第12話「兵士の埋葬」
砂浜に座ったまま、しばらく何もできなかった。
ハルは手の震えが止まるまで待った。ミナは膝を抱えて目を閉じていた。波が砂浜に寄せては返す音だけが聞こえた。鳥の声がした。風が木を揺らす音がした。七日間、一切なかった音たちが、一度に押し寄せてきた。
ハルは空を見上げた。
曇っていたが、夕方の光が雲の向こうから薄く差していた。時刻は午後四時か五時か——七日間ほとんど時間感覚がなくなっていたから、正確には分からなかった。
長い一日だった。
長い七日間だった。
立ち上がれるようになったとき、ハルは機体に戻った。
ゴッグ二号機は砂浜に乗り上げて傾いていた。外装の半分が剥落し、フレームが露出した箇所があった。内側からの浮力で膨らんだように見える部分もあった。七日間の水底生活と、ACAS発動時の衝撃が、機体にどれほどの負荷をかけたか——外から見ると、それが初めて分かった。
「ひどいな」とハルは言った。機体に向かって。
機体は答えなかった。当然だった。でも——ハルは何かを言わずにはいられなかった。
「よく持ってくれた」
砂浜をミナが歩いてきた。ハルの隣に立ち、同じように機体を見た。
「本当に、よく持ってくれたね」とミナは言った。
食料を探しに行った。
島の端は珊瑚礁に囲まれていて、潮が引いた浅瀬にはヤドカリや貝類がいた。ハルは軍服の袖で包んで集めた。内陸に少し入ると、ヤシの木があり、落ちた実が砂に埋まっていた。水も、岩の割れ目から細く湧き出している場所があった。
「生きていける」とハルは言った。
「当分は」とミナが答えた。
二人で焚き火を作った。ハルが木を集め、ミナが火起こしをした。軍の訓練には含まれていたが、実際にやるのは久しぶりだった。それでもミナの手つきは確かで、十分ほどで小さな炎が上がった。
貝を焼いた。七日ぶりのまともな食事だった。
ハルは一個食べてから、しばらく動けなかった。
「どうした」とミナが聞いた。
「うまい」とハルは言った。「貝がこんなにうまいと思ったことがなかった」
ミナは少し笑った。本当に笑った。七日間で初めて見る、力の抜けた笑いだった。
「私も」
食事が終わった後、ハルは立ち上がった。
海の方に歩いた。波打ち際に立って、少し考えてから、腰のホルスターに手をやった。
ハルの軍用拳銃だった。七日間、水の中にいても、砂の上に倒れても、ずっとそこにあった。
ハルはそれを抜いた。重さを確かめた。
この拳銃で、何人を倒したか。正確な数は覚えていなかった。戦場での話だった。命令に従い、生き残るために、必要だったことだった。
でも今は。
この島には、戦場がない。守るべき「ジオンの正義」も、倒すべき「連邦の侵略」もない。この砂浜に、軍曹として生きる理由がなかった。
「軍曹としての俺は、あのアマゾンの底に置いてきた」
誰かに言うわけではなく、ただ声に出した。
拳銃を海に向かって投げた。
放物線を描き、水面に落ち、小さな水柱を立てて——沈んだ。
ハルは泥と血に汚れた軍用上着を脱いだ。それも海に向かって投げようとして、少し考えてから、砂の上に置いた。上着は海に沈めるより、何かの役に立てた方がいいかもしれなかった。
でも意味は同じだった。
「兵士」という肩書きを、ここに置いていく。
ミナは砂の上に座ったまま、それを見ていた。
ハルが戻ってくると、胸ポケットから端末を取り出した。七日間、何十時間もの記録が入った端末だった。
「記録は、死者の代わりに語るもの……」
ミナはその言葉を呟いた。前任の通信士から受け取った言葉だった。「生きて帰った者だけが、死んだ者のことを語れる」——だから記録しろ、聞け、事実だけを並べろ。
端末をじっと見た。
中には、第八大隊の最後の時間がある。中佐の最後の命令が記録されている。カイル・フォン・シュトラール中佐が、光の中に消えた瞬間のノイズが残っている。消えていった仲間の声が、断片的に入っている。
そして——深度九十一メートルでの七日間が。
ゴッグ二号機が「生きていた」七日間が。
「ずっとそこにいた誰か」が、ずっと聞いていた七日間が。
端末の電源を切った。
砂の中に、深く埋めた。
「語り継ぐのは、私じゃない」とミナは言った。「私たちがここで新しく刻む時間が、いつか誰かの光になればいい」
立ち上がった。
記録係のミナではなく、ただのミナ・カワシマとして、砂の上に立った。
ハルがミナの隣に来た。
二人は夕暮れの海を見た。
ゴッグ二号機の巨体が、夕陽に赤く染まっていた。腕もなく、足もなく、外装が剥落した姿で、それでも砂浜に立っていた。いや、横たわっていた。でもその存在感は、損なわれていなかった。
「どうする、これから」とミナが聞いた。
「ここで生きる」とハルは言った。「しばらく」
「軍に戻らないのか」
「どちらの軍に戻る気にもなれない」
ミナは少し考えてから「うん」と言った。
「ここは」とハルは続けた。「お前も言ったように、名前がない。地図にない。どの軍も、どの国も、ここを知らない。MIA(消息不明)として記録された俺たちには、ここがちょうどいい」
「悪意の連鎖の外」とミナが言った。
「そういうことだ」
夜になった。
焚き火を囲んで座った。波の音が続いた。虫の声が聞こえた。星が出た。七日間、見ていなかった星が、空一面にあった。
「ハル」
「なんだ」
「ここに来れてよかった」
ハルは少し黙ってから言った。「俺もそう思う」
「生きててよかった」
「俺もそう思う」
ミナが、ハルの方に体を向けた。
「あなたのおかげで生きてる」
「お前のおかげでもある」とハルは言った。「あの機体がなければどちらにしても死んでたが——お前が一緒にいてくれたから、俺は諦めなかった」
しばらく間があった。
ミナが少し近づいた。ハルはその動きに気づいたが、どうすることもしなかった。
ミナが、ハルの頬に触れた。泥と汗でひどい状態だったが、ミナは構わなかった。
そのままだった。
ハルは何も言わなかった。何も言う必要がなかった。
焚き火が揺れた。波が打ち寄せた。
二人はそのまま、夜の中にいた。
【次回 第13話「未完成の家」へ】




