↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Operation PERSIMMON  作者: lemonia
LEFTOVER

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/41

第六章 LEFTOVER 第二話 残り物


「もう少し見る」


 誰も動かなかった。


 蜂はSSG 08のスコープへ目を戻した。


 栗は伏せたまま、西側のフェンスを見ている。


 臼は双眼鏡を構えた。


 牛はタブレットと施設を交互に見た。


「いつまで見るんじゃ」


「分からない」


 剛は答えた。


「分からんのか」


「分からない。でも、まだ動いてる」


 南側の門が開いた。


 白い四輪駆動車が一台出た。


 運転手と助手席。


 後ろに二人。


 牛が画面に指を滑らせた。


「施設管理じゃな」


 車は南へ走り、やがて見えなくなった。


 十分ほど経った。


 今度は小型のトラックが出た。


 三人乗っていた。


「整備」


 牛が言った。


 蜂がスコープを動かした。


「北東、まだ一人」


「もともと三十二だったな」


 剛が言った。


「見えた範囲でな」


 臼が答えた。


 待った。


 風が吹いた。


 乾いた草が倒れ、戻った。


 誰も喋らなかった。


 また門が開いた。


 二人。


 今度は徒歩だった。


 外に停めてあった車に乗った。


 門を出る。


「二十三」


 臼が言った。


「たぶん」


 栗が双眼鏡を下ろした。


「……なるほどな」


「何が」


「今入ってたら、あいつらまで相手だった」


 剛は答えなかった。


 門を見た。


「まだ出る」


     *


 猿田が建物から出てきた。


 蜂が追った。


 スコープの中で猿田が男と話している。


 男が頷いた。


 二人が別れる。


 猿田は別の建物へ入った。


「何してる」


 栗が訊いた。


「人を動かしてる」


 蜂が答えた。


「守り固めてる感じか?」


「違う」


 猿田がまた出てきた。


 今度は三人いた。


 一人が車へ向かう。


 もう一人が倉庫へ入る。


 猿田だけがその場に残った。


 腕時計を見た。


「撤収じゃな」


 牛が言った。


「逃げるのか」


「なら本人が先に準備する」


 蜂が言った。


 剛は猿田ではなく、施設全体を見ていた。


 出ていった車。


 残った車。


 人。


 建物。


「人も片づけてる」


 剛が言った。


 栗が見る。


「何のために」


「分からない」


 一般のGHSC要員が減っている。


 代わりに残っている人間の顔ぶれが揃い始めていた。


 栗を監視していた男たちと同じ系統。


 猿田直属。


 作業棟と、その奥にある小さな建物の周辺だけ、人数が減らない。


 剛は灰色の車を見た。


 観測を始めたときから、そこにある。


 GHSCの管理車両一覧にはない。


「牛」


「見とる」


 牛がタブレットを操作した。


「会社の車じゃない?」


「少なくとも、ここの管理車両じゃなさそうじゃの」


「誰のだ」


「知らん」


 牛は車を見た。


「じゃが、車だけ勝手に来やせん」


 剛はその先を見た。


 低い建物があった。


 倉庫というより、昔の管理棟に見える。


 窓は少ない。


 入口に二人。


 他の建物より小さい。


 なのに、そこだけ人がいる。


     *


 さらに待った。


 一人が管理棟から離れた。


 別の一人が代わりに来た。


「交代した」


 剛が言った。


「そうね」


 蜂は見ていた。


 また時間が経った。


 今度は男が別の建物から出てきた。


 手に何かを持っている。


 袋。


 ボトル。


 管理棟へ入った。


「食いもんか」


 栗が言った。


「水も」


 蜂が答えた。


「何人分だ」


 剛が訊いた。


「一人」


 蜂はしばらく入口を見ていた。


「たぶん」


「中、見える?」


「見えない」


「じゃあ、何で一人だ」


「持って入った量」


 剛はもう一度、灰色の車を見た。


 車。


 管理棟。


 見張り。


 食事。


「残り物って、人か?」


 栗が言った。


「そう見えるの」


 牛が答えた。


 LEFTOVER。


 十七日間、画面の中にあった言葉だった。


 名前ではない。


 顔でもない。


 処理されずに残った何か。


 それが今、あの建物の中にいる。


 剛は猿田を探した。


 いた。


 管理棟から離れた場所で、直属の男と話している。


 猿田自身は管理棟へ入らない。


 だが、その周囲から人を外さない。


「消すのか」


 臼が言った。


 蜂が少し間を置いた。


「たぶん」


「なら急いだほうがいい」


 栗が言った。


 剛は答えなかった。


「剛」


「待って」


「待って殺されたら終わりだぞ」


「まだ殺さない」


 栗が剛を見た。


「なんで分かる」


 剛は管理棟を見た。


「殺すだけなら、ここまで人を減らす必要がない」


 誰も言わなかった。


 剛は続けた。


「まだ何かを必要としてる」


「何を」


「分からない」


 猿田が何を欲しがっているのか。


 情報。


 物。


 場所。


 名前。


 それは分からない。


 ただ、殺すだけならもう終わっている。


 わざわざ人を減らし、直属だけを残し、見張りを置き、食事まで与える必要はない。


 栗が管理棟を見た。


「生かしておく理由がある」


「ああ」


「いつまでだ」


「それも分からない」


「分からんことばっかりじゃの」


 牛が言った。


「分かってることもある」


「何じゃ」


「まだ生きてる」


 牛は鼻を鳴らした。


     *


 午後の光が傾いた。


 影が長くなった。


 また一台、車が出た。


 施設に残る人数は二十を切っていた。


 蜂が猿田を追い続けている。


「また時計見た」


「何回目だ」


「三回」


 猿田が男を呼んだ。


 短く話した。


 男が駐車場へ走った。


 一台の車を南側の門に近い位置へ移す。


 エンジンは切らなかった。


「今夜までじゃな」


 牛が言った。


「何が」


「ここにおるんが」


 栗が猿田を見る。


「今日中に出る?」


「たぶんの」


「なら時間ないぞ」


「ある」


 剛が言った。


「まだ」


 栗が横目で見た。


 何も言わなかった。


 剛は人数を数えた。


 出ていく者。


 残る者。


 入口に立つ者。


 管理棟を見る者。


 猿田と直接話す者。


 同じ服を着ていても、動きが違った。


「一般は?」


「今のでだいぶ抜けたの」


 牛が答えた。


「直属は」


「九。たぶん」


 蜂が言った。


「屋根の一人を入れて?」


「入れて」


「管理棟に二」


「その二人も直属」


 栗が西側を見る。


「巡回は三人。間が空いてきた」


 臼が言った。


「南に四」


「車?」


「人」


 剛は頭の中で置いた。


 北。


 南。


 西。


 建物。


 人。


 猿田。


 管理棟。


 LEFTOVER。


 牛は別のものを見ていた。


 道路だった。


 南側の門から延びる舗装路。


 東側の開けた土地。


 西側の切れたフェンス。


 施設の裏へ回る細い道。


 停められた車。


 古い設備。


「何見てる」


 剛が訊いた。


「道」


「さっき見ただろ」


「ただ見るんと、どう使うか考えるんは違う」


 牛はそれだけ言った。


     *


 管理棟の扉が開いた。


「動いた」


 蜂が言った。


 全員の視線が集まった。


 男が一人出てきた。


 猿田直属。


 振り返る。


 もう一人出た。


 二人の間に人影があった。


 男だった。


 年齢までは分からない。


 歩いている。


 だが遅い。


 片腕を一人に掴まれていた。


 もう一人が背後についている。


「見える?」


 剛が訊いた。


「顔は無理」


 蜂が答えた。


「怪我してる?」


「たぶん」


 男は十数メートル歩かされた。


 別の建物の前で止まった。


 何かを言われた。


 首を振った。


 男の腹へ拳が入った。


 身体が折れた。


 倒れなかった。


 二人に挟まれ、また管理棟へ戻された。


 扉が閉まった。


「いたな」


 栗が言った。


「LEFTOVER?」


「たぶん」


 蜂が答えた。


 残り物。


 人間だった。


 少なくとも、まだ。


 南側の門が開いた。


 また車が一台出た。


 臼が数えた。


「十七」


「直属は?」


「減ってない」


 牛が言った。


 残った人間の比率が変わった。


 一般のGHSC要員は、ほとんどいない。


 猿田はまだいる。


 LEFTOVERもいる。


 栗が剛を見た。


「今度こそ?」


 剛は施設を見た。


 入ることはできる。


 だが、五人で十数人を一度に相手にする理由はなかった。


 剛は牛を見た。


「牛」


「何じゃ」


「減らせるか」


 牛が剛を見た。


 それから施設を見た。


 十七人。


 牛が見ているのは人数ではなかった。


 道路。


 門。


 車。


 建物。


 その間を結ぶ線。


「減らせる」


「何人まで?」


 栗が訊いた。


「そりゃ向こう次第じゃ」


 牛は双眼鏡を下ろした。


「じゃが、一度に全部は相手せんでええ」


「どうする」


 剛が訊いた。


 牛は施設を見た。


「止める」


「何を」


「まず、道じゃ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。