第16部分
翌朝、奴隷を連れて来たギルド職員から思いがけない情報を耳にする。
「ヤマトさん、この前のスタンピードから日数はあまり経過していませんが、村の南の畑周辺にスモールボアではなくラージボアが増えている情報があります。」
「魔物の異常発生はそんなに早いペースで発生するものなの?そんなにハイペースで異常発生してたら、村長も寝る時間が無いんじゃないかな?」
ガチャ「ヤマト君、寝る時間が無いのだ。」
おっさんが喋りながら家に入ってくる。エスパーかよ。
「戦闘可能な者を集めているんだ。ヤマト君、またお願いできないか。」
「村が壊滅することは避けたいですので、協力はします。ただ、今回はこの家を守る人員が必要になるので、動けるのは私のパーティのみです。」
パトリクは何人かの有望な後輩を家に連れてきて、訓練している。ただ、実戦経験の浅い彼らを異常発生にぶつけるのは避けたい。」
「そうだな、クリスのご両親も居ることだ。家の護衛を残すことに異存はない。」
「まだ確定ではないが、警戒しているので村の周辺でおかしなことがあれば、すぐに知らせて欲しい。出来たら南の畑がある周囲の探索をして欲しいと思っている。前回のスタンピードの損害もあり、今は戦闘可能な者が少ないのだ。頼む。」
おっさんのお願いは断る訳にはいかない。
「パトリクをリーダーとしてこの家の防衛を任せるよ。奴隷の皆は逃げたいなら逃げてもいい。クリスパパとママも不安でしょうから、隣町に逃げて頂いても構いません。」
しかし、どこに行ってもスタンピードの驚異があるこの世界、そうそう簡単に逃げることはしない様だ。パトリクに家から出るなと厳命をして、門や壁の破損箇所を応急修理してもらうことにした。
やる事は決まった。今回は南門は閉鎖しているということで、東門から村の外へと向かう。
「今回はビックボアなんですね。でも、グレーウルフに比べて一つだけ良い点があるんです。」
南の畑に向かう途中、シャルから話しかけられる。
ここに来て良い知らせでもあるのか。それは一体何だろう?
「ビッグボアのお肉はとても美味しいことです!」
確かに良い情報だけど、今はどうでもいいかな。
「畑周辺にいくつかのビックボアの反応がありますが、他の冒険者が対処している様です。私達は森へ入るのが良いかと思います。」
クリスから索敵結果が伝えられる。
「森に入ろう。アイテムボックスはリンマに背負って貰う。シャルはリンマの護衛を。フェルナンドとアクセルは牽制を中心に動いてくれ。」
「「「「「了解!!」」」」」
森へと分け入っていく。クリスは隠密を発動し、先行して偵察を開始する。
クリスがビックボアの居場所を掴み、戻ってくる。
「警戒してか、近づくと逃げられます。スモールボアと同じ様に餌で誘い出してみましょうか?」
「でも、餌は持ってきてないよ。一回村に戻らないと。」
「いえ、私が走って村に戻りますので、皆さんはこちらでお待ち下さい。」
そう言い残して、クリスは走って村へと戻っていく。
ビックボアの気配はたまに感じるものの、確かに様子を見にくるだけだ。
シャルに索敵を継続してもらい、リンマ、フェルナンド、アクセルの3人と話をする。
「リンマが居るとこで話す話題ではないかもしれないけど、フェルナンドとアクセルの好みって真逆だよな。」
今朝の契約の時を思い出し、無茶振りをしてみる。急いで家から出たから、紹介もしっかりできていないけど、パトリクが上手く仕切ってくれるだろう。
「フェルナンドは大きなほうが好みで、アクセルはスマートなほうが好みみたいですね。」
リンマは参戦してくる様だ。
「警戒に…」「シャルの護衛を…」と逃げようとする2人を引き止め、もう少し踏み込んでみよう。
「それで2人はそのうち結婚はするの?結婚する前に解放はするから、前もって言うんだぞ。」これには黙って頷く2人。
「結婚はパトリクさんが結婚されてからですね。こればかりは先輩を優先しないといけませんから。」
よくわからん上下関係があるみたいだ。
「パトリクの前にリーダーの結婚が先でしょう。クリスが戻ります。」
シャル索敵レーダーからお知らせが入る。楽しい時間は終了のようだ。
餌になる傷んだ果物や野菜屑の入った袋を抱えてクリスが戻ってくる。
「では餌を置いてきますので、ここでお待ち下さい。」
餌を置きに行き、クリスが戻ってくる。餌はギリギリ見える位置にある。
最初は警戒しているビックボアも、餌の魅力には負けて森の奥からどんどん出てくる。
どのタイミングで攻撃したものか悩む。
「クリス、流石にあの群れに切り込むのは無謀だろうか?」
「いえ、魔物としては十分に対処できますので大丈夫ですが、今の状況だと一気に逃げられる可能性のほうが高いです。」
となると、餌から遠い場所に矢を撃ち込んで追い込むしかないか。
「クリスは餌の右奥から餌に向かって矢を撃って。私は左奥から撃つから。シャルはこっちに逃げてきた奴の処理をお願い。フェルナンドとアクセルはリンマのガードで。」
作戦を決めて行動開始。殲滅力はシャルがトップクラスなので、今回採用する。
連射は使わずに、クリスと一緒に矢を放ち、ビックボアの群れをどんどん追い込んでいく。
「リーダーそろそろ動きますね。」
シャルが大太刀を手に持ち、群れに突っ込んでいく。
正面からは剣を両手にもった人間が迫り、逃げようと後ろを見るとどんどん仲間が倒れている。自分なら味わいたくない光景だ。
シャルの大太刀によりまとめて吹き飛ばされるビックボア。群れは混乱してどちらに逃げるかの思考が停止しており、なんとかシャルを威嚇しているだけの状態である。
3人が戦闘をしている時、リンマは盾2人に「リーダーが全く部屋に呼んでくれない」と愚痴をこぼしていた様だ。まぁそれは仕方ないと思う。
群れも無事に壊滅され、盾2人とリンマに回収作業へ向かわせる。
「もしかして、大きな群れが移動してきただけなんだろうか?」
素朴な疑問をシャルとクリスにぶつけてみる。
「確かに凶暴化までは至っていませんので、ただの大きな群れとも言えますね。」
シャルは同意見の様だ。
「前回はウルフでしたけど、今回はボアですので凶暴化するタイミングが違うかもしれません。数日様子を見たほうがいいかとは思います。」
クリスの意見も仰る通り。
餌はまだ残っているので、また寄ってくるかこの場所で待機してみようという話になる。
待機中に皆が話していることが聞こえてくる。
「奴隷って幾らで買ってるの?え?1人150万G??あ~でも、その人の人生を買うようなもんだから、150万Gでも安いと言えば安いね。」
そう、人生をお金で買えると考えたら安いもんだよ。良いか悪いかは別だけどね。
「次の群れが接近しています。群れの規模は先程の群れより小さいです。」
2回目の群れも警戒しており、近づくまですこし時間が掛かった。
シャルが○○無双を始めた頃、他のパーティがたまたま通りかかる。
戦闘が終わるまで少し離れた場所で様子を伺っており、ある程度落ち着いた頃に話しかけてきた。
「こちらも餌で集めて倒しているんだね。あ、アイテムボックス持ってきてるんだ。これだけ多いと正解だよね。とろこで、あのおねーさん、なんで両手剣を片手で振り回してるの?見てるとビックボアが不憫に思えてくるよ。」
といった話を少しだけ交わし、西方向へと消えていった。
回収が終わり戻ったシャルに聞いてみる。
「両手剣を片手で持って双剣にする気持ちってどんな感じ?」
「え~と、この世の何かに反している気はしますが、爽快です」
そっかそっか、何かに反してる感覚はあるんだ。
「まぁでも、リーダーとクリスの速射も私からすれば十分におかしいです」
やっぱりそうなんだ。
餌も無くなったので、おっさんの家に報告にでも向かうか。
森から村へと戻り、解体処理をメンバーに頼んでおっさんの家へと向かう。
「こんにちわ。森の調査から戻りました。」
「おかえり。無事で何よりだ。森の様子を教えてくれ。」
魔物は確かに群れていたけど、グレーウルフのように好戦的ではなかったこと、
餌で誘き寄せてないといけない位なので、凶暴化は進んでないかと思うこと、を説明。
「なるほど、単純に大きな群れが移動してきただけの可能性もあるのか。でも、前回のこともあるから、落ち着くまで警戒に協力して欲しい。頼めるかな。」
「それは無論協力しますよ。そこで1つ提案があります。」
・ギルドでパーティは把握していると思うので、担当する場所を決めて警戒したい
・朝から夕方まで戦闘する場合、餌が無くなるので補給部隊を編成して欲しい
・考えたくないが、村が襲撃されることを考えて、防壁と門の強化もしたほうがいい
「担当する場所を分ける案には賛成だ。補給部隊は経験の少ない冒険者に村からの依頼として出すことにしよう。防壁の強化だが、明日には隣町から応援の部隊が到着するので、まずはそれから開始しよう。」
おっさん、結構柔軟なんだよな。
「では、明日は朝に冒険者ギルドで担当場所を聞いて森に入るようにします。」
「うん、よろしく頼む。」
おっさんの家を出て、今日は武器屋へと行ってみる。
「ヤマトさんいらっしゃい。森の様子はどうなの?」
「う~ん、まだ確定とは言えない感じですね。凶暴化してないように見えますし。」
という情報交換の後に聞いてみる。
「新品でも中古でもいいんですが、アイテムボックス(箱中)はありませんか?」
「前回のスタンピード騒動もあって、中古品が結構入ってるよ。何個欲しいの?」
・自宅の食料保管用
・自宅の食料以外保管用
・教会の孤児院用
・解体処理用
・予備
「箱中は5個あれば欲しいですね。あと他に何か面白い装備か道具があれば見せて下さい。」
「了解、ちょっと待っててね。」
・アイテムボックス(リストバンド)(中)1,000,000G 重量無効、時間経過無効
・野営用防護柵の魔道具 500,000G 効果範囲円形で5~20メートル
・解体のアイテムボックス(箱大)1,000,000G 重量軽減、時間経過無効
の3つのアイテムを見せてくれた。中古のアイテムボックス5個で50万Gなので、リストバンドか防護柵かなぁ。箱中があるから、リストバンドはやめておこう。
「では中古のアイテムボックスを5個と野営用防護柵を貰います。」
「わかりました。ありがとうございます。」
5個のアイテムボックスは1個に纏めることで持ち帰ることができた。中身が入っていない場合に限り、アイテムボックスINアイテムボックスが出来るとのこと。
自宅に戻り、アイテムボックスをパトリクに渡す。教会にはこの騒動が落ち着いたら届けてもらおう。
パーティーのメンバーを全員呼んで、村にある空き地へと向かう。
思ってる通りの機能があれば、ビックボアを狩るのに有効なはずだ。
「ビックボアとの戦闘で一つ問題になっているのが、一網打尽まではいけてないってことかな。やっぱり逃げられる部分がある。今回の騒動を収めるには徹底的に掃除しないといけないから、方法を考えてみた。」
そう説明してクリスに魔道具をそっと渡す。
「ここは広いけど試しになので、少し離れて5メートルで展開してみてくれ。」
シャルに魔道具の使い方を説明して展開してもらう。発動と同時に地面から生える柵。
試しに柵に蹴りを入れてみるも、壊れる気配はない。
「中心になる場所に餌を置き、離れた場所で待機する。柵の大きさは最大の20メートルで使おう。出入り口はどの大きさでも1箇所なので20メートルでいい。クリスの任務は餌に群がってるビックボアに隠密で接近して、この魔道具を設置してくること。できそう?」
ビックボアの巻き網漁をしようという作戦である。
「はい、問題ないですね。明日、試してみましょう。」
秘密道具のテストも終わり、自宅へ戻り食事にする。
「ビックボアは結局何匹居たの?」
「えっと、小さいのも居ましたけど全部で約200ですね。」
「相変わらず狩る数がおかしいよね。」
「はい、常におかしいです。」
そんな話をしながらパトリクと食事をする。
明日もまたビックボアハンターだな。
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名前:ヤマト
職業:村人A
所持金:903,500G
所持P:10,650P
冒険者ギルドE 500/1000P、商業ギルドD 0/3000P
E強化短弓 E小型鉄杭 Eハードレザーセット Eアイテムボックス(中箱)
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