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世界を作ってみよう!

【前回の登場人物】

「土台モン」

(種族)モンスター

(年齢)173

(能力)物理法則を無視した土台変更

(概要)カビ助の気持ちが増幅して召喚され、ゴハートの元に現れた「超獣」。



「ジャジャーン! 『箱庭クラフトキット』だぜ!」

 ゴハートは明るくおもちゃを差し出した。


 いやその歳で、よくそのテンションで居られるな——?

 ましてや、彼の前世は僕より五つ上だ。


「ゴハート……やっぱり疲れてない?」

 僕は半分本気、半分冗談でそう言った。


 だが彼は子供のような態度を崩さない。

「いやいや……これが、意外といつになっても楽しめるもんなのさ! え〜と、遊び方は——」


 まあ、どうせ眠れないし……付き合ってやるか。

 彼の説明を黙って聞いた結果を、まとめるとこうだ。



『用意されてあるパーツを組み合わせて、自分だけの世界を作るゲーム』



 だがこのおもちゃ……

 子供向けの割には……いや、だからこそ?


 ——パーツの種類が、かなり豊富だ。


 山、丘、海、森などの地形パーツ。

 住宅、学校、道、柵、橋、城などの建築物パーツ。

 ドリル族からダーク族に、ライトモン族まで、全ての”基本種族”の家庭が1セットずつ。

 DR星でも意思のない動物や、魚のパーツ。

 草木や花、果物に岩といった装飾パーツ。

 さらには、幽霊やドラゴンといった空想上生物のパーツもある(”異界の種族”として実際に存在しているなんて、これを作った人は思ってもないだろうなあ〜)。


 そして、最も目を惹かれたパーツは——


「この、真っ白な人形は何?」


「ああ、それは『アバター』だな。プレイヤーの分身体って奴さ。同封されている『一日絵の具』で、自分の顔を描いたりできるんだ」


 ゴハートはそう言って、僕にそのセットを差し出した。


 ちなみに「一日絵の具」とは、公共施設のおもちゃ用に作られた、色を塗っても一日経てば全てが消えて元通りになる……といった絵の具だ。

 二年くらい前に、ある「ライトモン族」が一般販売を開始して、当時は一大ブームになったっけ。


 しかし彼のもう片方の手を見ると、それがもう1セット握られている。


 これは、まさか——!


「マスター。一人でやってもどうせ飽きるだろ? 競争といこうぜ」


 やっぱり……。


 まあ、ここまで来たら断るわけにはいかない。


「どちらが()()()()()()()()()()()ってことだね。制限時間は?」


 そう尋ねたが、ゴハートは答えない。

 ——すでにアバターの色塗りを始めていた。


「ちょ……っ! ずるいぞ!」


 なるほど。

 制限時間はなしで、気の済むままやれということだな?


 ——世界を作る……か。

 不思議なことに、先ほどの悩みと一致している。


 ——本当に偶然か?

 ゴハートのことだから……!


 いや、彼がこのおもちゃを気にしていたのは土台モンの話より前だったし……

 流石に、偶然だろうと思いたい。


 それに、こんなことを考えていては世界作りに集中できない。


 ——今は、目の前のことだけを考えるんだ。



 ◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎



 僕はアバターを塗り終えると、すぐさま箱の中に地形を配置し始める。


 まずは……指先で砂をすくった。

 さらさらしていて、冷たい。


 今までに触れたことのない感触だ。

 そういえば、僕は海に行ったことがなかったっけ。


 でも、いつか行ってみたいし——

 この機会だし、置いてみるか。


 ——僕は箱の右上に、海と砂浜を配置した。


 次に取り掛かったのは、村の建設だった。

 僕は都会に対する造詣が薄いから……ドリあえず、村にしよう。

 都会はスペースが余ったら作ればいい。


 住宅には、壁や屋根が半分だけで中身が見えるものと、完全に閉じたものがあった。


「どうしようかな?」


 この村には僕のアバターを置きたいから、中身が見えるようにしよう。


 ——僕は箱の左下に、ドドリ村もどきを配置した。





 そして僕はその調子で没頭していき……

 地形パーツの配置を終えることができた。

 村の周りに山や森を配置し、そこを抜けた先に都会の街や別の田舎町を建てた。


 ひと段落して達成感があったが、それと同時に違和感を覚える。


「……変だな」

 思わず、独り言が漏れた。


 箱の真ん中が、殺風景になってしまった。

 左下の村を囲うように森を広げたせいで、都会街が自然と中央には配置できなかったのだ。


 うーん、流石にこのままだとゴハートに負けるかもな……?



 そうだ、こういう時は真ん中に「大きなもの」を配置しよう。


 空想上の生物カテゴリの中でも、目立っていた人形を一つ取る。


 ——やっぱり、「ドラゴン」って絵になるなぁ。


 隊長に出会うまでは知らなかったけど、荘厳で厨二心をくすぐる存在だ。

 シルヴァも……仮面の姿から元に戻ったりしたらこうなるのかな?


 あれ、てか「DR星」ではドラゴンがあまり伝わっていないのに、これを作った人はどうして知っていたんだ?

 ……まあ、どうでもいいや。今は世界に集中しないと!


 ——僕は中央の森に、ドラゴンを配置した。


 次は、人々。

 ドリあえず種族ごとに、彼らが住んでいそうな環境に置いてみる。

 一人だと寂しいから、家族全員を。


 すると、箱の中が少しだけ賑やかになった。


 そして、残ったアバターと「ヒト族」の一家。


 他の種族と同じように……僕の家(仮)の中に入れて——

 置いてみた時、手が止まった。


「僕は一人暮らしだ。だからこのヒト達は別の家に……」


 しかし、そうして一家を移動させようとした手も、また止まる。

 

 ——僕の家の中に、お父さんとお母さんがいる……! 


 どうせ気まぐれな遊びなんだ。

 競争だって、勝敗に特別な意味があるものじゃない。


 ——この世界の僕にくらい、希望の存在を与えたっていいじゃないか。

 そう思って僕は微笑み、人々の配置を終えた。




 ◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎




 そして、十数分後——

 手を離すと、箱庭は完成していた。


 うん、我ながらいい出来だ。

 特に気に入っているポイントは、比較的使わなかった「装飾カテゴリ」の中にリンゴを見つけ、ミツバに見立てて僕のアバターの隣に置いたことである。


「ゲホっ……。できた!」

 そう言うと、ゴハートが少しだけ近づいてきた。


「待ってたぜ。それじゃあ……見せてもらおうか」


 異界の種族である彼は……

 一体、どんな箱庭を作ったのだろうか。


 その時の僕の気持ちは、とても暖かくて楽だった。


 子供向けのおもちゃに苦笑いしていた時が、信じられない程に。





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