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四人目の班長

【前回の登場人物】

「スライム博士」

(種族)ライトモン

(年齢)22

(能力)体の変形

(概要)探検隊の地上班長。敵の城から脱獄してきた。


「モグドン」

(種族)ドリル

(年齢)24

(能力)鼻をドリルに変形

(概要)探検隊の地中班長。ドドリ村から召集された。

************************************************



「「……え?」」

「はぁぁぁぁあああ!?」


 思わず隊員さんたちの声が漏れる。

 博士も、違う意味で戸惑っている?笑


 周囲は大きくざわついた。


「奴ら、この周辺ばかり攻撃するから……」

「この大陸の、どこかにあるものかと思ってたぜ」

「わざわざ、海を越えてまで私たちを……?」


「フウロウぅ!? ワタシの邪魔をするなと何度言ったら……!」

「すまない。お前の語りが非効率的だったものでな」

「黙れ、効率厨! 発表には、テンポが大事なのです!」


 博士とフウロウさんによる、

 班長たちのショートコントはともかく……


「あの場所が、大陸の外だって!?」

 僕はその衝撃の情報に驚いた。


「おい、マスター。なんであんたも知らないんだよ?」

「カビ助くんも、一緒に捕まってたって聞いたべ?」


「ええと、それは……」


 僕は、気絶して目が覚めたらメサにいたから知らなかった……。

 ……って、これで説明になるかな?


 語彙力のない僕の代わりに、土台モンが解説してくれた。

 ありがたい、けど。あの状況を実際に見ていないのに……何でわかるんだよ?


「ボクが感知した状況では、マスターとシャドさんは『空間転移』で脱獄していました。おそらく、隊長さんのお力でしょうね」


「なるほど……? てかあの人、そんな力もあんのかよ……?」

「流石は、現代の英雄なり」

「つうか、土台くんはなんで知ってんだべ……?」


 本当、何なんだろうね。

 うん…………色々なことに対して……。


 まあ……いくつかの疑問に関しては、これから説明があるだろう。

 僕らは、博士の言葉を待った。



「ゴホッ、話を戻すぞ」


 博士はフウロウさんを鋭く睨み……

 再びマイクを握っていた。


「別の大陸に存在する、ということは……海を越えねば辿り着けない」


 空気が、再び揺れる。


「この人数を運べるのかよ……?」

「いや、仮に用意できたとしても——」

 一人の隊員が、低く言った。

「海上で襲撃されたら終わりだぞ」


 その言葉に、空気が冷える。

 誰も、反論できなかった……。


 この規模の作戦で、海上移動。

 しかも敵は、()()ダークスター団。


 ——無事に辿り着ける保証なんて、どこにもない。


「……リスクが高すぎる」

「ほぼ賭けじゃねぇか」

「現実的じゃないな……」


 次第に、否定的な声が増えていく。


 それでも——他に手段があるわけでもない。

 重苦しい沈黙が落ちた。


 その時。博士に代わって……

 別の声が静かに響く。


「そこでだ。今回の作戦には“要”がいる」


 声の主は、隊長だった。

 彼の言葉に、ざわめきが止まる。


「では、最後の一人……紹介しよう」



 (作戦の要……? 誰だ?)

 僕らが辺りを見回していると——次の瞬間。


 どこからか、ゆっくりと足音が響く。

 コツ……コツ……


 静かな、しかし確かな存在感を持った音。

 現れたのは、一人の男。いや、一人の『スシ族』だった。



「おうおう! 俺様ァ水中班長『ホゲ・エール』である!」



 その姿は、魚のような特徴を持ちつつ、人型。

 故に、どこか異質な存在感。


「……よろしく頼むぜ! この隊じゃ陽気にやったモン勝ちよ!」


 低く、穏やかな声。海のような、深い圧。

 場の空気を、一瞬で持っていく。


 ざわめきが、今度は別の意味で広がった。


「……陽気な人だな?」

「水中班長。久しく見ていなかったな」

「いや、でも俺が見た時は——」

 隊員の一人が、戸惑いながら言う。

「“巨大な鯨”だったはずだぞ……?」


 彼の声に、ホゲ・エールは、ニヤリと笑った。


「へっ、よく覚えてるじゃねぇか」


 そして——ゆっくりと、肩を回す。

「まあ確かによォ……本来の姿ァこんなんじゃねぇ!」


 その瞬間。

 地面が、わずかに軋んだ。


 影が——不自然に、広がる。

 ほんの一瞬。背後に、あり得ないほど“巨大な影”が揺らめいた!?


「「……っ!!」」


 皆が息を呑む。

 見た瞬間、背筋が凍った。


 あれが……あの人の、本来の姿?


 だが次の瞬間には、元に戻っていた。

 ホゲ・エールは、何事もなかったかのように続ける。


「この俺様の体ァなァ——持ち前の能力で、好きなだけデカくも小さくもできるってワケよ!」


「「……は?」」


 僕らは、テンションも理解も追いつかない。

 だが——そんな中で隊長は、迷いなく言い切った。


「我々は、彼の背に乗り、海を越える!」


 再び静寂。

 そして。


「……マジかよ」

「隊長……本気ですか⁉︎」

「いや、でも……それなら——」


 さっきまでの“絶望”が、形を変え始める。


「うちの班長の、海上での機動力は段違いだぜ」

「船より速いって噂もある」

「しかし先程の大きさ、本当に維持できるんでしょうか?」

「襲撃されても……対応できる?」


 ざわめきは、不安から“現実的な検討”へと変わっていく。

 ホゲ・エールは、そんな隊員たちを見回して——


「ガハハッ! さっきのァな……この街じゃ潰れちまうから一瞬にしといたのさ!」


 ——陽気に笑った。

 そして、煮え切らないような態度の隊員たちに向けては……声色を変え、低く呟いた。


「だが——必ず、無事に全員を運んでみせらァ」


 その声に、迷いはなかった。

 陽気に振る舞っているが、彼も班長。やっぱり安心感がある。


 隊員たちが静かになると——隊長が、再び前に出る。


「今回の作戦は単純だ。海を越え、敵の城に突入する」


 さらに踏み出し、拳を握る。

「——そして、『ダークスター団』を、討つ!」


 空気が、震えた。

 誰もが理解している。


 これは、総力戦だ……!!


「「オオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」」


 引き返すことは、もうできない。

 今でも、死ぬのは怖い。


 ——それでも。僕は前を見た。


 隣には、仲間がいる。

 敵の城には、救うべき存在もいる。


 周囲にも、大勢の味方の気配。

 そして台の上には、強者が揃っている。


 ——1人じゃない。



「……行こう?」

 小さく、呟く。


 今度は、迷いじゃない。

 選んだ答えだ。


「ええ、マスター」

「ミツバを……救ってやろうぜ」

「それまで死ぬなよ。カビ助」


 城門が、ゆっくりと開く。

 その向こうにあるのは——いつか行きたいと願っていた、大海。

 そして、さらにその先に、決戦の地。


 僕らは、一歩踏み出した。

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