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知識屋  作者: 吾桜紫苑
第6巻
89/94

大惨事、らしい

 幸いというかなんというか、僕の親戚にコテコテの博多弁を話すお爺さんがいたから、ギリギリ辛うじて何言っているのか理解できそうだ。

 なお、鬼狩りの方はひたすら無言だ。なんとなく怖くて顔は確認できないけど、様子を見守っている、というか見張っている気配がするので、とりあえず僕が話を進めていいんだろう。


 というか、このぶち壊された緊張感をどうにかしろと訴えられている気がしてならない。了解です。


「えっと、ジャック」

『なんね』

「とりあえずさ、さっきの鬼狩りさんの話は本当なの?」

『そうそれや!』

「うわ声でっか」


 体ごとこちらに振り返ったジャックが腰を下ろし、胸を張ってクソデカボイスを放つ。


『おれは確かに鬼やった。人間からは鬼八とか呼ばれて、高千穂で命に踏みつけられてる像で有名や。ばってん、神様の監視下で大人しくしてるんもいい加減退屈やったんよ。ちょっと修行に出るー言うて高千穂を出てあちこち回って、ここ百年二百年くらいは道真んとこに世話になっとったばい』


 道真というと、菅原道真……太宰府かな? 確か福岡県だったはず、なるほど、それで宮崎弁や大分弁じゃなくて博多弁なのか。


『で、神ン野……鬼の大将に誘われて、百鬼夜行は大暴れしたったい。それが鬼の仕事やからな!』

「う、うんそっか。鬼だから暴れるのが仕事なんだね」

『おう! んで、なんかよーわからんばってん、気づいたら力が根こそぎなくなっとったったい。こんままだと死ぬ思うて、試しに体を小さくしたんよ。その後のことはよく覚えてないけんが、ご主人の家に運び込まれとったんやね。そんでご主人と契約したばい』

「ああうん、そこまでは違いはないのか。じゃあなんで怒ってたの?」

『そりゃあ嘘ついとったけん』

「嘘?」


『俺はもう鬼に戻れん。ご主人の契約がある』


「…………はい??」

 うわすごい、視線が、視線が僕に突き刺さるのが分かる! 分かるけど待ってほしいな!!


「えっと、ジャック。それは一体どういう……?」


『ん? どういうもなんも、ご主人の仕業やろ? 契約の首輪かけた時、俺を猫として面倒見るーっていう魔術にしたけん、俺はほぼ猫やん。力が回復して話はできるようになったばってん、鬼には戻れんよ。なんやよーわからんけど、契約を解いても鬼に戻れそうにないわ。ご主人どーやったん?』


 うん、確かに僕は猫又かもしれない猫(仮)として契約した。したね。当時は鬼だとは毛頭思っていなかったし、猫又だったとしても人様に迷惑かけさせるわけにはいかないって思っていたとも。

 けどさあ。


「…………えっと。そういうことって、あるの?」


 一応、今回の契約にあたって、僕なりに勉強した。

 契約する側は、相手の行動を縛ろうと思ったら、実質無制限にかけられる。ただし、この無制限というのは術者の実力に比例する形だ。契約される側だってあんまりな契約だったら逆らうことも、力づくでぶち破ることもある。しかもその場合、契約をぶち破られた瞬間に食い殺されかねない、なーんておっかないことが書いてあった。だから僕としては「人を襲わないでね」くらいにしか縛らなかったのだ。そもそもそのために契約したのだしね。

 ついでに言うと、契約による制限は、契約を破棄すれば解除されるのが常識だ。これはもう、当たり前である。はず。


 なんか、こう、色々とおかしなことになってない??


 しばらくうんうん唸りながら記憶を辿ったものの、やっぱりジャックの状況が僕の知識と矛盾している。だめだ、分からない。

 分からないことは人に聞くに限る。


「あのー。何がどうなってるのか、分かります?」


 そう言って目を向けた先では、鬼狩りがこう、すんっとした顔をしていた。あれだ、なんとかってキツネの顔。どーしてくれようこの野郎って書いてある。


「どうしてくれようか、この馬鹿野郎」


 言われた。罵倒も追加されている。


「なんか、ごめんなさい」

「つまりてめーは魔術師として猫又と認識したそれと契約しつつ、鬼狩りとしてそれを鬼と認めないという存在否定を行なったわけだ。結果、歴史に残るレベルの中級鬼が、かろうじて猫又と呼べなくもない猫もどきに成り下がっている。が、本人は一応元々鬼だと認識しているせいで、側からは鬼にも見える。なんだこのクソふざけた生命体は」

「いや本当にごめんなさい」


 このわけわかんない状態を僕に分かる言葉で解説してくれたの、普通に凄いしありがとうございます。でもその上で言わせてほしい。


 そんなことある!?


「10割てめえが悪い」

「納得がいかないけど現状がごめんなさいと言うしかない……」

「どうせ契約の縛りに「人間を襲わない」とでも入れたんだろう」

「そりゃーまあ、そのために契約したよーなもんですし」


 クソデカため息を吐かれた。


「鬼の存在意義は人間を襲うことだぞ。その時点で根源否定だ。鬼使いは鬼相手には絶対的な権限を持つから、抵抗もできなかったんだろ」

「……なるほど……?」


 とりあえず、僕がだいぶん色々とやらかしたことは間違いないようだ。どうすればいいんだろうか、これ。


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