四人目の班長
【前回の登場人物】
「スライム博士」
(種族)ライトモン
(年齢)22
(能力)体の変形
(概要)探検隊の地上班長。敵の城から脱獄してきた。
「モグドン」
(種族)ドリル
(年齢)24
(能力)鼻をドリルに変形
(概要)探検隊の地中班長。ドドリ村から召集された。
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「「……え?」」
「はぁぁぁぁあああ!?」
思わず隊員さんたちの声が漏れる。
博士も、違う意味で戸惑っている?笑
周囲は大きくざわついた。
「奴ら、この周辺ばかり攻撃するから……」
「この大陸の、どこかにあるものかと思ってたぜ」
「わざわざ、海を越えてまで私たちを……?」
「フウロウぅ!? ワタシの邪魔をするなと何度言ったら……!」
「すまない。お前の語りが非効率的だったものでな」
「黙れ、効率厨! 発表には、テンポが大事なのです!」
博士とフウロウさんによる、
班長たちのショートコントはともかく……
「あの場所が、大陸の外だって!?」
僕はその衝撃の情報に驚いた。
「おい、マスター。なんであんたも知らないんだよ?」
「カビ助くんも、一緒に捕まってたって聞いたべ?」
「ええと、それは……」
僕は、気絶して目が覚めたらメサにいたから知らなかった……。
……って、これで説明になるかな?
語彙力のない僕の代わりに、土台モンが解説してくれた。
ありがたい、けど。あの状況を実際に見ていないのに……何でわかるんだよ?
「ボクが感知した状況では、マスターとシャドさんは『空間転移』で脱獄していました。おそらく、隊長さんのお力でしょうね」
「なるほど……? てかあの人、そんな力もあんのかよ……?」
「流石は、現代の英雄なり」
「つうか、土台くんはなんで知ってんだべ……?」
本当、何なんだろうね。
うん…………色々なことに対して……。
まあ……いくつかの疑問に関しては、これから説明があるだろう。
僕らは、博士の言葉を待った。
「ゴホッ、話を戻すぞ」
博士はフウロウさんを鋭く睨み……
再びマイクを握っていた。
「別の大陸に存在する、ということは……海を越えねば辿り着けない」
空気が、再び揺れる。
「この人数を運べるのかよ……?」
「いや、仮に用意できたとしても——」
一人の隊員が、低く言った。
「海上で襲撃されたら終わりだぞ」
その言葉に、空気が冷える。
誰も、反論できなかった……。
この規模の作戦で、海上移動。
しかも敵は、あのダークスター団。
——無事に辿り着ける保証なんて、どこにもない。
「……リスクが高すぎる」
「ほぼ賭けじゃねぇか」
「現実的じゃないな……」
次第に、否定的な声が増えていく。
それでも——他に手段があるわけでもない。
重苦しい沈黙が落ちた。
その時。博士に代わって……
別の声が静かに響く。
「そこでだ。今回の作戦には“要”がいる」
声の主は、隊長だった。
彼の言葉に、ざわめきが止まる。
「では、最後の一人……紹介しよう」
(作戦の要……? 誰だ?)
僕らが辺りを見回していると——次の瞬間。
どこからか、ゆっくりと足音が響く。
コツ……コツ……
静かな、しかし確かな存在感を持った音。
現れたのは、一人の男。いや、一人の『スシ族』だった。
「おうおう! 俺様ァ水中班長『ホゲ・エール』である!」
その姿は、魚のような特徴を持ちつつ、人型。
故に、どこか異質な存在感。
「……よろしく頼むぜ! この隊じゃ陽気にやったモン勝ちよ!」
低く、穏やかな声。海のような、深い圧。
場の空気を、一瞬で持っていく。
ざわめきが、今度は別の意味で広がった。
「……陽気な人だな?」
「水中班長。久しく見ていなかったな」
「いや、でも俺が見た時は——」
隊員の一人が、戸惑いながら言う。
「“巨大な鯨”だったはずだぞ……?」
彼の声に、ホゲ・エールは、ニヤリと笑った。
「へっ、よく覚えてるじゃねぇか」
そして——ゆっくりと、肩を回す。
「まあ確かによォ……本来の姿ァこんなんじゃねぇ!」
その瞬間。
地面が、わずかに軋んだ。
影が——不自然に、広がる。
ほんの一瞬。背後に、あり得ないほど“巨大な影”が揺らめいた!?
「「……っ!!」」
皆が息を呑む。
見た瞬間、背筋が凍った。
あれが……あの人の、本来の姿?
だが次の瞬間には、元に戻っていた。
ホゲ・エールは、何事もなかったかのように続ける。
「この俺様の体ァなァ——持ち前の能力で、好きなだけデカくも小さくもできるってワケよ!」
「「……は?」」
僕らは、テンションも理解も追いつかない。
だが——そんな中で隊長は、迷いなく言い切った。
「我々は、彼の背に乗り、海を越える!」
再び静寂。
そして。
「……マジかよ」
「隊長……本気ですか⁉︎」
「いや、でも……それなら——」
さっきまでの“絶望”が、形を変え始める。
「うちの班長の、海上での機動力は段違いだぜ」
「船より速いって噂もある」
「しかし先程の大きさ、本当に維持できるんでしょうか?」
「襲撃されても……対応できる?」
ざわめきは、不安から“現実的な検討”へと変わっていく。
ホゲ・エールは、そんな隊員たちを見回して——
「ガハハッ! さっきのァな……この街じゃ潰れちまうから一瞬にしといたのさ!」
——陽気に笑った。
そして、煮え切らないような態度の隊員たちに向けては……声色を変え、低く呟いた。
「だが——必ず、無事に全員を運んでみせらァ」
その声に、迷いはなかった。
陽気に振る舞っているが、彼も班長。やっぱり安心感がある。
隊員たちが静かになると——隊長が、再び前に出る。
「今回の作戦は単純だ。海を越え、敵の城に突入する」
さらに踏み出し、拳を握る。
「——そして、『ダークスター団』を、討つ!」
空気が、震えた。
誰もが理解している。
これは、総力戦だ……!!
「「オオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」」
引き返すことは、もうできない。
今でも、死ぬのは怖い。
——それでも。僕は前を見た。
隣には、仲間がいる。
敵の城には、救うべき存在もいる。
周囲にも、大勢の味方の気配。
そして台の上には、強者が揃っている。
——1人じゃない。
「……行こう?」
小さく、呟く。
今度は、迷いじゃない。
選んだ答えだ。
「ええ、マスター」
「ミツバを……救ってやろうぜ」
「それまで死ぬなよ。カビ助」
城門が、ゆっくりと開く。
その向こうにあるのは——いつか行きたいと願っていた、大海。
そして、さらにその先に、決戦の地。
僕らは、一歩踏み出した。




