課題4 : 実戦の自信
【前回の登場人物】
「ディグ・ピクコノ」
(種族)ドリル
(年齢)50
(能力)弱点分析
(概要)ドドリ村の農家で、旅の仲間。シャドに伝言を頼まれる。
「ギザン・トライアングル」
(種族)ドリル・スシ
(年齢)42
(能力)構造を見極め、回転させる
(概要)約三千年前の英雄で、旅の仲間。石化解除の任務から帰還した。
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疲れた。ずっと寝ていたい。
シャド師匠の修行の後に、筋トレを行う……。
自分で決めた事とはいえ、流石に身体への負担が酷い。
引きこもり生活から冒険に出たとはいえ——
僕は今まで、体を大きく動かす戦闘をしていなかった。
そんな状態から、こんな毎日。
だが、そんな寝言は言ってられない。
——もう、二週間だ。
早く、強くならなくちゃ……!
ミツバを、早急にジャックから解放できるように。
そんな時……
何者かに肩を揺すられる感触。同時に、声が響いた。
「おい、カビ助くん! 起きてけろ!」
この訛り口調は……
「うぅん……ピクコノさん?」
任務から帰ってきたのか。
今は寝かせておいて欲しいんですけど……?
「街が大変なんだべ!」
その言葉を聞き、僕は咄嗟に身体を起こす。
「もしかして……敵襲ですか⁉︎」
ピクコノさんは一瞬目を丸くしつつも、すぐに状況を伝えてくれた。
「んだ。今はシャドくんが食い止めてくれてっから……急いで向かってほしい」
「師匠が……!? 了解です」
僕は頷き、クレーターを駆け上った。
すると——
ピクコノさんはその場で、倒れ込んだ。
「……限界だったんですね」
街からここまで……地中を掘って来てくれたのか?
彼の能力は弱点分析が主であり、モグドンさんのような“穴掘りの専門家”ではない。
それでも、僕に急いで伝えるために——!
その想いに、応えなくては。
◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎
街の出入り口は敵に封鎖されていたが——
僕は“能力”を用いて、塀の上から侵入することに成功した。
ラッシャイタウン。
家の壁が崩れ、瓦礫が山のように積もっている。
ただでさえ街の人々は誘拐されたのに、建物まで——!
ダークスター団……探検隊を潰したいからといえ、やり過ぎだ。
怒り。それと同時に、心配の気持ちが湧いてくる。
隊長が、この街に……各地の隊員を集めたと聞いているけど……?
「みなさん……無事でいてください……!」
だが、そう願った時。
——甘い匂いが、鼻をかすめた。
「……?」
どこか、懐かしいような匂い。
思わず足が止まりそうになる。
だが——
次の瞬間、違和感に変わった。
甘いのに、気持ち悪い。
吸い込むほど、頭がぼんやりしていく。
「……なんだ、この匂い……!?」
胸がざわつく。
嫌な予感しかしない。
街の奥へ飛び込む。
そして——
目にした光景に、言葉を失った。
白い。雪か?
視界の先が、異様に白い。
「は……?」
次の瞬間、悲鳴が届いた。
「あああああああ!!」
「っ……!」
それを聞いた瞬間、体が勝手に動いていた。
そうして、視界に入ったのは——
白い粉に覆われた人々。
動けず、固まりかけたまま、目だけが必死に動いている。
その中の一人の前に——
巨大な影が二つ。
黒と赤の、巨大な蟻。
無言のまま、ただ破壊を続けている。
「……は?」
思考が、一瞬止まる。
だがすぐに、理解した。
「クローン……!」
拳を握る。
だが……動けない隊員さんに、小さく赤い蟻が群がっていくのが見えた。
——助けないと終わる。全部。
その現実だけが、頭の中で響く。
「デカい蟻は後回し、か……!」
僕は、群がる蟻に“技”を放とうと構える。
だが、その時——
「『黒舎利弾』」
ドォン!
上から黒い爆発が、降り注いだ。
この技は……!
「師匠!?」
見上げると、師匠が住宅の屋根上に立っていた。
「……やっと来たか。カビ助」
その姿を見た瞬間——
張り詰めていた何かが、少しだけ緩んだ。
「助かりました。協力して、対処しましょう!」
僕が雑魚から隊員さん達を助けて、師匠がリーダーらしき二体を倒す。
相当手強そうな相手だが、師匠なら余裕だろう!
——いざとなれば、僕も援護に回れるし。
絶望的な状況に、希望が見えた。
だが、そんな時に師匠は口を濁した。
「あの敵は……ジェムの元仲間で、得体の知れない能力を持っている」
隊長の、昔の仲間のクローン……!
いや、それにも驚いたけど。
「師匠……どうしたんですか⁉︎ いつになく弱気じゃないですか⁉︎」
よく見ると、師匠の身体にも白い粉が纏わり付いていた。
——まさか、あのせいで……?
僕は心配の目で見たが、彼は声色を変えなかった。
「違う。これは泣き言じゃなく、助言だ」
助言……? 僕に……?
デカい方の強さを説明したってことは、まさか——!
「お前一人でやってみろ」
「……え?」
僕は振り向く。
「隊員のことは俺に任せて……お前は修行成果を実践し、強敵を倒すんだ」
師匠は腕を組んだ。
「何があっても、俺は手を出さない」
「こんな状況で、修行……!?」
僕は二匹の巨大な蟻を見る。
黒いアリ。赤いアリ。
どちらも無言。ただ、こちらを睨んでいる。
——怖い。正直、めちゃくちゃ怖い。
隊長の知り合いといえば、今のところ化け物みたいな強さの人しか聞いてない。
「修行なんて言ってる場合じゃないですよ!!」
今も、隊のみなさんが——!
僕は師匠に向け、叫んだ。
だが彼は鋭い目つきで僕を一瞥し、子アリに技を放つ。
「俺がいない戦場でも、お前はそうやって泣き叫ぶのか?」
「あ……」
実戦が、何よりの訓練。気持ちを鍛えられる。
僕は、絶望してはいけない。強くなる必要がある。
シャドさん……師匠から、教わったこと。
そして——
『“守りたいモノ”の事だけを考えろ』
隊長の言葉が、頭をよぎる。
見る影もなく崩壊した住宅街。毒を受け苦しむ隊員さん達。
これから帰還するであろう隊長や、ゴハートたち。
そして——
余裕そうに見えて、疲弊している師匠。
僕は覚悟を決め、息を吸った。
「……やります」
「最後の修行だ、カビ助」
師匠は、振り向きざまに言い放つ。
その声色からは、僕への強い信頼が感じられた。
「自分を信じろ」
「……了解!」
僕はもう、敵から目を逸さなかった。




