆっくり触れば大丈夫ですよ。」
パトリクに教えて貰ったので、馬をゆっくりナデナデしてみる。ほう、いい感じではないか。
「奥まで突っ込んで、馬を厩舎に移動させてくれないかな。使う馬車はこちらの馬車にするよ。」
パトリクが苦笑しながら馬車を移動させていく。自然と奴隷の中から何人か馬を厩舎に移動させる手伝いをしてくれる。うん、奴隷だけど奴隷じゃないんだけどね。
厩舎に繋がれた馬車を引く4頭を順番にナデナデをして、疲れた心を癒やしておく。
「これだけ一気に馬が増えると、番犬にグレーウルフでも欲しくなりますよね。」
パトリクが何気に冗談を言ってくる。
「いや、折角ならグレーウルフリーダーをどーんと置きたいね。」
冗談には冗談で返してみる。
「あれ?リーダー、冗談と思ってます??」
????
「狼系の魔物は使役できますよ。1~2匹でしたら狼でも維持はそこまで大変ではないですから。」
「そうなんだ。正式な技能名は分かる?」
「いえ、わからないです。定期的に商業ギルドに行って確認しておきましょうか?」
「そうしてくれる?」
「了解しました。」
明日は馬車の試運転の日だ!!
☆☆本日のお仕事☆☆
魔石(小)残280個-入手0-使用0個(残り280個)
魔石(中) 残145-入手0-使用0(残り145)
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名前:ヤマト
職業:狩人A
所持金:30,233,500G
所持P:9,150P
冒険者ギルドB 150/10000P、商業ギルドB 150/10000P
E強化短弓 Eサーベル Eハードレザーセット Eアイテムボックス(中)
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