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課題4 : 実戦の自信

【前回の登場人物】

「ディグ・ピクコノ」

(種族)ドリル

(年齢)50

(能力)弱点分析

(概要)ドドリ村の農家で、旅の仲間。シャドに伝言を頼まれる。


「ギザン・トライアングル」

(種族)ドリル・スシ

(年齢)42

(能力)構造を見極め、回転させる

(概要)約三千年前の英雄で、旅の仲間。石化解除の任務から帰還した。

************************************************


 疲れた。ずっと寝ていたい。

 シャド師匠の修行の後に、筋トレを行う……。

 自分で決めた事とはいえ、流石に身体への負担が酷い。


 引きこもり生活から冒険に出たとはいえ——

 僕は今まで、体を大きく動かす戦闘をしていなかった。

 そんな状態から、こんな毎日。


 だが、そんな寝言は言ってられない。


 ——もう、二週間だ。

 早く、強くならなくちゃ……!

 ミツバを、早急にジャックから解放できるように。



 そんな時……

 何者かに肩を揺すられる感触。同時に、声が響いた。


「おい、カビ助くん! 起きてけろ!」


 この訛り口調は……

「うぅん……ピクコノさん?」


 任務から帰ってきたのか。

 今は寝かせておいて欲しいんですけど……?


「街が大変なんだべ!」


 その言葉を聞き、僕は咄嗟に身体を起こす。

「もしかして……敵襲ですか⁉︎」


 ピクコノさんは一瞬目を丸くしつつも、すぐに状況を伝えてくれた。


「んだ。今はシャドくんが食い止めてくれてっから……急いで向かってほしい」


「師匠が……!? 了解です」


 僕は頷き、クレーターを駆け上った。

 すると——

 ピクコノさんはその場で、倒れ込んだ。


「……限界だったんですね」


 街からここまで……地中を掘って来てくれたのか?

 彼の能力は弱点分析が主であり、モグドンさんのような“穴掘りの専門家”ではない。


 それでも、僕に急いで伝えるために——!

 その想いに、応えなくては。




 ◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎




 街の出入り口は敵に封鎖されていたが——

 僕は“能力”を用いて、塀の上から侵入することに成功した。


 ラッシャイタウン。

 家の壁が崩れ、瓦礫が山のように積もっている。


 ただでさえ街の人々は誘拐されたのに、建物まで——!

 ダークスター団……探検隊を潰したいからといえ、やり過ぎだ。


 怒り。それと同時に、心配の気持ちが湧いてくる。


 隊長が、この街に……各地の隊員を集めたと聞いているけど……?


「みなさん……無事でいてください……!」



 だが、そう願った時。

 ——甘い匂いが、鼻をかすめた。


「……?」


 どこか、懐かしいような匂い。

 思わず足が止まりそうになる。


 だが——

 次の瞬間、違和感に変わった。


 甘いのに、気持ち悪い。

 吸い込むほど、頭がぼんやりしていく。


「……なんだ、この匂い……!?」


 胸がざわつく。

 嫌な予感しかしない。


 街の奥へ飛び込む。


 そして——

 目にした光景に、言葉を失った。


 白い。雪か?

 視界の先が、異様に白い。


「は……?」


 次の瞬間、悲鳴が届いた。


「あああああああ!!」


「っ……!」

 それを聞いた瞬間、体が勝手に動いていた。


 そうして、視界に入ったのは——


 白い粉に覆われた人々。

 動けず、固まりかけたまま、目だけが必死に動いている。


 その中の一人の前に——

 巨大な影が二つ。


 黒と赤の、巨大な蟻。

 無言のまま、ただ破壊を続けている。


「……は?」

 思考が、一瞬止まる。


 だがすぐに、理解した。

「クローン……!」


 拳を握る。

 だが……動けない隊員さんに、小さく赤い蟻が群がっていくのが見えた。


 ——助けないと終わる。全部。

 その現実だけが、頭の中で響く。


「デカい蟻は後回し、か……!」


 僕は、群がる蟻に“技”を放とうと構える。

 だが、その時——


「『黒舎利弾(シャドー・シャリボム)』」


 ドォン!

 上から黒い爆発が、降り注いだ。


 この技は……!


「師匠!?」

 見上げると、師匠が住宅の屋根上に立っていた。


「……やっと来たか。カビ助」


 その姿を見た瞬間——

 張り詰めていた何かが、少しだけ緩んだ。


「助かりました。協力して、対処しましょう!」


 僕が雑魚から隊員さん達を助けて、師匠がリーダーらしき二体を倒す。

 相当手強そうな相手だが、師匠なら余裕だろう!

 ——いざとなれば、僕も援護に回れるし。


 絶望的な状況に、希望が見えた。

 だが、そんな時に師匠は口を濁した。


「あの敵は……ジェムの元仲間で、得体の知れない能力を持っている」


 隊長の、昔の仲間のクローン……!

 いや、それにも驚いたけど。


「師匠……どうしたんですか⁉︎ いつになく弱気じゃないですか⁉︎」


 よく見ると、師匠の身体にも白い粉が纏わり付いていた。

 ——まさか、あのせいで……?


 僕は心配の目で見たが、彼は声色を変えなかった。


「違う。これは泣き言じゃなく、助言だ」


 助言……? 僕に……?

 デカい方の強さを説明したってことは、まさか——!


「お前一人でやってみろ」


「……え?」

 僕は振り向く。


「隊員のことは俺に任せて……お前は修行成果を実践し、強敵を倒すんだ」


 師匠は腕を組んだ。

「何があっても、俺は手を出さない」


「こんな状況で、修行……!?」


 僕は二匹の巨大な蟻を見る。

 黒いアリ。赤いアリ。

 どちらも無言。ただ、こちらを睨んでいる。


 ——怖い。正直、めちゃくちゃ怖い。

 隊長の知り合いといえば、今のところ化け物みたいな強さの人しか聞いてない。


「修行なんて言ってる場合じゃないですよ!!」


 今も、隊のみなさんが——!


 僕は師匠に向け、叫んだ。

 だが彼は鋭い目つきで僕を一瞥し、子アリに技を放つ。


「俺がいない戦場でも、お前はそうやって泣き叫ぶのか?」

「あ……」


 実戦が、何よりの訓練。気持ちを鍛えられる。

 僕は、絶望してはいけない。強くなる必要がある。

 シャドさん……師匠から、教わったこと。


 そして——

『“守りたいモノ”の事だけを考えろ』


 隊長の言葉が、頭をよぎる。


 見る影もなく崩壊した住宅街。毒を受け苦しむ隊員さん達。

 これから帰還するであろう隊長や、ゴハートたち。


 そして——

 余裕そうに見えて、疲弊している師匠。


 僕は覚悟を決め、息を吸った。


「……やります」

「最後の修行だ、カビ助」


 師匠は、振り向きざまに言い放つ。

 その声色からは、僕への強い信頼が感じられた。


()()()()()()

「……了解!」


 僕はもう、敵から目を逸さなかった。



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