第4話:【散らし・インフラ更地ストーカーの帰還と、一般人の有給(限界)】
ドガァァァァァンッッッッ!!!
新春の清々しい空気を完全に【抹殺】する、本日最初の大爆発。
常闇の主との決戦から数日、ようやく平穏を取り戻したはずの僕の部屋の壁が、鮮烈な青い炎の霊圧によって大破し、瞬時に見事な「吹き抜けのテラス席」へとリフォーム(破壊)された。
煙の向こうから、白衣を激しくはだけさせ、般若も裸足で逃げ出すレベルのガチ恋スマイルを浮かべた神代暁が、凄まじい風速で乱入してくる。
「千鶴のファーストキスのニューロン(※中身はさくらちゃん)を100%永久保存した俺を置いて、勝手に側室だの正妻だのという二次創作(裏設定)を現実のタイムラインに付け足してんじゃねえぞ害獣・害鳥、そして新参の神様ァァァ!!」
「既成事実のハードディスク保存をドヤ顔で主張しながら不法侵入してくるなよ……」
僕の喉から、新年初のツッコミが漏れた。
「何が『現実のタイムラインに付け足してんじゃねえ』やボケェ!! 京都の実家から戻ってきた初手で、一般の木造アパートに戦術兵器クラスの陰陽術ぶち込んで壁を更地にしとんのはお前やろがい!! 3万円の家賃に対して器物破損の損害賠償のインフレ率が宇宙の法則リフォームしとんねん!!」
「ふむ、相変わらず愛しいキレ味だ、千鶴……っ」
暁はハリセンの風圧を浴びて恍惚の表情を浮かべつつも、コタツを囲むタマさん、ハヤテさん、そしてサクラの神となったさくらちゃんを一瞥し、その琥珀色の瞳にどす黒い独占欲の熱線を漲らせた。
「いいか貴様ら! 今世の千鶴(蓮)が男の身体であろうとも、俺の魂の領域を侵す者は国家最高戦力の権限をもって朝まで隔離してくれるわーーーッ!!」
「あらあらぁ。お久しぶりですね、ストーカー陰陽師。お姉様の主権(お布団)を巡る戦いなら、この天界の使者、一歩も引く気はありませんよぉ」
ハヤテさんの漆黒の羽が、暁の青い炎に対抗して空間の酸素をガシガシと削り始める。
「お黙りなさい、神代の小僧。お姉様が男の器のまま私と合法的に契るための肉じゃが(夜這い)を邪魔する者は、我が九つの尾で宇宙の彼方へ調伏して差し上げましょう!」
タマさんの九尾の盾もバリバリと火花を散らし、和室の中は完全に神話級の霊圧の板挟み(大渋滞)となった。
「蓮くん、大丈夫だよ(にこ)」
その中心で、さくらちゃんは純白の神衣を翻し、ヤンデレ度100%の女神の笑顔で僕の前に立ちはだかった。
「お嫁さんになる私(正妻)が、あの意地悪なストーカーさんは、お供の桜の精と雨女に命じて、天界のコンプライアンスで再配列(お掃除)しちゃうからね」
「正妻だの側室だのストーカーだので画面のカロリーが1億キロカロリー突破してる。誰か、誰かこの不条理なドM愛の暴走を止めてくれ」
僕は純潔のデッドラインの上で頭を抱え、深く息を吐いた。
ガララ……と、唯一破壊を免れていた、玄関の引き戸が力なく開いた。
「…………」
そこに佇んでいたのは、パジャマ姿の上にどてらを羽織り、右手に冷たい缶お茶、左手に本日4箱目となる『トリプルアタック胃腸薬』の箱を握りしめた男――陣内陸くんだった。
彼は、一歩も部屋に入ることなく、ただ無言のまま、ゆっくりと死んだ魚の目を僕たちに向けた。
その目は、大晦日の世界崩壊大決戦を経て、もはやこの世の喜怒哀楽のパラメータを完全にパージした**【完全なる真顔の深淵】**と化していた。
「じ、陣内くん……っ!? 冬休みの宿題のノート、借りに来ただけだよね!? ごめん、今アパートの壁が物理的にテラス席になってて――」
「姫宮」
陣内は僕の必死の言い訳を、大人の事務処理並みの冷徹さでスルーした。
彼はガタガタと震える手で最強の胃薬を缶お茶で一気に胃袋へ流し込むと、力なく、玄関のタタキへとズサァ……と両膝を突いた。
「……俺、今から地球外へ転校するわ……」
掠れた、今にも消え入りそうな一般人の限界ボケ(本音)だった。
「俺さ……冬休みの課題を終わらせて、ただ普通に、新学期にお前と学食で焼きそばを食うだけの、そんな普通の男子高校生ライフの錨をやってたつもりだったんだよ……。なんで大晦日に世界の滅亡を記録させられた数日後にさ、神様のヤンデレ婚姻届と、妖怪の側室制度と、国家最高戦力の不法侵入(爆破リフォーム)をリアルタイムで同時並行で実況(目撃)しなきゃいけないんだよ……?」
陣内はガタガタ震える手で自分のポケットから『有給休暇申請書(一般人の限界)』を取り出すと、虚ろな目のまま、そこにペンでカチカチと『一般人、本日をもって有給(現実逃避)に入ります』と書き込み始めた。
「俺の一般人としてのキャパシティは、あのサクラの神が降臨した時点で、とっくに宇宙の彼方へ【蒸発】してたんだ……。お前ら全員、一回ガチの国際医療機関でカウンセリングを受けてくれ、マジで……。俺は今から、現世の戸籍を抹消してくる……」
「唯一の現世のオアシス(一般人)が完全に精神的限界で機能停止したな……」
僕のせいで胃壁を更地にされ続けた現実の錨が、新旧怪異ハーレムの過剰濃度の前に、完全に膝を折ってしまった。




