新たな律王。
「王都襲撃!?」
その一報はオウザをして顔面蒼白とならしめた。剣国王族との剣の交わり、親交を深めていた穏やかなひと時に、尋常ならざる知らせ。
「急ごう。着の身着のままなら、10分で行ける」
剣士達の回復役を仰せつかっていたハセガワが、オウザに進言する。着の身着のままとは、馬車を置いて、走行で飛ぶ事を指す。荷物を全て置き去りにする事になるが、それはこちらに預かってもらえば良い。問題にはならないはずだ。
魔研からの使者も、限界まで魔力を振り絞ったおかげで気絶してしまった。剣国に看病を頼んで、預ける。
援軍を送ろうという剣王の子息らに厚く御礼申し上げつつ、その申し出を受けた。
賊は3名。だが、それは見せかけである可能性が高い。魔王が表に出ているという事は、この数年で増やしたであろう配下の魔族、魔獣、竜も周囲に配置されているはず。数があれば、勇者や戦士のスタミナを削れるのだから。
必要な武器、道具を馬車から選別していると、剣国側にも魔法使いが飛んで来た。
余裕は、なさそうだ。
使いからのメッセージを受け取ったベリルが、オウザにも内容を教えてくれた。
「オウザ殿。魔国が、勇国からの襲撃を受けている。現在、王都メアまでの侵略を許し、ドロウ殿が戦線に加わった段階で、なんとか膠着状態に持ち込んだらしい」
「・・・・」
オウザは、すぐには応えられなかった。
勇国の動きが早すぎる。今の魔国に侵略価値など、無い。氷漬けの大地を獲って、どうするつもりなのだ。冷蔵庫が足りないのか?
そんなバカな事しか考えられなかった。それほどにオウザの頭はこの事態に困難を感じていた。
1。律国襲撃と魔国襲撃は、同じ意思によるものなのか。つまり、勇国にも魔王の息がかかっていたのか。
人の考えによる動きとは思えない。なぜなら魔国を攻め落とした後は、剣国と律国の合同軍による勇国討伐が待っている。勇国をそのままにしてやるほど、世界は甘くない。
2。これが別の勢力による襲撃であり、あくまで偶然であった場合。
当然、律国の魔軍を追い返した所で、勇国は退かない。そこから改めて魔国へと軍を向ける必要がある。
剣国に至っては、律国と魔国、双方へと武力を差し向けなければならない。条約により、助力を出す必要がある。
結果、律国が受けられる援助は、半分となる。
同じ勢力であるなら、考える必要はない。魔王を倒しさえすれば、魔軍は全軍撤退するだろう。
だが、別なら・・・。
「オウザ。おれが居る。問題ない」
「ヴェルグ師匠」
その声に、オウザは心からの安堵の表情を浮かべた。
そうだ。律国にはヤヨイ王と最精鋭の近衛、それにカザマ将軍が残っているのだ。そこにヴェルグまで加われば、勝利も同然。
「ユーベル。すまんが、魔国は任せたい。必要ならオウザを貸すが」
ヴェルグは魔国への援軍として、剣王の子息ら数十人を想定していた。彼らなら、砲弾を躱すぐらいは出来るだろう。数で劣るために包囲されれば面倒な事になるが、10人以上居る現在、問題あるまい。
そして現地に最も早く向かえるのは、オウザ。空を飛べ、魔国のある程度の地理を把握している。一度は、馬車で国土を横断したのだから。
「いや。お前達は全員で律国に戻れ。この同時襲撃、何か臭い」
剣王はそう言い、ショーティア、ベリルらに魔国への援護を申し付けた。
「首謀者。もしくは指揮官クラスを捕えて、魔国に引き渡せ。そして尋問の答えの全てをもらえ。面倒な事は魔国に丸投げで構わない。その代わり」
「約定により、魔国に敵する勇国は、斬る。ですね?」
「ああ」
ショーティアはちゃんと理解している。
剣国が裏に付いている魔国に侵略を開始したという事は。
勇国は剣国を、舐めている。
許してはならない。
「では、おれは先に行く」
旅支度を整えたヴェルグがオウザに言い残す。
「一応、敵をかき回してみる。オウザ、そこに電撃をあらん限りに撃て」
「了解っす!」
ゴ!
果敢をかけたヴェルグが、空を飛ぶ。
ヴェルグには飛行能力は無いので、地面を蹴って飛んだ上で、異風同道を用いて空を蹴る。その繰り返し。
本気で走ったので、5分で律国王都に到着した。
オウザが帰る5分前、と言った所か。
敵影、無し。消耗した体力は、即座に丸薬で回復。水筒の水で飲み干しながら、王都上空を回る。
そして。
ヴェルグは、終わった戦場に友の死体を見付けた。
冷たい。お前には似合わない冷たさだ。
ヴェルグはヤヨイの氷像に触れながら、兵の生き残りが全く居ないのを疑問に思っていた。
民間人の防衛に当たっている守備兵はどうした?そして敵の死骸が全く無いのは一体?
近衛の死体までがあるこの戦場。まさか魔獣の一匹も倒せなかったとは考えにくい。
敵は、魔王とその側近だけだったのか?
考えていると、オウザらも来た。先行した意味はなかったな。
皆、声も無いようだ。母国の有り様に。
「・・・ヴェルグ師匠」
オウザはようよう声を出して、氷漬けになったヤヨイの前で突っ立っているヴェルグに声をかけた。
「・・・オウザ。王都周辺の見回りを頼む。ハセガワ。魔研に向かい、王都結界修復の協力を得てくれ。サモン。守備兵の下へ向かい、様子を見て来てくれ。イルマ。戦場内の敵、生き残っている味方の確認を頼む」
ヴェルグに感傷に浸っている暇は無かった。
ヴェルグより更に深刻な精神的ダメージを負っているであろう若者達に、思考時間をやってはいけない。考えるのは後だ。
それぞれの任務についた彼らを見送り、ヴェルグは激戦区になったのであろう、勇者大通りを丹念に見て回る。下手をすれば、この地下にトンネルでもあって、急襲を仕掛けたのかも知れない。
その最中だ。ヴェルグが、またも信じがたいものを見付けたのは。
ぺしゃんこになって潰れた死体。内臓や骨がはみ出てはいるが、全てが大地に圧着されて、血溜まりではなく、血の印を押し込んだかのような地面になっている。
その服装には、よく見覚えがあった。
軍服ではない。特別に仕立てた、派手好きのあいつのための戦闘服。見た目は単なるジャケットなのだが、そこかしこに仕掛けがあって、という話を聞かされた。
ヴェルグは、その死体の背をなでる。
「・・・・」
色々。言いたい事があった。
感謝。友誼。
お互いに年を取り、体が自由に動かなくなったら、馬車の旅に出ても良い。その時はイセも、あるいは引退したヤヨイも一緒に。自分達で守った世界を、自分達で守った人々のように楽しもう、と。
ヴェルグは目に溢れる涙を止める必要を認めなかった。
敵が居ない。友も居ない。
「ヴェルグさん」
どのぐらい、そうしていただろう。イルマの声に、ヴェルグは一応顔を拭った。
「ああ」
勇者大通りを裏から一周して来たイルマが報告する。
「敵、生存者、共にゼロ。そして恐らく・・」
「分かっている。戦闘に大きく関わっているのは、魔王とネイキッド。この攻撃痕は、あいつのものだ」
大通りのあちこちに残された、とてつもなく大きく硬いモノで吹っ飛ばされた兵の亡骸。メイストームの死体にも色濃く残っている。
巨大化による攻撃だ。
そして氷像は明らかに魔王の右腕によるもの。
残り1人の正体は依然不明だが。
「ネイキッドが参戦していて、戦略に口を挟める立場に居るのなら。魔軍は既にこちらの手の届かない場所まで逃げている。周辺都市からの増援、それにおれ達。それらを考慮したネイキッドは決して油断せず、確実に事を進める。おれが、そう鍛えた」
まかり間違っても、余勢を駆って長時間戦闘をしてはいまい。この少数でそれは、単なる自殺行為。
「私もそう思います。・・・以下の指揮は、ヴェルグさんが取って頂けますか?」
ヴェルグに指揮権は実は無い。言うなれば、戦士団の顧問に過ぎない。しかし、実績、知名度、実力において、今の律国でヴェルグに並ぶ者はない。
ヴェルグは少し考えて、答えを出した。
「良い機会だ。オウザを王に据える」
「それは・・・」
まだ早い。イルマにはそう感じられる。もう少し、議会の信が確立されてから、とイルマは考えていた。
が、ヴェルグは意に介さない。
「オウザ以外に、リーダーシップを取れて、民からの信を受け止められる人間が居ない。ユーベルにも、了承は得ている」
ヴェルグは己をただの戦士でしかないと自認している。戦時、緊急時ならともかく、民草の安寧を司る働きは、出来ない。戦の終わった今、ヴェルグに出来る事は案外少ない。
「いつの間に」
「一応、おれは剣友なんでな」
珍しく驚きの表情を見せるイルマに、ヴェルグは笑って答えた。
「足りない信は、おれがオウザの命に従う事で補う。イルマ、協力してくれるか」
「もちろんです。私のお仕事なので」
そう言っていつものような態度を決め込むイルマに、ヴェルグは大器を感じた。
流石、剣王候補。世が世なら、ネイキッドの嫁に欲しかったぐらいだ。
未練がましい考えを振り切り、ヴェルグは動く。
「避難している役人らに、民間人の避難先のリストアップを頼まないとな。オウザが帰って来る前に、適当にまとめておくか」
「手伝います」
「頼む」
これは完全に文官の仕事、ではあるが。ヴェルグとて、戦士学校を卒業した由緒正しい律国の武官。まあ、メイストームに付き合って冒険の旅に出たため、正式な任官はしていないのだが。だから、一般兵になる前に兵の教導に関わる事になった。教えながら、自分も学んでいったわけだ。
と思っていると、オウザが帰って来た。
オウザは王都周辺を観察しながら、あまりにも被害の差があるのに気付いた。
王都外周部にぐるりと張り巡らされた防壁に、全く傷が付いていない。壊されたのは正面の激突門のみ。賊は真っ直ぐに入って来たのだ。
更に、人家の被害はそんなでもない。だが商家の倉庫など、経済的打撃が大き過ぎる。あまりにも意図的な攻撃。
そして崩れ落ちた王城。
だが、なぜ。
ここまで圧倒的に勝利したのなら、そのまま滅ぼせば良かったのに。
それなら、おれ達が反撃出来た。
魔軍ともあろうものが、何を考えている。
考えのまとまらぬ内に、王都周囲の見回りは終わった。野良魔獣すら居ない。
火災の起きていたエリアは、一応、消火しておいた。水庫で空間を固定し、空気の流入を防げば、自然に火は消える。ただ、一時的に燃焼を食い止めたに過ぎない。後できっちりと放水して完全に消火せねばなるまい。
「イルマさん、ヴェルグ師匠。敵は見当たりませんでしたっす」
「おう。ご苦労。オウザ。今日から、お前が律王だ。よろしくな」
「はいっす・・・・?」
オウザの頭はまだ理解出来ていないようだが。
頷いた以上、問題はもうない。
サモン、ハセガワの合流を待って、移動。
「では。避難所で緊急議会だ」
それは防壁のすぐ側に建てられた、幅広の建物。普段は地域の公民館、避難訓練などで使用されるが、今回はその本来の役割を果たしている。万が一の、緊急避難所として。
住民は皆、己の地域の避難所に集合しているはず。そして今回のような事態に際して、緊急司令所としての役割を持たせられた建物も存在する。
勇者大通りに面した、最も地味な建物がそれだ。幸い、今回の災いでも焼け落ちてはいない。
ここには通常議会の議員ら、役人ら、そして本来であれば近衛も参集している。王に伝えるために。
ヴェルグらが来たのは、そういう場所だ。
表玄関には、ちゃんと兵士が門番をしている。
「兵の指揮所はどこに?」
「はっ。こちらの建物の前にでも建てようかと。・・指揮系統は、完全に混乱しております」
「分かった。しばらくはおれもここに居る。無いとは思うが、魔軍の増援が来次第、おれに伝えてくれ」
「はっ!」
王城が陥落。当然、その周囲にあった軍の詰め所、訓練所、その他あらゆる施設が使い物にならなくなっている。ゆえに、一時的にでもテントなりなんなりで兵の連絡所を作らなくてはならない。護衛も兼ねて、ここがベストだろう。それに、完全に破壊された激突門にも、簡易の見張所を作る必要がある。最もアクセスしやすいここが楽だ。
着の身着のまま。平服のままでそろっている議員らを前に、ヴェルグが挨拶をする。
「傷も癒えぬ間の招集にも関わらず応えてくれた事、感謝する。きっと律王も、我ら国民の奮闘を、世界の狭間で案じておられる。ここで我らが諦めるわけには行かん。そのためにも、皆の協力が必要だ。ここに居る、そして今も働いている皆の」
そしてヴェルグはオウザを呼ぶ。
「知っての通り。律国全権大使のオウザだ。おれは、本日この時、この者を新たな律王に推薦する」
オ オ
どよめきが臨時議会を埋め尽くす。
「勇者メイストームの愛弟子にして、律王の薫陶を受けし者。この男以外に、いったい誰が律国を背負える。そしてこの件は、剣王ユーベルの了解も得ている」
ざわめきは、驚愕と興奮へと変化して行く。
「正式な即位式は後日に回すとして、今は皆の賛同を得たい」
議員、役人、護衛の戦士。反対する者は、居なかった。
「良し。ではこれより、律王のオウザの下に我らは一致団結。王都再興の道を歩む」
ヴェルグの言葉に、オウザは皆の前で礼をする。イルマ、サモン、ハセガワらの拍手に続き、その場の全員からの拍手も。
「若輩ながら、皆様との連帯を心がけ、立派な律王を目指します。ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い致します」
言葉は立派ながら。
オウザに、現実感は無かった。
自分が律王になるという事は。
氷像となっていたヤヨイ王は、やはり死んだのだ。
・・・師匠は?
メイストーム師匠は、どこに。
心穏やかではいられないオウザに構う余裕もなく。話は進む。
「サモン。ハセガワ。現状報告を」
「はっ」
ヴェルグ、オウザの着席で、議会の開始。
律国復興議会だ。
「現在、王都40ヶ所ほどで火災、建造物の崩壊などの危険性が予期されています。戦士隊が今も作業中です。確認が取れているだけで、死亡者数、3000名以上。負傷者150名以上。なお、近衛と剣士隊に関しては、全滅です」
負傷者が少ないのは、戦場に立った人類の全員が死亡しているからだ。避難場所の防衛に当たった魔力を持たない兵のみが生き残った。
王の護衛たる律国最精鋭、近衛。そしてヴェルグ、イルマが育成した優秀な剣士隊。これらが、1人残らず壊滅。
そしてまだ調べている真っ最中だが、王都内の魔力の素質のあった全員が死んでいる。一般人も役人も議員も、一切関係なく、魔力回路を持っていたというだけの理由で皆殺しに合っている。魔王のただ一度の魔法行使によって。
律国総人口の5パーセントも減っていないこの戦禍で、しかし律国総戦力の20パーセントは減少してしまった。
「魔研からの報告です。・・・・」
合流してから、ずっと顔色の悪かったハセガワは、この場でも言いよどんでしまった。
「構わない。ありのままに伝えてくれ」
ヴェルグにそう促され、なんとか言葉を振り絞った。
「はっ。・・・魔研は全滅。生存者は、2名。残りは魔力欠乏により、全員死亡しておりました」
「ご苦労。・・2名生きていただけでも僥倖。敵は魔王なのだから」
魔法使いと共闘しているヴェルグや戦士ならともかく、一般人にこの感覚は分かりづらいので、ヴェルグが補足しておく。
敵は魔王。
なぜ過去のヴェルグらが、たった4名で魔王討伐に出たのか。
その理由がこれだ。
半端な実力者を連れて行っても、魔王の吐息のような走行1つで粉々にされる。ましてや魔法使いを連れて行くのは、ただ無意味に殺されるだけだ。
魔王が動き回る。それがこんなにも脅威だとは。ヴェルグですら、初めて実感していた。
「魔研が一切使い物にならない。それはつまり、この王都の結界を修復出来ないという事。しばらくの間、兵の見張りを増やす必要がある。サモン。兵の疲労を残さぬよう留意して、ローテーションを組んでやってくれ」
「はっ」
この問題。実は、中々に根深い。
もしもヴェルグからでなく、魔研から直接、戦士に向けて要請があれば、それは魔法使いへの無意識下の反発を招いただろう。
戦士隊もまた、参戦していた部隊は全滅している。それを更に酷使される。しかも、戦ってすらいない魔法使いのために。
いかに理性では仕方のない事と分かっていても、人はそう物分かりよくなれない。はいそうですか、で受け入れられるなら、この世に争いはない。
ゆえにヴェルグは豪胆な判断に見せかけつつ、細心の配慮を用いて、誰にも不満の溜まりにくいよう話を動かしていた。
ヴェルグが全員の前で宣言する事によって、律国に残った最大戦力の物言いである。そう印象づける。
この期に及んで、もうゴタゴタは要らない。可能な限り無難に進めなければ、本当に王都は終わる。ドサにでも遷都するか。
早急にオウザを王とした体制を確立しなければ、冗談抜きにそれぞれの都市が独立を始めかねない。律王にこそ、皆は従っているのだから。
そして独立が始まれば、この世界は新たなスタートを切ってしまう。
使徒との約定を前提として構築された4ヶ国が、崩壊してしまう。
そうなれば、一度は落ち着いた人の世が、更なる混乱に突入するだろう。
魔王は、それを狙っているのだろうか。
「ハセガワ。現時点での魔研は、一旦休止。完全にオウザの護衛として働いてくれ」
「承知致しました」
残る2人の生き残りも同じく。オウザの盾ぐらいにはなれるだろう。
そして魔法使いへの要らぬ風当たりを避けるためにも、オウザの名を使う。ヴェルグは中々に遠慮しなかった。
「個人情報が確認出来次第、集合墓地への埋葬を行う。そして一月後に合同の慰霊式を執り行う。これには各都市の代表を招き、オウザのお披露目も兼ねる。各人、そのつもりでいてくれ」
死体は放っておけば腐る。すぐにでも片付ける必要がある。だが魔法使いの全滅した今、燃焼による葬送も難しい。可能なのは。
「王とメイストームに関しては、別個に取り扱うとして。一般兵らは順次、オウザの燃焼によってまとめて送る」
1人1人を葬るには、全く時間が足りない。
兵士もあまりにも大きなダメージを負っているのだ。人手が足りなすぎる。集合墓地付近に、取り急ぎ火葬場を作り、オウザが見送る。それ以外、物理的に可能な埋葬はない。
そして人々の現在の生活が落ち着いてから、儀式を行い、区切りを付ける。今はまだ、混乱の真っ最中。葬儀をした所で、また困難を再確認させるだけだ。都市生活の立て直しをしてから。時間を置いてからだ。
オウザは話の真っ最中ではあったが、我が耳を疑っていた。
メイ・・・?
ヴェルグはオウザの信じられないと言った顔を見て取ってはいたが。
議会を進めねばならなかった。
「サモン。大変だろうが、より正確な被害報告を順次上げてくれ。ハセガワ。生存者と共に、オウザの側を離れるな。では、これにて第1回緊急議会を終わる。この苦難の時を、皆で乗り越えよう」
全員が立ち上がり、手が痛くなるまで拍手をする。
自暴自棄であろうがなんだろうが。立たねばならん。動き続け、この街を立て直す必要がある。
でなければ、命を散らした者達に合わせる顔がない。
出来る限りの事をやるのだ。




