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第2話:【カオス・お姉様ズの甘やかしと、新サクラ派閥のヤンデレ襲来】


「――お姉様ァァァ!! お待たせいたしました!! 決戦の疲れを癒やす、このタマ特製の超濃厚肉じゃがの時間がやって参りましたよぉ!!」

ガラァァァンッ!! と、凄まじい勢いで押し入れの襖を左右に引きちぎらんばかりに開け放ち、銀髪の九尾の妖狐・タマさんがコタツの間へとスライディング乱入してきた。白のスリーピースのパンツスーツをキリッと着こなし、宝塚のトップスターのごとき圧倒的な気品と色気を放っているものの、その切れ長の琥珀色の瞳は完全に「男の器のお姉様を合法的に甘やかし尽くす」という狂信的な輝きで爛々と濡れている。

「何を仰いますか、タマ。お姉様をお布団に包んで赤ちゃんのように甘やかすのは、この私の役目ですよぉ」

間髪入れず、漆黒の羽をフワリと揺らして押し入れの天袋(上段)から這い出てきたのは、大天狗のハヤテさんだ。手にはすでに、最高級のシルクで作られたフカフカの敷布団が握られており、空間の酸素をすべて優しく吸い尽くさんばかりの聖母のオーラ(バブみ)を放っている。

「……二人とも、左右からの二重純愛アプローチが、新年初手から距離近いな」

さっきまで「男の身体のまま暁に身も心も捧げてしまいたいなんて……っ」と、自分の性自認の境界線で本気で悶々と悩んでいた僕の極上のシリアスな情緒は、数秒で完全に【消滅】させられた。

「お姉様、何を仰いますか」

タマさんはしなやかな足取りで僕の横へピタリと滑り込むと、男の僕でも身震いするほど低く甘い、極上のソプラノボイスで耳元に囁いた。

「あの常闇の主との決戦、お姉様が私どものために黄金のハリセンを振り回してくださったお姿、このタマ、一生の誉れにございます。さあ、男の器になられた今世のお姉様、まずは私のお口アーンで特製肉じゃがを――」

「ダメですよタマ、今日のお姉様は最初から最後まで私のお布団の中で、オギャアと赤ちゃんのように甘やかされる予定なのですからねぇ」

ハヤテさんの柔らかい身体が、右側から僕にぴったりと密着し、逃げ場のない包囲網が完成する。

「距離が近いな。左右からの全肯定のバブみの泥沼が深すぎて、僕の理性がそれなりに揺らいでるんだけど」

暁が世界を焼き尽くす烈火なら、お姉様たちのこの甘やかしは全身の骨を一本残らず抜きにくる泥沼だ。

だが、僕がその泥沼に引きずり込まれそうになった、まさにその時だった。

パァァァァァン――。

アパートの古びた部屋の襖が、現世の物理法則を完全に無視した、まばゆく神々しい「桜色の光」と共に、静かに自動で左右へと開け放たれた。

「――めっ、だよ。タマさんも、ハヤテさんも。蓮くんをそんな風に上下から同時攻略して困らせちゃ、めっ、だからね」

凛とした、だけど鈴が転がるように愛らしい、胸が締め付けられるほど懐かしい声。

まばゆい後光を背負い、純白の神々しい神衣の袖をサラサラと翻しながら、桜吹雪と共にコタツの間へとフワリと舞い降りてきたのは――数日前、僕への純愛の引力だけで神格化を遂げた、全宇宙最強の「サクラの神」こと、さくらちゃんだった。

「さくらちゃん……っ!?」

僕は驚きのあまり、コタツの中で飛び起きた。

さくらちゃんは神様としての圧倒的な神威をアパートの6畳間サイズに愛らしく微調整すると、コタツの端にちょこんと腰掛け、これ以上ないほど愛らしく、小首を傾げて僕を見つめた。

だが、その優しく垂れた目元の奥にある光は、ほんの少しだけ、ギャグで笑い飛ばせないほどの「純度の高いヤンデレのトーン」を滾らせていた。

「蓮くん、お待たせ。……あのね、私、天界へ行って神様になって、蓮くんの日常を脅かす大妖怪さんをお掃除したら、ちゃんと言おうって決めてたの。……ねえ、蓮くん」

さくらちゃんはぽっと頬を薔薇色に染め、世界で一番可愛い満面の笑みを浮かべながら、だけど一切の逃げ道を許さない絶対的な眼差しで僕に囁いた。

「蓮くん、私のことお嫁さんにしてくれるって、小学生のときにあの神社のベンチで約束したもんね(にこ)」

「純愛の約束を人質にして、神様の権力で外堀をセメント加工しにくるなァァァアアアッッッ!!!」

僕の喉から、アパートの屋根を再び【崩壊】させかねないほどの驚愕の大ツッコミが爆裂した。

「ふふ、蓮くんのそのキレキレのツッコミ、やっぱり神様になっても世界で一番大好きだよ」

さくらちゃんは笑顔を崩さないまま、僕の手元をじっと見つめて微笑んでいる。

タマさんの合法狂信、ハヤテさんのお布団バブみ、そしてさくらちゃんの新サクラ派閥によるお嫁さんヤンデレ急襲。

ラスボスを倒して平和が戻ったはずのアパートの六畳間は、新旧ヒロインたちの愛の質量が限界突破したことで、かつてないほどの**『男子高校生の純潔大ピンチ地獄』**へと突き落とされようとしていた。


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