模擬戦。
「分かった?」
スガモは、ネイキッドに戦闘の感想を聞く。
昼食後、ジュースなど飲みながらの会議だ。
少年2人は体力を回復するため、おかわりまでしてちょっと苦しかったが。スガモの用意してくれた特製メニューのおかげで、2人の体力、魔法力は完全に回復していた。
「はい。猪突猛進ではいけない。相手の性質を見極めて、有効な戦術を取る事、ですね」
「ま。そゆ事。ヴェルグならともかく、今のあなたが勝てない敵なんて、世界にはゴロゴロ居るのよ。そんな奴らに真っ正直に全力で挑むだけで勝てるなら、この世に負ける者なんて居ない」
「はい」
それこそ、ネイキッドが今、ヴェルグと真剣勝負をしたなら、100億回戦っても、一度も勝てないだろう。
そんな奴と正面から戦ってはいけない。
「そして。例え相手がヴェルグでも、本気になる前に、あんたとオウザが完全なコンビネーションを見せれば、勝機が無いわけじゃない」
「マジっすか!」
オウザも全力で食い付いた。
戦士ヴェルグは、現在の世界での最強の1人。
ヴェルグ、メイストーム、スガモ。そして現役は引退しているはずだが、ヤヨイ。勇者パーティーは、まだ全員が戦える状態なのだ。
「ヴェルグと言えど、所詮は戦士。オウザ。あんたなら、一方的に潰しにかかれる。ネイキッド。あんたは、オウザの盾になる。それで、勝ちよ」
・・・理論は、そうなのだろう。
理屈の上では、正しいのだろうが。
「む、無茶っす」
「うむ・・・」
オウザもネイキッドも、真に受けてはいなかった。
まず、オウザの魔法でかろうじて通用するのは、廃滅くらいか?拘束など、一瞬の足止めにもならないはずだ。触れただけでちぎられる。
そして廃滅をモロに食らうような者なら、魔王討伐など夢のまた夢。
更にネイキッドが盾になるという話だが。
本気で巨大化を使って、数秒なら。まあ。
それ以上は、無理。
絶対的な実力差が、そこにはあるのだ。
「それを、出来るようになってもらう」
スガモは相変わらず無表情な顔で言った。
しかし、声は真剣だった。
でなければ、メイストームやヴェルグに合わせる顔が無い。
昼食後は、模擬戦。
ネイキッド、オウザ対スガモ。
「本気を出して良い。何をしても良い。作戦を立てる時間は、10分。はい」
「はい!」
「はいっす!」
言い終わるとスガモは、先ほどネイキッドが使った空中修練場を拡張して行った。
そしてこちらでは作戦タイム。
「まず、おれの魔法の一切が通用しないと思って良いっす」
「分かった。おれのサポートを頼む」
これはどうしようもない。ネイキッドにもよく分かる。
これが対ヴェルグなら、ネイキッドも同じ事を言っただろうし。
「まさか廃滅は来ないとは思うっすけど。一応、魔法の回避は確実に」
「ああ。まず、避ける」
「おれに込められる限りの魔力でネイキッドをサポート。んで、戦闘中は、スガモさんに嫌がらせして、集中力を削ぎ落とすっす。後はその場その場で動くつもりで、声かけ確認しつつ」
「了解だ」
そもそも綿密な作戦など、組み立てられない。
こちらはスガモの戦力を知らないのだから。
だが、そんな事は分かりきった事。
これは、その、知らぬ相手との戦闘訓練。自分達より強い、未知なる強敵との戦闘を予期した試合。
言えば、スガモは、ネイキッドとオウザを、次代の勇者として認めてくれているのだ。
それも、この戦いで無様をさらせば、無かった事になるかもだが。
何にせよ、全力。
丁寧に当たれば、実力は出る。そのように鍛えて来た。
ヴェルグ師匠が認め、メイストーム師匠が恐れる、魔法使いの頂点との戦い。
ありがたく、堪能させてもらおう!
3人はより広大になった修練場に立ち。
「お願いします!」
「お願いします!」
「はい」
開始!
オ オ オ
「ふうううう・・・・」
運動能力増強、反射速度加速、そして防御結界。オウザが本気で込めた強固によって、ネイキッドの能力は常時の10倍を超えた。
強化魔法をかけ終えたなら、オウザ、ネイキッドによる同時攻撃!
まずオウザの電撃!一撃に全力をかけ、防御結界をあらわにする!
そこをネイキッドがぶっ叩く!!
使うは無論、巨大化!!!
ゴ!!!!
手応え・・・・あり!
確かに叩いた。ネイキッドの右掌には、防御結界を真上から押し潰した感触があった。
・・スガモは、大丈夫なのか?
それがヴェルグであっても、防御なしで本気で直撃させたなら、いくら何でもダメージを与える自信はある。
巨大化を使っているため、スガモの姿は見えない。ゆえに、右手をのける。
そこには。
「?なぜ、連続して仕掛けないの?」
全く無傷のスガモが首を傾げていた。
「あの・・・・。今、結界を壊した感触があったんですが」
「ええ。見事だったわ。正直、見くびってた」
スガモに、褒められた。それは嬉しい。が。
「え・・。それで、なんで、無事なんすか?」
ネイキッド、オウザの疑問に、スガモは分かりやすく答えてくれた。
「私の結界は、常時100枚張ってあるから。もちろん、戦闘中の話ね」
非戦闘中は、体内予備結界を含めて、千枚。何度も暗殺を防いでくれた、相棒のような魔法だ。
更に付け加えるなら、この試合の最中に張っている結界は、スガモの余剰魔力で構築した、最も出力の弱い結界。普段の癖で、枚数はすごい事になっているが。
ネイキッドは、視線を地面に向けてしまった。全力で攻撃して、さほど魔力を込めてそうでもない結界を、たった1枚のみ。奇襲のために、既に体力の1割を消費した。これで、スガモの100分の1の魔力量すら削れていない。
オウザもまた、改めてスガモの力を知った。先の電撃は確かに威嚇。魔法攻撃にスガモの意識を行かせた瞬間に、本命のネイキッドの打撃。そういう作戦ではあった。それでも、全力で撃った電撃で、100枚からの結界を1枚たりとも壊せなかった。
格が、違う。
オ
スガモは、ちょっと楽しくなった。
昔を思い出してしまった。
「おれが、結界を削る」
「何とか、やってみるっす」
意気が、衰えない。いや、むしろ燃えたぎっている。
あの子達も、こうだったな
スガモは、少しだけ、微笑んだ。




