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溺愛されている妹がお父様の子ではないと密告したら立場が逆転しました。ただお父様の溺愛なんて私には必要ありません。  作者: 木山楽斗


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第10話 機を待って

「しかし、驚きました。まさか殺人事件なんて……」

「ええ、私もクレンド様に聞いた時は驚きましたよ。ですが、これで忌まわしき迷宮入りした事件が一つ解決するのですから、喜ばしいことですよ」


 連れ去れた現場にいた警官は、クレンド様が連れて来た警官とそのような会話を交わしていた。

 その警官には、既にバンガルさんの事件のことは伝えてある。先程ペルリナの話も聞いていたし、これで事件を立証できるのは確実だ。


「クレンド様、本当にありがとうございます。お陰でなんとか、お父様を追い詰めることができそうです」

「いや、俺の助力など微力なものだ。君は自らの行動であの親子を助けて、道を切り開いている。ここまで来たのは君の力に他ならない」


 クレンド様は、私に対して称賛の言葉をかけてくれた。

 ただ元はと言えば、クレンド様と話さなければ行動をしようなんて思わなかった。そういう意味において、彼にはやはり感謝するべきだろう。


「心配なのは、ヴェリオン伯爵家の領地のことですけれど……」

「そちらについても、兄上とともに話は進めている。とはいえ、それは簡単という訳でもないな。やはり難しい問題ではある。エヴォート侯爵家が、どこまで介入できるかものか……」

「お父様は、クレンド様と私を婚約させるつもりです。そういった旨の連絡が、そろそろエヴォート侯爵家に行っているのではないでしょうか?」

「なるほど、それならこちらが介入しやすくなりそうだ。父上も反対はしないだろうしな」


 お父様の筋書きでは、ペルリナとロメリアは山賊に襲われて死んだと、なっているはずだ。

 その筋書きは、こちらでもしばらく利用させてもらうとしよう。その状況なら、私とクレンド様の婚約が実現する。その繋がりは、お父様が失脚した後に役に立つ。

 ヴェリオン伯爵家の領地は、エヴォート侯爵家のものとなる。これならクレンド様に恩返しもできるし、一石二鳥だ。


「ならば後は、機を待つだけということになるか……」

「ええ、まあ、情報が漏れるようなことはないと思います。シェリームさん達は信頼できる方々ですし、二人が生きていることは漏らさないでしょう。仮に漏れたとしても、守ってくれると思います」

「……君は、優しい人間だな。あの親子であっても、守ろうとしている」

「それは合理的な理由があるからですよ」

「いや、それだけではないさ……まあ、いい」


 クレンド様は、そこで笑顔を浮かべていた。

 少し不服であるが、私はすぐに言い返すことができなかった。自分が甘い人間であると、実感させられる。

 しかし私にはあの忌まわしきお父様の血が流れているのだから、甘いくらいで丁度いいのかもしれない。そう思って私は、苦笑いを浮かべるのだった。




◇◇◇




「随分と長い間、出かけていたものだな?」

「ええ、手紙にも書いた通り、少し旅行してきたのです。この所色々とあって、疲れましたからね。これはお土産です」

「おお、それはありがたい」


 私は、ヴェリオン伯爵家の屋敷に戻って来ていた。

 しばらく屋敷を離れていたことは、旅行であるとお父様には伝えてある。

 それを疑っているという感じはなさそうだ。お父様は鈍感なので、私の適当な嘘を信じ込んでいるのだろう。


「いや、愉快愉快、そうだ。ペルリナとロメリアのことだがな。どうやら丸く収まりそうだ」

「丸く収まる?」

「ここから出て行った後、偶然山賊に襲われたらしくてな。どうやら二人とも、死んだらしい。ははっ、愉快なものだ。我々を騙していたろくでなしどもには相応しい末路だといえるだろう」


 クレンド様の指示によって、警察からお父様には虚偽の連絡が行われている。

 そちらもお父様は、信じ切っているらしい。ここまで単純な人だとは、正直驚きである。


「お義母様……いいえ、もうペルリナさんですか。彼女はお父様に何かを言いかけていましたが、あれは一体何だったのですか?」

「うん? ああ、それについてはまったく持ってお前が気にする必要がないことだ。これ以上、あの親子のことでお前が心配する必要などはない」

「そうですか」

「ふん、無様に死に絶えたのだろうな。笑えてくる。まさか、山賊なんぞにやられるとはなぁ」


 試しに揺さぶりをかけてみたが、お父様は豪快に笑うだけだった。

 いくら自分を騙していた親子とはいえ、その死を嘲笑うお父様は、最低の人間であるといえるだろう。

 少なくとも、私はその笑みを軽蔑する。やはりこの人とは、一生分かり合うことができないだろう。元々分かり合う気なんてなかったが、改めてそう思った。


「ああ、あの二人が私達のことを騙していたことは、公表するなよ。せっかく死んだんだ。その死を利用させてもらうことにしよう。悲惨な死を遂げた伯爵夫人と令嬢として、世間の同情を誘えるだろうしな。そう意味では、あの二人は初めて役に立ったといえる」

「なるほど……ああ、そうだ。お父様、私とクレンド様の婚約のことですが」

「ああ、それについてはエヴォート侯爵から快く了承してもらえた。お前は本当に良い仕事をする」

「それなら良かったです」


 私とクレンド様の婚約が成立した。その報告を聞いて、私は安心する。

 これで後は、計画を実行に移すだけだ。そろそろお父様には、今までしてきたことへの報いを受けてもらうことにしよう。

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