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模擬戦その2。そして。

ゴオン!


 数百メートルからの岩石を打った音がした。


 これが、スガモの走行ルナ。その一発の音。


「えええええいいいいい!!!」


 声を上げて、気を高め、スガモを貫く!!


 オウザの100発以上の電撃スピアは、威力を抑えつつもスガモの攻撃の手を止めさせた!


 ネイキッドが走行ルナを叩き伏せた瞬間に速射したので、防御は既にある結界のみ!


 オウザの魔法が放たれた瞬間、更にネイキッドが踏み込む!!


 電撃スピアの効果時間は一瞬!その直後、ネイキッドの巨大化アズマが手刀となりて結界を打ち抜く!!



 結界はその1枚1枚は、結合されていない。だから、最初に叩いた時、1枚しか壊せなかったのだ。


 だから、こうする。



ギ!


 五指を開き、スガモの真上から打ち込む!


 そしてそのまま巨大化アズマを強化し続ける!


ビキイイイイ!!!


 結界ごとスガモを握り締める間、結界は破壊し続けられる!



オ オ


 その間、オウザは魔力を溜め続ける。


 準備するのは、4種合成魔法、廃滅ラド



バン!!


 スガモの真正面に立っていたネイキッドは、走行ルナ一発で200メートルほど弾き飛ばされた。かろうじて頭部を守る事は出来たので、致命傷は負っていない。全身が上手く動かず、指一本の抵抗も出来ず、立ち上がる事もおぼつかないだけで済んだ。



 オウザは自分のそばを吹っ飛んで行ったネイキッドには見向きもせず、ただ「敵」を葬る事だけを考えた。


 この場で最強の敵。コレを倒しさえすれば、2人は安全だ。


 オウザは、完全に戦闘思考に入っていた。



 右手に溜めた廃滅ラドはそのままに。


 全身、周囲、空、大地。その全てから、電撃スピアを撃ち出す。



 雷、というよりは、太陽の輝き。総数100を超える電撃スピアが一斉にスガモの真ん前で炸裂した。集結した稲光は、人類の目を完全に塞いでしまう。



 ここでオウザは全速力でスガモの真横に回った。正確にはスガモの右側面。正面、後ろは結界の厚みがあるはず。


 足に走行ルナはかけない。かける余裕が、無い。


 だが、オウザは肉体も天風を使いこなせるレベルで鍛え上げている。


 一瞬で回り込んだ。



オ オ オ


 廃滅ラド


 一体、何枚の結界を破れるだろうか?


 廃滅ラドを撃ったオウザは、素に戻り、この試合の結末を見届ける気持ちになっていた。



「悪くないわね」


 当然、無傷のスガモの声。震えも怒りも、何も無い。今の2人では、まだスガモの感情を揺らす事さえ出来ない。


「どう、でした?結界は、何枚破れたっすか?」


「10枚。ぴったり。よく、頑張ったわね」


「ありがとうございまっす!」


 お辞儀をしたオウザは、ネイキッドの事を思い出し、回復に駆け付けた。



「悪くない。最初の無鉄砲な突撃も、今の溜めに溜めた魔法攻撃にしても。あなた達は、やはり現時点でもかなり強い」


 無鉄砲と言ったのは、ネイキッドがスガモの真正面に立ってしまったから。しかも攻撃にのみ意識が集中していて、もしスガモが攻撃する意思を持っていたら、ネイキッドは即死していた。


 2度目の突撃は、それよりはマシだった。オウザの時間稼ぎである自覚があったため、スガモからの魔法を防ぐ意識が機能していた。


 オウザの魔法の使い方も良かった。電撃スピアの威力を抑え、数を増やし、こちらの目を潰す。良い使い方だった。


 そこいらの魔族や人間には、確かに遅れを取らないだろう。



 私でも、直撃を受ければ危ない。


 私の結界の一部が無意識反射によって、あらゆる攻撃を防ぐために機能しているのでなければ。


 音、毒、衝撃、光、その他スガモの魔法で防げる全てに対応した無意識障壁が常時10枚、防御結界の内側に張ってある。極薄い結界だが、その1枚1枚が、オウザの全力の走行ルナを食い止める程度の強度は持っている。


 今までこの壁を貫いたのは、メイストームと魔王の2人だけ。



 この2人は、そこまで行けるのかしら。




 午後の時間全てを戦闘訓練に費やし、2人は何度か死にかけながらも手応えを得ていた。


 勝てずとも、徐々に戦闘時間が伸びている。


 スガモの魔法も、2撃までは耐えられるようになった。



「ここに何日居て良いのか分からないけど。本気にさせてみたいな」


「それは・・・どうっすかね」


 いつもならネイキッドと気の合うオウザだが。


 今回ばかりは、相手が悪い。



 スガモはまだ、本気の魔法を見せていない。


 廃滅ラドはおろか、走行ルナでさえ、自分達の体が消し飛ぶ。オウザは、そう思っている。



 そしてその感覚は、正しかった。


 ネイキッドが本気で巨大化アズマでガードしたとして。


 オウザが本気で結界を張ったとして。


 スガモの手加減の無い、普通の魔法で、2人は防御など無かったかのように貫かれる。




 その後、2人は3ヶ月間をこの天空での修行に費やした。




 椅子に腰かけたネイキッド。その後ろで、小さな台に立つスガモ。


「背ぇ伸びたわね」


「そうですか?」


「そっすよー」


 スガモが、ネイキッドの髪を切ってくれている。伸びに伸びたので、帰る前にすっきりさっぱりしておきたい。


 ネイキッドが終わったら、次はオウザ。切り終えたネイキッドは先に風呂に入って、髪の毛を洗い落とす。


「スガモ師匠は、魔法以外も器用なんすね。ちょっとメイストーム師匠に似てる感じっす」



「すみませんでした!」


 オウザは自身の迂闊うかつな言動により、全身に軽い電撃スピアを流された。髪を切られている最中なので、避ける事も結界を張る事も出来なかった。


 無論。メイストームと同じく、師のお仕置きをガードしてしまうと、もっとキツい罰になるので、これはこれで結果オーライ。



 2人は準備完了。


 長い時間を過ごした天空の大地ともお別れだ。



「また。何かあれば、来なさい」


「はい!」


「お世話になりましたっす!」


 2人は礼をして、来た時と同様、オウザの雲に乗った。


「ありがとうございましたー!!」


 遠くなる2人の声。こちらに振る手が、見えなくなって行く。






「おい。おれよりヴェルグのがキマってないか?」


「それは顔の問題だな。スガモ師匠は贔屓ひいきはしていない」


「そうよ。あんたの顔が悪い」


「んだと!おれの超美形顔に、坊主頭なんて似合うわけねえだろ!!ちったあ考えて切れや年増あ!」


ヴァチイ


「・・・・・・・・こっ・・・・殺・・す・・・・お前、より、強く、なったら・・・」


 メイストームはそこで気絶した。


 20年は昔の話だ。



 懐かしい。



 私も、昔を想ってしまうようになったのかしら。






 完全にスガモのコントロール下にあるはずの、この空域で、風が吹いた。



「女の1人暮らしに何の用かしら?」



「魔法使いスガモとお見受けする」



 現れい出たのは長身の者。ネイキッドより大きい。ヴェルグ並みか。


 ローブに身を包んでいる癖に、やたら鍛え込まれた体をしている。


 存在感は・・そんなでもない。



「それで?」



「お命。この世界のために、頂きたい」



「その理由じゃ、やれない」



「ならば」



ゴ!



「無駄口が過ぎる」



「確かに。無礼でしたな。謝罪致します」




 スガモは多少警戒した。


 突如として現れた何者か。魔族ではない。恐らく、人間。


 ここまで来れた以上、ネイキッドやオウザのレベルを想定して良い。スガモが許可を出していないのに入り込んで来た。それが何よりの実力の証明。


 それが証拠に、スガモの手加減抜きの走行ルナを受けて、無傷。



「明日は筋肉痛かな」



「明日、ですか。お若い」



「ぶっ殺す」



 今度は、襲撃者が最大限の緊張を見せた。


 スガモが、あのスガモが本気になる。


 だが、自分は、この怪物を殺すために修練して来たのだ。


 この世界に生きる人々のため、負けるわけには行かない!



「・・・!」



 突っ込もうとした賊は、身動き取れなくなり、どうしようもなくなった。


 植物魔法「拘束ラッカ」。スガモが手加減せず放ったそれは、ヴェルグであろうがメイストームであろうが止める。


 更には通常魔法を普通に行使する程度なら、スガモには一瞬の間も要らない。気付いた時には、終わっている。そしてスガモの魔力で覆われている以上、魔法の発動もままならない。


 この者では、本気で天風を使わない限り、突破口は無い。



 さあ。使ってみなさい。



「・・・・」



 スガモは何か奥の手を使うかと待っていたが。


 何も無かった。


 実力は、さほどでもなかったのか。



 襲撃者をそのまま放置。拘束ラッカはスガモが解かない限り、永久に解けない。




「メイストーム」


「呼んだかよ」


 スガモの一声に、勇者メイストームが現れた。

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