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心で受ける職業

今回は地球で昔あったお話です。

********************************************



 俺は「寺田 恒一」18歳。職業は「カウンセラー」だ。


 本来なら、ありえない。この歳で、他人の人生を扱う仕事なんて。

 あと数日でまた一つ歳をとるが……それでも、まだ若僧と呼ばれる歳だ。


 だが俺はもう現場に出ている。


「優秀だから」

「落ち着いているから」

「年齢より大人びているから」


 そんな理由で、例外として。


 子供の頃から、俺は話を聞く側だった。

 誰かが泣けば隣に座り、誰かが怒れば黙って頷いた。

 それだけで、場が丸く収まった。


 ――俺は、相談役(カウンセラー)の才能がある。

 そう思い込むには、十分すぎる成功体験だった。


 心理学を学び、資格を取り、気づけば子供達に人気のカウンセラーとなっていた。

 俺は「先生」ではなく「兄ちゃん」と呼ばせた。

 そして一人称は「俺」のまま。


 その方が安心するだろうし、距離が近い方が精神的にいい。

 それに“先を生きる者”など、18歳には荷が重すぎる。


 子供相手なら、それでよかった。

 ——問題は、大人だ。


 ある日、俺が任されたのは壊れかけのサラリーマン。


 年齢的に、本来は俺などが対応すべきじゃない。

 でも「寺田なら大丈夫だろ」と言われ、引き受けた。


 目の下は黒く、声は掠れ、言葉が遅れる。

 ——仕事、家庭、金、将来。全てが限界な男。


 俺は、焦った。

 ——聞くだけじゃ、足りない気がした。


 「あなたは悪くない」

 「責任を感じすぎです」

 「正しい選択をすれば、きっと楽になります」


 ――救わなきゃ。役に立たなきゃ。俺が。


 俺が言葉を投げかけ続けると、彼は一度だけ黙った。

 助けを求める顔……いや、“何か”を手放した顔だった。


 これで良かったのだろうか。



 ◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎



 翌日、ニュースで知る。

 あのサラリーマンは——会社の同僚を殺し、その直後に自殺したそうだ。


 俺は、何も言えなくなった。そこからの数日間は……地獄だった。


 別に、責任を問われたわけじゃない。

 ただ……視線と沈黙が、俺を追い詰めた。それだけだ。


 「本当に正しかったのか」

 「若すぎたんじゃないか」

 「君が対応しなければ——」


 その全てを、俺は聞き入れ、飲み込み、繰り返した。

 そういう性分……だったから。


 ――俺が壊した。

 その結果は、俺の責任だ。


 そう思い続けた数週間——ついに俺は、屋上に立った。


 ()()じゃない。これは罰だ。


 『次』があるなら、正解は言わない。役割を背負わない。

 ただ()()()()——それだけを、誓って。




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