第四場 もし、一年生に戻れたら
教室は少し暗くなっている
三人は床や机に適当に座っている
長い沈黙
栞が突然言う
栞「もし一年生に戻れたら、何する?」
雪弥が顔を上げる
雪弥「何、その質問」
栞「ええから」
奏太が考える
奏太「部活やる」
雪弥「お前帰宅部やったもんな」
奏太「何かやっときゃよかった」
栞「私はもっと写真撮る」
雪弥「十分撮ってたやん」
栞「人を」
栞はスマホを見る
栞「景色ばっかり撮ってたし」
雪弥「何で?」
栞「人は、また撮れると思ってた」
間
雪弥が笑う
雪弥「今日のお前、ずっと重いな」
栞「最後やし」
奏太「雪弥は?」
雪弥「俺?」
考える。
長い間
雪弥「……何もせえへん」
栞「何それ」
雪弥「同じでいい」
二人を見る。
雪弥「一年の時、お前らと同じクラスになって」
机を指す。
雪弥「藤崎がそこの席で」
別の机。
雪弥「水野があそこで」
自分の席。
雪弥「俺ここで」
記憶をなぞる。
雪弥「最初、別に仲良くなかったよな」
栞「雪弥が消しゴム忘れた」
奏太「俺が貸した」
雪弥「そうやっけ」
奏太「返ってきてない」
雪弥「三年間根に持ってたの!?」
三人、笑う
雪弥、机を撫でる
雪弥「……それでええ、全部同じでええ」
栞の表情が変わる。
雪弥「テスト赤点取って、先生に怒られて、文化祭で揉めて」
奏太を見る
雪弥「お前が途中で寝て」
栞を見る。
雪弥「藤崎が写真撮って」
笑う
雪弥「もう一回、全部やる」
沈黙
栞「それ、一番ずるい答え」
雪弥「何で」
栞「戻りたいってことやん」
間
雪弥「……うん」
初めて認める。
雪弥「戻りたい」
その言葉が教室に残る。




