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最強の戦士。

 どうする・・・?


 ネイキッドは胸の内で、状況を処理しようと努めていた。


 ヴェルグの土塊つちくれを用いた打撃は、それだけでネイキッドに本気の防御をさせるだけの威力があった。


 そして絶対の問題点。


 躱せない。避け切れない。


 巨大化アズマの新しい使い方が、通用しない。



 そんな風にネイキッドが動揺と戦っていた頃。


 ヴェルグは、その心理の全てを読み切っていた。


 足運びが硬い。腕の置き方が不自然。肩に力が入りすぎている。


 ふむ。



 掌打一発。ヴェルグは空を押しただけ。


 それだけで。


ゴ!!!


 ネイキッドは全身を強打され、山肌に体を叩き付けていた。


「・・・??」


 めり込んだ体を起こしながらも、ネイキッドは何を食らったのすら分かっていなかった。


 ダメージは思うほどない。攻撃を素で受けた精神的ショックはそれなりにあるが、痛み、動きを阻害する破損部位はまるでない。


 だが、攻撃が見えず、回避も防御も出来ない。


 このままでは、勝負にならない。


ポン


 と。ネイキッドの心臓は、ちじみ上がった。


「どうした?」


 数百メートルを一気に吹き飛ばされた後やっと立ち上がったという時に、ヴェルグに左肩を軽く叩かれていた。正面から。


 接近に、気付けなかった。


オ!


 とにかくネイキッドは反撃の右熊手をアッパーで繰り出した。最速で、ヴェルグを退かせる。


バキ


「・・・・あぐぁっ!!」


 ネイキッドの右手は、ちゅうぶらりんの状態で止められた。


 ヴェルグの左足が、ネイキッドの右足を踏み付けていたため。この動作で、ネイキッドの右足全ての指を含む10数本の骨が折れた。


「あ・・・がっ!!」


 痛みと混乱の中、ネイキッドを更なる痛打が襲う。


 左肩に置かれていたヴェルグの右手に少し力が入る。と同時、ネイキッドの体は踏まれている右足先を軸に回転。大地に叩き付けられた。


 左肩に攻撃を受けたはずなのに、威力は右肩にまでスライドし、両の鎖骨が折れ、左肩が外れ、叩き付けられた右肩に至っては粉砕骨折を起こしていた。首、背骨までズラされ、呼吸もおかしい。右足首も言うまでもなく、砕けていた。


「は・・・は・・・」


 もう、痛がる余裕もない。


 息を吸い、息を吐く。それだけの動作に、ネイキッドは生命力の全てを注がなければならなかった。


 でなければ、次の攻撃を受けるまでもなく、死ぬ。


 そしてネイキッドは既に戦闘思考を失っていた。多すぎるダメージ量が思考余裕を奪い、本能が生存のための静穏のみを選択。


 完全に戦闘能力を喪失していた。



 空を押したのは、無論「異風同道」。ネイキッドは視界に映る全ての空気に押し込まれていたのだ。そしてネイキッドが叩き付けられた大地にも、実は異風同道がかけられていた。ネイキッドが肩を叩かれていた時、ヴェルグは足から天風を発動、大地そのものを自分の手の内に収めていた。ゆえにネイキッドが打ち付けられた大地はヴェルグの拳のごとく堅く、ネイキッドは押された圧力の全てを身体で受け止めるハメになった。大地にネイキッドがめり込まなかった原因、またあまりに大きすぎるダメージ量も、そのためだ。



 冷たい、感情のない瞳でネイキッドの様子を観察していたヴェルグは更なる天風を発動。天風「見切り」。


 認識終了。敵の戦力はゼロ。生命力減少中。放っておけば、30分以内に死ぬ。


 ヴェルグは集中力を解いた。



 勝負は。


 終わったのだ。




キイン!


 ユーベルの左薙ぎを、攻撃に用いる肩部魔剣を使い切り、受け流す事に成功。そして腰部魔剣を速さだけを考えて攻め込ませ、小魔剣をユーベルの背後に回らせる。


 更に。


ゴ!!


 回避後のユーベル目掛け、自身も突っ込む!!


ヒュッ


 普段なら風切り音のしない選剣が、空をうならせる。剣が荒れているのだ。



 剣王ユーベルは、その音を聞いただけで、勇者アニムの心意を読み終えた。


 離れ離れのネイキッドが心配か。


 先の轟音は、恐らくネイキッドの打撃音ではない。ヴェルグのそれだ。乾いた鉱物の音と湿気のある土の音だった。剣友の天風に違いあるまい。


 ネイキッドに状況を利用するしたたかさはまだない。あいつはどこまでも真っ直ぐに来る。師によく似ている。が、師ほどの強さも器用さも弱さも、まだ持ち合わせてはいない。


 そんな未熟者相手に酷ではあるが、とうとう、ヴェルグが本気を出したのだ。


 もしも1分生き残れれば、褒めてやって良い。


 そして当然、家族は心配するだろうな。


 だから後を追う事になる。



 10分の1となった肉体性能。相手としているのは勇者。敵の振るう得物はこの世に二つと無い秘宝。


 この状況にありながら、剣王の敗北の可能性は、絶無に等しい。


 それを誰より知っているのが、彼の娘であった。



 アニムが魔装を展開しているのに。新しい戦い方を開発し、全力で戦っているのに。


 父は強すぎる。



 仕方ない。



 弱い奴から削ろう。



 この場で最も弱い、魔法王スガモから。

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