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第4話:【共闘・桜の従者たちと、再配列される因縁】


「おのれ……! 成仏したはずの端端はした幽霊が、現世の矮小な未練ごときで神格化などと……世界のシステムがバグを起こしておるわッ!」

常闇の主の泥のように濁った怪音が、空間全体を激しく震わせる。ラスボスから放たれる無限の怨念が、せっかく戻りかけていたアパートの日常の空気を再び【侵食】せんと、黒い触手となってウネウネと波打った。

だが、サクラの神としてまばゆい後光を背負ったさくらちゃんは、その漆黒の暴力を前にしても、はにかむような笑みを崩さなかった。

「不条理なんかじゃないよ、大妖怪さん。私が蓮くんを大好きな気持ちは、千年の怨みなんかよりも、宇宙の法則よりも、ずうっと強いんだもん(にこ)」

彼女が純白の神衣の袖をフワリと翻し、パチンと小さく指を鳴らした、その瞬間。

境界線の戦場に、再び温かい桜色の光のゲートが二つ、ポッ、ポッ、と音を立てて出現した。

「さあ、おいで。私の可愛いお付きの従者たち」

さくらちゃんの愛らしい呼び声に応じて、光の中からサラサラと眩しい粒子を翻して現れたのは、僕にとってあまりにも見覚えがありすぎる、二人の『かつての強敵』だった。

「――お久しゅうございます、わたくしの尊きお姉様」

ハラハラと舞い散るピンクの花びらの中から現れたのは、第1章で旧校舎の裏庭にいた『桜の精』だった。かつての禍々しい瘴気は完全に【消滅】し、今はさくらちゃんの神使として、透き通るように美しい桜色の和装を身に纏っている。

けれど、彼女は僕の制服姿を見つめた瞬間、そのしっとりとしたお姉様トーンを速攻でドロドロの肉食系へと変貌させた。

神様さくらちゃんのお供として、再びお姉様にお仕えできるとは……ああ、眼福! 今すぐその衣服を一枚残らず散らす覚悟で、朝まで激しく共闘まじわりとうございます……っ(ぽっ)」

「共闘を『交わる』って言うな……」

僕の喉から、時空を鋭く切り裂くゴリゴリの関西弁ツッコミが漏れた。

「何が衣服を一枚残らず散らすやボケェ!! 成仏して神職の従者になっても、初手から僕のチェリー(純潔)を根こそぎ伐採しにきとんの1ミリも治ってへんやないか!! 植物の生態系どころか、天界のコンプライアンスどうなってんのさ!?」

「うふふ、お姉様。私もお姫様のお付きとして、地獄の底から這い戻ってまいりましたよぉ」

続いて、しっとりとした蛇の目傘を差して現れたのは、第2章の高架下でインフラを破壊しかけた『雨女』だった。彼女もまた、清らかな水を纏う神聖な姿に変生している。……中身のネジのトび方を除いては。

「お姉様にまたあの完璧なスナップで叩き直していただけるなら、私の健康寿命などいくらでも泥棒カツアゲしてくださって構いませんからねぇ……っ(ぽっ)」

「健康寿命をカツアゲされる側が自ら財布(命)を差し出すな。誰が健康寿命泥棒だ。というかお前ら2人とも、成仏した引き換えにドMのバグがさらに天井抜けて帰ってきてるじゃないか」

僕が多連装ハリセンを振り回して怒涛の高速ツッコミを連射していると、対面の壁のクレーターにめり込んでいたタマさんとハヤテさんが、ズブズブと音を立てて這い出てきた。

「あらあらぁ……。新入りの泥棒猫、いえ、神様とそのお供ばかりにお姉様を甘やかさせるわけにはいきませんねぇ」

タマさんの九つの尾が、現世の日常の嫉妬(霊圧)によってバリバリと逆立つ。

「そうですよぉ。お姉様のお布団は、私たちが最初から予約してあるのですからねぇ」

ハヤテさんの漆黒の羽も、聖母の微笑みを浮かべたまま、静かに空間の酸素を吸い尽くさんばかりに研ぎ澄まされていく。

(アカン!! 敵の前で味方の怪異ハーレムの『どっちがより僕をオギャらせるか大戦』が再加熱しとる!!)

「ぬうう……! 我を無視して身内の痴話喧嘩を始めるなァァァ!!」

完全に蚊帳の外に置かれていた常闇の主が、怒りのあまり世界を【溶解】させるほどの闇の大津波を僕たちに向けて一斉に放ってきた。

「みんな、蓮くんと暁さんのために、道を切り開いて!」

さくらちゃんが凛とした声で命じる。

「はーい、お姫様! さあ、お姉様への純愛のビートを刻みましょう!」

桜の精が両手を広げると、戦場全体に満開の桜吹雪が吹き荒れ、常闇の主の放った闇の触手を「細胞一つひとつから完璧なスナップで再配列」して、次々と綺麗な花びらへと【中和】していく。

「うふふ、私の冷たい雨で、その薄汚い怨念を綺麗に洗い流して差し上げますねぇ」

雨女が蛇の目傘を回すと、天から神聖な豪雨が降り注ぎ、常闇の主の絶対的な闇の衣(防御結界)を、大人の事務処理並みの手付きでガシガシと剥ぎ取っていった。

タマさんの九尾の盾が僕を優しく庇い、ハヤテさんの烈風が残った霧を吹き飛ばす。

新旧怪異ハーレムの圧倒的な「甘やかしと全肯定の福利厚生」が正面から噛み合ったことで、あれほど無敵を誇っていたラスボスの闇の防壁が、見る見るうちに【崩壊】し、その本体が完全に剥き出しになった。

「な、何という不条理な質量……っ! 我の千年の怨忌が、霊圧に押し流されていく……っ!?」

常闇の主が、生まれて初めて本当の絶望の表情を浮かべて狼狽する。

「蓮くん、今だよ!」

さくらちゃんが僕を振り返り、世界で一番可愛い満面の笑顔で叫んだ。

「あの意地悪な大妖怪さんを、蓮くんのその大好きなツッコミで、おうち(天界)へ還しちゃって!」

「よし……っ!!」

僕は右手の超重量黄金ハリセンを限界まで引き絞り、ローファーの底で、戦場の石畳を激しく踏み締めた。

ステージの袖では、パジャマ姿の陣内くんが、胃薬の箱を持ったまま**【完全なる真顔】**で「……もう、どうにでもなれ」と、世界の終わりのスコア(記録)を静かに付け始めていた。


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