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現実主義者の生屍奴隷

【前回の登場人物】

「ミツバ」

(種族)フルーティア

(年齢)13

(能力)浄化効果のあるクラブアップル

(概要)カビ助の気持ちが増幅して召喚された“恋人”。


「ジャック」

(種族)?

(年齢)6

(能力)空間転移

(概要)「ダークスター団」の幹部。外見は幼いが性格は棘がある。

********************************************




 ……恋人は、二人の愛の結晶として子を作る。


 血筋を残すために相手を求める者もいる。

 より強い個体を生み出すために相手を探す者もいる。


 地球では異なる民族同士が愛し合い、偶然強い個体が生まれることもあるという。

 それを「ハーフ」と呼ぶらしい。


 だが……DR星には、存在しない。


 種族を超越した力は、努力や環境によって後天的に得られるものだ。

 生まれながらに二種族を併せ持つ者など、確かに聞いたことがなかった。


 二種族の力を得た者であっても、基本能力は()()()()()()()()()のまま。

 後天的に得た能力は補助に過ぎない。


 この星は、地球に似ているようで、確かに違う。


『他種族同士では生殖できない』


 それは、政策による“禁止”ではなく——

 法則による“不可能”なのだ。


 



「マスター……ごめん、ごめんなさい……あたし……知ってたのに……あんなこと……!」


 ミツバは再び目に涙を浮かべている。

 ジャックはそんな僕らを見て再び嘲る。


 ……許せない。

 せっかく立ち直れた彼女を、再び泣かせるなんて。

 そんな()()()()()()()()を僕が知らなかっただけで。


「おい、クソガキ……。生殖できないから、何だってんだよ?」


 僕が睨みつけると、ジャックは肩を揺らして笑った。


「子作りしないカップルなんて存在するだけ無駄、ってことだよ。繁殖することは生物の本能、快楽、義務さ」


 はぁ……話にならない。


 いや、一般的な意見か?

 ジャックは幼い外見に反して、長年生きてきたような“現実主義者(リアリスト)”のようだ。


「それとも何だ? お前ら、その関係で幸せになれるとでも思ってんのか?」


 だが、悪いな。

 僕は現実を見てこなかった“引きこもり”なんだ。



「僕は——死ぬ瞬間に幸せなら、それでいい!」


 自分でも驚くほど、声が響いた。


「そのためにこれまで生きて来たんだ。それに『孫の顔が見たい』なんて言う親も、僕にはいないしな。それで——」


 僕はミツバの方へと視線を移す。

 彼女の顔に安堵した、自分の気を引き締めて。


 ……今が人生の分岐点だ。

 真剣にいかなくちゃな。


「ミツバ。僕は君と出会って最初、とんでもない女の子に好かれたなと思った。それに君は、隊長のことを“人騙し”と言ったくせに……ゲホッ、僕のことを騙していたね。でも、()()()()()はどうでもいい」


 息を吸う。


「もう一度聞かせてくれ。君は僕を、どうしたい? 君は本当に、敵じゃないんだよね?」


 脱獄した囚人を見つけ出した看守。

 本来ならこんな話し込んでいる状況ではない。


 だが——

 ジャックは黙って見ている。

 どうせ、仲間割れを期待しているのだろう。


 だが。

 ミツバは涙を拭い、叫んだ。


「あたしは、マスターと幸せになれればそれでいい! 子供が作れなくても、たとえ……二人の関係に終わりが訪れても、幸せな時間が少しでも長く欲しい‼︎ 」



 静寂。

 ジャックは顔を歪める。



 僕は頷く。

「よし……うん。そんな君だから、信じようと思えるんだ……!」


 子供がいなければ……

 二人の時間は、歳を重ねるごとに減り、互いにストレスを抱くだろう。


 ジャック……いや一般的意見の通り、幸せではなくなってしまう。


 だけど僕らはそれら全てを覚悟し、同意した。

 もう二人に常識は通じない。不信感も、わだかまりもない。



「恋愛は、お互いが幸せになれる相手とするものだ。生殖だけが全てじゃない」


 


 バン!!

 そんな時、ジャックは痺れを切らしたのか——いや、呆れたのか。


 奴は近くの棚を蹴り飛ばした。

 ……嘲る表情から、戦闘の表情になった。


「分かったよ……! お前らみたいなバカップルには、“絶望”を与えて現実を見せてやる」


「悪いが、僕ら二人ならお前なんかに負ける気はしないぞ?」


「その通りよ。アンタがどれだけ強力な力を持っていようと、あたしの知識とマスターの精神力で対応できる」


 僕らが自信たっぷりにそう言うと——

 ジャックは、にやりと笑った。


「確かに、オレひとりならな」


 何だよ? こっちは本気でそう思ってるんだぞ。

 お前の空間転移なんてすぐに……!


 ジャックは、笑ったまま、指を軽く鳴らした。


「ま、まずは小手調べと行かせてもらうか」


 その瞬間、空間が歪む。


 ぐにゃり、と視界が歪み——

 次の瞬間、数体の影が床へと吐き出された。


「なっ……!?」


 ジャックが、にやりと笑う。


「いいもん見せてやるよ。お前らに“現実”ってやつをな」


 その瞬間——空間が、歪んだ。


「来い」


 ズズズ……。

 裂け目の中から、次々と人影が吐き出される。


 床に転がるように現れたのは……見覚えのある顔だった。


「……え?」

 思わず、声が漏れる。


 人影は……あの牢の、看守たちだった。


 彼らはゆらりと立ち上がる。

 目は濁り、表情は歪んでいる。まるで、生屍(ゾンビ)みたいに。


「……ふざけるなよ」


 そのうちの一人が、こちらを睨みつけた。

 低い声。

 その奥にある感情は、ミツバに向けられたものだった。


「おじょうぅぉおおおさぁぁああああん⁉︎」

「てめぇのせいで……俺たちは……」

「失態を犯したゴミとして……ジャック……クソガキの、捨て駒だ!」


 ミツバの肩が、びくりと揺れた。



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